マーケティング

N1分析とは? 西口一希さんのマーケティング手法を経営者目線で解説!

「N1分析」という言葉を聞いたことがありますか? N1分析とは、P&G出身であり、肌ラボやロクシタン、スマートニュースなどの戦略担当を手がけたマーケター・西口一希さんが提唱したマーケティング手法です。著書『顧客起点マーケティング』の中で詳しく語られています。

この本の「1000人より1人の顧客を知ればいい」というキャッチコピーからわかる通り、N1分析では実在する「たった1人の顧客(N=1)」を徹底的に理解することで、マーケティングの戦略立案や具体的な施策につなげていきます。

N1分析の注目すべき点は、マーケティングの基本中の基本である顧客理解や消費者インサイトの発見を非常に重要視していることです(→ 参考 : 消費者インサイトとは?)。この記事では、西口さんの著書をもとにN1分析の手法を詳しく解説いたします。

久保真介
久保真介
本の説明に加えて、ぼく自身が美容室経営や経営コンサルなどをする中で感じていることを踏まえつつ、具体的なN1分析のやり方やポイント、N1分析への見解などを解説していきます!

目次
  1. 西口さんの「N1分析」とは? ── 徹底した顧客理解によるアイデアの創出方法!
  2. 「N1」と「ペルソナ」はまったく違う! ── 西口さんがN1分析を重要視するわけ
  3. 『顧客起点マーケティング』から、具体的なN1分析のやり方やポイントを解説!
  4. 「極端な事例」「驚くような事例」こそ大きな手がかり!── N1分析のポイント
  5. N1分析によるカスタマージャーニー作成での注意点!── お客さんは事実をちゃんと覚えていない!
  6. N1分析って、実際どうなの? ── 実店舗経営やコンサル業を行う複業家の見解
  7. 【まとめ】マーケティングでは「顧客理解」や「顧客インサイト」が最重要!!

西口さんの「N1分析」とは? ── 徹底した顧客理解によるアイデアの創出方法!

N1分析では大きく3つのステップがあります。最初のステップの「セグメンテーション」では、2つのオリジナルフレームワークを使っていきます。

  1. 「顧客ピラミッド」「9セグマップ」を活用して、顧客を5つないし9つのセグメントに分類
  2. 各セグメントに属する人に対して「N1インタビュー」を実施
  3. N1インタビューをもとに、マーケティング戦略の「アイデア」を探る

どのステップも顧客起点でのアプローチとなっており、本質的なマーケティングを行うエッセンスがたくさん詰まっています。早速それぞれのステップについて解説していきます。

N1分析では定量調査による事前の「セグメンテーション」が非常に重要 !

西口さんのマーケティング手法「N1分析」では、「顧客ピラミッド」「9セグマップ」という2つのオリジナルフレームワークが重要な鍵を握ります。

【顧客ピラミッドとは?】

「顧客ピラミッド」とは、ビジネスの対象とする顧客や潜在顧客を、商品の認知や購入経験の有無、購入頻度などで5つの層に分類するフレームワークのことです。別名「5セグマップ」とも言います。

顧客ピラミッドは、マーケティングの投資対象とする顧客全体の人数や構成比を正しく把握する役割を果たします。

顧客ピラミッドの概念図

そして、顧客ピラミッドよりもさらに細かく分類したのが「9セグマップ」です。

【9セグマップとは】
「9セグマップ」とは、顧客ピラミッドにブランド選好度(積極的か消極的か)の軸を加えて、顧客全体を9つに分解したものです。

ブランド選高度とは、ずばり次回の購買意欲がどれだけあるかを表すものです。各セグメントの基本的な顧客特性を、行動データや心理データから分析して分類していきます。

9セグマップ

この9セグマップが優れているところは、自社の顧客層を見える化するだけにとどまらず、ブランディング施策の効果を数値化できることです。これにより、さらに高い精度でマーケティング施策の立案が可能になるのです。

“9セグマップはマーケティング業務にとって課題であり、かつ曖昧な検証しかできなかった販売促進活動とブランディング活動の投資効果を同時に可視化、定量化し、統合的なマーケティング投資判断とその検証を可能にします。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.021より

久保真介
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N1分析の前に、この2つのフレームワークで顧客を「セグメンテーション」しておくことで、顧客全体の人数や構成比を正しく把握することができ、より戦略的なマーケティングにつなげることができるのです。

各セグメントの対象者に「N1インタビュー」して、アイデアの鍵を見つけ出す

顧客セグメンテーションが完了したら、次は「N1インタビュー」を実施します。

【N1分析】
顧客ピラミッドの5つのセグメントのそれぞれに属する対象者を数名ずつ選び出し、1人ひとりインタビューを実施してその顧客のことを徹底的に理解していきます。

このたった一人の意見を聞いて深く理解していくことが、まさに「N1分析」のポイントといえます。このN1インタビューの中でも、特に「ロイヤル顧客」へのインタビューが重要とされています。西口さんの言葉を引用しましょう。

“一人のロイヤル顧客が、なぜロイヤル顧客になったのか、どういうきっかけがあったのかを深く理解できれば、そのきっかけをまだロイヤル化していない顧客に提示することで、高い確率でロイヤル化を促すことができます。同時に、離反しそうな顧客を早期に見つけて、その深層心理を把握し、事前に対策を取れば、競合や新しいデジタルのベンチャーサービスに突然顧客を奪われるリスクを軽減できます。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.005-006より(※ マーカーは当サイトにて追加)

ロイヤル顧客とは、商品への満足度が高くてリピートしてくれているお客様です。そんなロイヤル顧客が商品をどのように使用し、どこに気に入っているのかを深く理解することで、強いマーケティング戦略の「アイデア」が見つかるのです。

西口さんのマーケティング理論における「アイデア」とは?

最後のステップでは「アイデア」創出を行うことで、実際のマーケティング施策につなげています。ところでアイデアとは何でしょうか? 西口さんのマーケティング理論では、「独自性」と「便益(=顧客にとって都合がよく利益があること)」を兼ね備えたものを「アイデア」と定義しています。

また「アイデア」は、 N1分析を通して掴んだ、人の心を動かせる商品・サービスの魅力や訴求とも表現されています。単なる自社目線のPRやプロモーションではなく、顧客視点に立っていることが重要なのです。

「N1」と「ペルソナ」はまったく違う! ── 西口さんがN1分析を重要視するわけ

ところで、マーケティングでよく使われる手法に「ペルソナ設定」という考え方があります。既にマーケティングの知識がある方であれば、この「N1分析」と「ペルソナ」がどのように違うか、疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。

【ペルソナとは?】
「ペルソナ」とは、マーケティング活動において、ある企業やブランド、サービスや製品を活用する典型的な顧客を想定するために作成された「仮想の人物像」のことです。

久保真介
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Webマーケティングの世界では定石とも言えるものですね!

しかし、実在しない架空のペルソナは「無効」だと西口さんは語ります。

実在しない顧客のペルソナが無効なわけ

なぜ西口さんは、ペルソナマーケティングは無効だと言っているのでしょうか。ペルソナとは、企業がマーケティングのために設定する架空の典型的な顧客像です。そのため、企業側の「想像」が混ざっていたり、多種多様な顧客を「混ぜて平均化」していたりして、実際の一人ひとりの顧客とは違ったものになってしまうこともあるのです。

久保真介
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同じ商品/サービスを利用してくださるお客さまにも色々な人がいて、年齢や性別、趣味嗜好、価値観、考え方などは当然一人ひとり異なるし、なぜその商品を買っているかも、どこが気に入っているかも異なるはずですよね。それなのに、それを踏まえずに「ひとつの典型的な顧客像」にまとめあげてしまうのは危険だと西口さんは述べているわけです。

西口さんは、ペルソナは「役に立つどころか、マーケティングや経営戦略を惑わすリスクすらある」と述べています。西口さんの指摘の通り、設定したペルソナ自体が本質とズレていれば、そこを狙ってマーケティング施策を実施したところで狙った通りの顧客がどこにも存在しない(=誰にも刺さらない、なんてことになりかねないわけです。

ペルソナと同様、定量的なアンケート調査からも強いアイデアは生まれない

ちなみに、同じ理由で定量的なアンケート調査からも強いアイディアは生まれにくいと言えます。色々な個人の意見が平均化されてしまっているからです。

“N=多数の調査から得られる結果は平均値であり、最大公約数でしかありません。これでは、人の心を捉えるような商品開発もマーケティング活動も難しいと思います。誰も強く否定しないが誰も強く支持しない、当たり障りのない、既視感のある提案を繰り返すことになります。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.050-051より

久保真介
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アンケート調査などで得た「データ」ばかりをみて、マーケティング施策を考えようとする人もいますが、こういった理由からあまり有効な手段とは言えないわけです。

実在するたった1人の顧客を"徹底理解"することで強いアイデアを創出できる!

このように、ペルソナ設定や定量調査から「顧客インサイト」や「強いアイデア」を見つけ出すことは困難です。架空の顧客像や平均化されたデータではなく、現実に存在するお客さま一人ひとりと向き合っていくことが大切なのです。

N1分析は、たった1人のお客さまに注目して、超具体的な個人のエピソードを理解していくことがコンセプトです。Aさんがなぜ顧客化したのか、なぜロイヤル化したのか。その個人的な動機や感情・エピソードをインタビューによって明らかにしていくことで、強い商品企画や顧客コミュニケーションの「アイデア」が生まれるのです。

“徹底的にN1に絞り込むから強い独自性と便益=「プロダクトアイデア」を生み出せるのであって、絞り込まないから平均的で最大公約数的な提案や企画しか打てずに、泣かず飛ばずの結果になるのです。一人に注目するからこそ、他の人にも響く可能性の高い、強い「アイデア」の手がかりが得られます。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.052-053より

以上の通り、「N1分析」と「ペルソナ設定」は根本的に異なる考え方ということがわかります。

久保真介
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ちなみに、ぼく自身はマーケティング戦略を考えるうえでペルソナ設定を使う派です。とはいえ、西口さんの指摘はその通りだと思っていて、ペルソナ設定をするときも実在する顧客をもとに、事実の乖離しないペルソナを生み出す必要があると考えています。

『顧客起点マーケティング』から、具体的なN1分析のやり方やポイントを解説!

ここからは、実際にN1分析を行っていくための具体的な方法やポイントを解説していきます!

【手順①】まずは定量調査から顧客ピラミッド(5セグマップ)を作る

まずは、定量調査から顧客ピラミッドを作成し、顧客(および潜在顧客)を5つのセグメントに分類します。以下の3つの質問からなる、簡単なアンケート調査を実施すればOKです。

  • 【質問①】そのブランドの商品/サービスを知っていますか
  • 【質問②】これまでに、その商品/サービスを購入したことはありますか
  • 【質問③】どれくらいの頻度でその商品/サービスを購買していますか

このアンケートから「認知の有無」「使用経験の有無」「購入頻度」を測ることで、顧客を5セグメントに分類できるのです。

久保真介
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これだけなら数万円程度の予算でネット調査すれば作成できますよ!

なお、アンケート調査の結果は、Excelなどにまとめます。

久保真介
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顧客ピラミッドの作り方について、詳しくは以下の記事をご確認ください。

【手順②】セグメント間の「ギャップ分析」から「仮説」を立てる

顧客ピラミッドが完成したら、次に5つのセグメント間の「ギャップ」を探します。そしてなぜそのギャップが生まれているのか「仮説」を立てていきます。

例えば、ロイヤル顧客と一般顧客の違いはどこにあるのか。一般顧客と離反顧客であったり、認知している層としていない層であったりといった、セグメントごとの違いを生んでいるのは何なのかを考えていくのです。

ここでのポイントは「顧客の行動」と「顧客の心理」を考えることです。特に心の中身を想像することで、短時間で多くの仮説を作ることができます。

久保真介
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ギャップ分析から色々な「仮説」を立てておくことで、インタビューでどんなことを明らかにするべきかがはっきりするわけですね!

【手順③】セグメントごとに「N1インタビュー」を実行する

仮説を立て終えたあとは、いよいよ顧客セグメントごとに「N1インタビュー」を実施しておきます。ここで特に大事なのが、ロイヤル顧客へのインタビューです。ロイヤル顧客の人はブランドへの思い入れがあり、独自性や便益を理解していることが多いため、アイデアへのヒントが見つかりやすいからです。

顧客一人ひとりの「カスタマージャーニー」を抽出して顧客化やロイヤル化のきっかけを知る

ロイヤル顧客のインタビューでは、以下のような質問を時系列でしながら、顧客体験を深堀りしていきます。10人程度を対象にすると良いでしょう。

  • いつ、どんなきっかけで自社の商品/サービスを知ったのか
  • いつ、どうして自社の商品/サービスを使ってみよう(買ってみよう)と思ったのか
  • ロイヤル化、つまりリピートを決めた理由や・きっかけはあるか

このような質問を通して、お客さまが「どこで商品のことを知り、何をきっかけに初購入して、なぜロイヤル化したのか」という「カスタマージャーニー」を深く理解していくのです。

また、これらの基本質問に加えて、満足している点や不満点、競合ブランドへの認知や印象なども、話の流れにあわせて聞き出し、お客さまのことを深く理解するように努めましょう。

離反顧客や未購入の潜在顧客からも知れることがある

ロイヤル顧客だけではなく、離反顧客未購入の潜在顧客に対するN1インタビューも有効です。離反顧客なら、ロイヤル顧客と同様に時系列で質問をしてみましょう。カスタマージャーニーを理解していくことで、離反のきっかけを知ることができます。

「認知はしているけど未購入の潜在顧客」や「未認知の潜在顧客」の人には、まずは自社ブランドの説明や、事例紹介(ロイヤル顧客が気に入っている点など)をしてみましょう。それで興味が出たかどうかを確認するのです。

このような調査を通して、

  • 商品/サービスを「よく知らない」だけなのか、「興味がない」のか
  • 商品/サービスの問題点・改善点

などの情報を得ることができます。

【手順④】「アイデア」の仮説を立てる

N1インタビューで明らかになったエピソードをもとに、商品/サービスの改良案や広告戦略案などを考えていきます。「アイデア」は、「独自性」と「便益」を兼ね備えたものである必要があります。そして、顧客の行動と心理状態を変える力が必要です。

久保真介
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たとえば西口さんは、ロクシタンに関するN1分析を行った結果、「万人受けするのでプレゼントに最適」という「アイデア」を見つけ出し、それをもとに戦略立案して成功したそうです!

具体的には、広告戦略で「プレゼントに最適」という訴求を行いつつ、購入者には試供品をつけることで購入者自身にも商品の良さを実感してもらう、という戦略を行ったそうです。

【手順⑤】「アイデア」をコンセプトに変換して検証する

最後に、「アイデア」をコンセプト化して検証していきます。アイデアとコンセプトの違いについて、西口さんは、「アイデア」に「価格」と「商品/サービス情報」を加えたものがコンセプトだと定義しています。

アイデアをコンセプト化するときの注意点は、端的な表現にすることです。例えば、テレビCMなら15秒で伝え切れるように、店頭ポスターやバナーなら数秒で理解できるようにと意識してコンセプト内容を考えます。その理由について、西口さんは次のように述べています。

“調査上では高く評価されても、実際のマーケットでは全てを伝えきれず、好意的な反応が出ないというリスクが高い”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.085より

またコンセプトの検証も大切です。このコンセプトに関する購買意向であったり、独自性を感じるかどうかを、顧客ピラミッドの各セグメントごとに5段階評価で簡単にスクリーニングします。ここでは、どのコンセプトが良いと思うのか、簡単なアンケート調査をするだけで問題ありません。これにより、セグメントごとのおおよその可能性が見えてくるのです。

久保真介
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このことからもわかる通り、定量調査はまったく使えないわけではなく、「アイデアの創出には不向き」というだけです。定量調査は「仮説の絞り込み」や「アイデアの有効性の検証」には効果的なのです!

「極端な事例」「驚くような事例」こそ大きな手がかり!── N1分析のポイント

N1分析をする中で重要なポイント、それは、インタビューの中で出てきたお客さまの「驚いたり笑ってしまったりするような、予想外の意見や使い方」です!

西口さんは、著書の中で次のように述べています。

“ロイヤル顧客から、想像もしていなかったような特殊なきっかけや事実を見つけられたら、それを具体的な便益との組み合わせで「アイデア」化し、一般顧客やほかのセグメント拡大して再現することで、セグメント全体の上位への移行を促せる可能性が高いです。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.085より

 

西口さんが担当した「肌ラボ」をヒットに導いた「お客様の意外な声」

本の中で、西口さんが肌ラボを担当されていたときの、1つのエピソードが紹介されています。

“実際の顧客へのインタビュー調査を行いました。すると、一人のお客様がベタつきと安さを褒めながら、笑顔で「頬が手にくっつくくらいベタベタする」と、その場で商品を使って手が頬にくっつく様子を示したのです。私たちも笑ってしまいましたが、さらに、「ベタつきは好きではないが、これが保湿されている証拠」と力説されました。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.085より(※ マーカーは当サイトにて追加)

これがきっかけで、「手に頬がくっついて離れなくなるほど"もちもち肌"になる化粧水」という訴求アイデアに繋がり、肌ラボを販売本数日本No.1の化粧水へと押し上げることができたのです!

久保真介
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まさに1人の顧客に深く向き合うことで、強いマーケティング施策につながったというエピソードですね。

N1分析によるカスタマージャーニー作成での注意点!── お客さんは事実をちゃんと覚えていない!

N1分析によるカスタマージャーニー作成過程には、1つ注意点があります。それは、お客さんは過去の事実を正確には覚えていないということです!

例えば、自分のお気に入りのカフェやレストラン、本屋、美容院などを思い出してみてください。最初にそこに行ったきっかけは何でしたか。そこでどのように感じて、どうして今も通い続けているのでしょうか。

多くの場合、ロイヤル化した理由(使い続けている理由)とトライアル理由は異なっているものです。その反面、人間の記憶というものは、最初のきっかけや印象と、現在の認知が混ざりやすい特徴を持っています。

そのため質問は時系列に沿って、当時の出来事や感情まで深掘りしながら聞いていくことをおすすめします。

N1分析って、実際どうなの? ── 実店舗経営やコンサル業を行う複業家の見解

ここまで述べてきたように、N1分析はマーケティングの基本中の基本である「顧客理解」や「消費者インサイトの発見」に真摯に向き合った、本質的なマーケティング手法です。しかしながら、全ての店舗や経営者がこの手法を行うことは現実的に可能なのでしょうか? ここでは実店舗経営やコンサル業を行い、複業家でもある僕の見解を共有したいと思います。

まず前準備としての「顧客セグメンテーション」は、費用回収を見込めるのなら中小企業やフリーランスでも検討してみる価値のある、再現性の高い手法だと思います。ただし、「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」作成のための定量調査には多少の予算が必要です。例をあげると、定量調査を行うための初期投資に数万〜10万円程度、その後の効果計測のための継続利用にも同様のランニングコストがかかります。

久保真介
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顧客ピラミッドを一度つくるだけなら低予算でできますが、継続して活用していくとなると、マーケティングにそれなりに予算を掛けられる体制が必要ですね。

また、西口さんのマーケティング手法を最大限に活用できるのは「テレビCM」などを活用し、高い市場シェア獲得を狙うような大企業であるのは間違いありません。そのため、中小企業やフリーランスで行うためには、予算と相談する必要がありますね。

そうは言っても、N1分析の根本的な考え方はマーケティングや経営に関わる人全員が知っておくべきものだとぼくは考えています。徹底した顧客理解を、リアルな顧客を通じた実地調査で深掘りする姿勢はとても大切だからです。

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久保真介
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しかも、N1インタビュー自体はほとんど予算をかけずに行うこともできますよね。自分のお店に来てくれたお客さんにちょっとお時間もらえれば実施できます。

そういう意味でも、どんな立場の人にとってもN1分析は非常に役に立つ考え方だと思います!

【まとめ】マーケティングでは「顧客理解」や「顧客インサイト」が最重要!!

N1分析とは、実在するたった1人の顧客に注目し、インタビューを通して深く理解することです。ロイヤル顧客がなぜロイヤル化したのか、離反顧客がなぜ離反したのかなど、それぞれの顧客のカスタマージャーニーを深掘りすることで、「顧客インサイト」や強い「アイデア」の種を見つけ出します

インサイトはマーケティングの最重要ポイント!顧客心理の核心をつく方法とは? マーケティングでは、「インサイト(Insight)」という言葉がよく使われます。インサイトは「消費者インサイト」や「顧客インサイト」...

繰り返しとなりますが、マーケティングでは「顧客理解」が何より重要です。したがって、顧客理解に非常に大きな重点を置いた西口さんの「N1分析」は、マーケティングの本質に沿った手法と言えます。

久保真介
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しかも、低予算でそのまま実践できるノウハウも詰まっています!

ぜひ西口さんの『顧客起点マーケティング』を読んで、顧客起点でマーケティング戦略を考えるというアプローチをぜひ実践してみてください!

 

久保真介
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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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