マーケティング

【要約&書評】『顧客起点マーケティング』とは? 元P&G・西口一希流のマーケティング手法を解説!

顧客起点マーケティングとは、P&G出身で、肌ラボやロクシタン、スマートニュースなどのマーケティングを手がけた西口一希さんが提唱するマーケティングの理論・手法です。西口さんの著書たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティングという本の中で、その手法や考え方、実際に用いるフレームワークなどについて、実際の事例も交えて詳細に語られています。

この本は、一冊の中に「西口さんのマーケティング理論や具体的な手法」に加え、「マーケティングの本質」まで高い密度で詰め込まれている、とてもおすすめな書籍です。

そんな、西口さんの著書『顧客起点マーケティング』の概要を紹介しつつ、ぼくの見解や感想とともに解説していきます!

久保真介
久保真介
美容室経営や経営コンサルなどをする中で感じていることを踏まえつつ、本の解説と書評を行なっていきます!

目次
  1. 西口一希さんの「顧客起点マーケティング」とは? ── たった一人の顧客を徹底的に理解するマーケティング手法!
  2. 【考察】『顧客起点マーケティング』の感想 ── 「N1分析」の考え方はマーケティングの本質である!
  3. 本を読んで感じた顧客起点マーケティングの難点 ── 予算・規模感の問題
  4. 【まとめ】西口一希さんの「顧客起点マーケティング」は顧客への「N1分析」を徹底した本質的なマーケティング手法

西口一希さんの「顧客起点マーケティング」とは? ── たった一人の顧客を徹底的に理解するマーケティング手法!

顧客起点マーケティングとは、「N1分析」を使った徹底した顧客理解と、「顧客ピラミッド」「9セグマップ」という独自のフレームワークを軸にした、西口一希さん独自のマーケティング理論です。

(関連記事①)N1分析とは? 西口一希さんのマーケティング手法を経営者目線で解説!

(関連記事②)「9セグマップ」「顧客ピラミッド」とは? ── 西口一希さんが提唱するマーケティング・フレームワークを解説!(※近日公開)

マーケティングの基本中の基本である「顧客理解」インサイトの発見」に非常に大きな重点を置いているのが特徴で、単に売上を伸ばすことではなく、ファン(ロイヤル顧客)獲得を通して長期的なブランドの成長と売上・利益の向上を目的としています。

久保真介
久保真介
マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーやマネジメントの父・ドラッガーなどと同じく、“マーケティングの本質”を非常に重視された理論・手法です^^!

"独自性"と"便益"を兼ね備えた「アイデア」の創出こそがマーケティングの最重要課題!

西口さんはこの本の中で、"独自性"と"便益"を兼ね備えたものを「アイデア」と定義しています。

【ポイント】

  • 独自性 = 他にはない特有の個性であり、唯一無二とも言い替えられる、既視感のない特徴のこと
  • 便益 = 顧客にとって都合がよく利益があること

(※ 西口一希さんの『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』より、p.030〜p.031から抜粋して引用)

西口さんは、この「アイデア」の創出こそ、マーケティングの最重要課題だと述べています。

“独自性と便益を兼ね備えた「アイデア」があるかどうかが、マーケティング上で最も重要な要素です。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.030より

“独自性と便益を両立する「アイデア」を創出することは、マーケティング責務の一つだと思います。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.036より

 

「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」

西口さんは、「アイデア」には商品・サービス自体のアイデアを意味する「プロダクトアイデア」と、そのプロダクトを顧客に認知してもらい、手に取ってもらうための「コミュニケーションアイデア」の2種類があるとしています。

【ポイント】

  • プロダクトアイデア = 独自性があってお客様に便益を与えられる商品/サービス
  • コミュニケーションアイデア = プロダクトをお客様に適切に認知してもらい、手に取ってもらうための顧客コミュニケーションで、それ自体に独自性とお客様への便益があるもの

強い「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」。この2つを生み出すことがマーケティング部門に求められていることなのです。

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久保真介
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より正確には、西口さんは「早期の認知形成」も同じくらい重要な要素だと本の中で強調しています。どんなにいい「アイデア」を考えたところで、すぐに実行してお客さまに認知してもらわなければ、他社に真似されてしまい「よくある商品の1つ」になってしまうのです!

「アイデア」創出のカギは「N=1」の徹底した顧客理解にあり!── N1分析の重要性

西口さんのマーケティング理論の中心となるのが「N1分析」です。「N1」は「n=1(標本数1)」、つまり「たった1人に注目すること」を意味します。

たった1人の実在する顧客に注目して、インタビューなどを通してその購買行動やその奥にある心理を徹底的に理解します。特に重要なのが、ブランドを定期的に購入してくれている売上貢献度の高いお客さま(= ロイヤル顧客へのインタビューです。

【ポイント】
お客さまがどこでブランドのことを認知し、なぜ購入しようと思い、何がきっかけでロイヤル化したのか(使い続けているのか)という「カスタマージャーニー」を突き止めることで、強い「アイデア」の種を見つけます。

また、一度購入してくれたけど再購入はしなかった「離反顧客」にN1インタビューをすることで、顧客化に至らなかった原因などを知ることができます。

このように、アンケート調査などの「平均化されたデータ」やペルソナなどの「架空の顧客像」ではなく、実在するたった1人のお客さまを徹底的に深掘りするのが「N1分析」です。

久保真介
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「N1分析」の詳細は以下の記事をご覧ください!

N1分析とは? 西口一希さんのマーケティング手法を経営者目線で解説! 「N1分析」という言葉を聞いたことがありますか? N1分析とは、P&G出身であり、肌ラボやロクシタン、スマートニュースな...

顧客起点マーケティングを語るのに欠かせない「顧客ピラミッド」と「9セグマップ」のフレームワーク

顧客起点マーケティングを語るうえで、「N1分析」とともに欠かせない要素が「顧客ピラミッド」と「9セグマップ」という、西口さん独自のフレームワークです。

これらは簡単なアンケート調査等の「定量調査」をもとに作られ、効果的なN1分析を行うための「セグメンテーション」の役割を持ちます。

【補足】
セグメンテーションとは、自社商品・サービスが属するカテゴリーが対象としている市場内の顧客を、ニーズや特性などによって細分化することを言います。また、分けた1つ1つの区分のことを「セグメント」と言います。

わかりやすい例を挙げるなら、顧客を性別・年齢によって「20代女性」「20代男性」「30代女性」「30代男性」などと区分することをセグメンテーションと言います。区分けの仕方は年齢や性別、居住地域などだけではなく、顧客が抱えるニーズの種類など心理的な要因で分けることも多いです

顧客ピラミッドとは?

顧客ピラミッドは、商品/サービスの顧客および潜在顧客を「認知の有無」「使用経験の有無」「購入頻度」などで5つのセグメントに分類したものです。アンケート調査の結果によってそれぞれのセグメントの割合を出すことで、市場自体の規模から概算の売上を導き出すことも可能です。

顧客ピラミッドの概念図

 

久保真介
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なお、実際に運用するときはピラミッド型の概念図ではなく、Excelなどで表にまとめます

また、顧客ピラミッドは、一度作って終わりではありません。施策を行うたびに作り直していくことで、マーケティング施策の効果を可視化する役割も持ってます。

久保真介
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セグメントごとに使ったマーケティング経費を書き入れることで、広告等の費用対効果を見ることができます。また、アンケート調査から競合他社の顧客ピラミッドを作ることもでき、競合の売上予測をするなど、市場調査に役立てることも可能です。

9セグマップとは?

9セグマップは、顧客ピラミッドに「ブランド選好性」という軸を加え、さらに細かくセグメント分類したものです。

9セグマップ

この9セグマップを使うことで、ブランディング施策の効果を数値化できるようになり、さらに高い精度でマーケティング施策の立案ができるのです。

「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」は「N1分析」の起点になる

前述の通り、「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」は簡単なアンケート調査などの「定量調査」によって作成します。ここで重要なのは、顧客ピラミッドや9セグマップをつくるのは「あくまでマーケティング施策の仮説づくりや効果測定」のためだということです!

【ポイント】
顧客起点マーケティングの肝は、「N1分析」による徹底した顧客理解とそれを基にした「アイデア」の創出です。定量分析では「平均的な意見」しか見つからず、お客様の心に刺さる強いアイデアは導き出せないのです!

顧客ピラミッドや9セグマップは、N1分析とその後のマーケティング施策を効果的に行うためのものです。これらによってお客様をセグメントに分類しておくことで、どのセグメントをターゲットにマーケティング施策を行うか考えたり、誰にN1インタビューをすればいいのか探ったりするわけです。

久保真介
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そのほか、実際に行なったマーケティング施策の効果測定をしたり、施策を行う前の事前調査にも活用されます。顧客ピラミッドや9セグマップの詳細は、以下の記事で実践的に解説しております。合わせてご覧ください!

(※ 近日公開)

「N1分析」「顧客ピラミッド」「9セグマップ」が顧客起点マーケティングの要!

ここまでに解説した、「N1分析」の手法・考え方と「顧客ピラミッド」「9セグマップ」のフレームワークが西口さんのマーケティング理論の要です。

これらをもとに、次のようなステップで施策を行なっていくのが「顧客起点マーケティング」の全体像となります。

  1. 定量的なアンケート調査でお客さまの「行動データ」と「心理データ」を取る
  2. 定量調査をもとに「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」をつくる
  3. セグメントごとに「N1分析」から「顧客インサイト」を探り、強い「アイデア」を見つけ出す
  4. 「アイデア」をもとに商品企画やプロモーション施策を立案する(定量調査によって立案した施策が本当に効果的か検証)
  5. 「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」の変化から、実施したマーケティング施策の効果を把握・検証する

かつて西口さんが勤めていたP&GのCEO、A・G・ラフリー氏は、着任早々に「Consumer is Boss(顧客こそボス)」と社員たちに説いたと言います。西口さんの「顧客起点マーケティング」もまさに、ラフリー氏の教えに則った、顧客理解を最重要視したマーケティング理論なのです。

【考察】『顧客起点マーケティング』の感想 ── 「N1分析」の考え方はマーケティングの本質である!

この本で示されている西口さんの「顧客起点マーケティング」の手法・フレームワークは、マーケティングに精通している人なら誰でも納得するような、基本原則に忠実かつ具体性・再現性の高いものです。

しかもこの本には「抽象度の高い理論・考え方」から「具体的な実践方法」まで密度濃く解説されており、すぐに実践に移すことができます。

久保真介
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ぜひ読んで欲しいおすすめの一冊ですね^^!

 

久保真介
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ここからは、実際に美容室経営や経営コンサルを行うぼくがこの本を読んで感じたことなどをまとめていきましょう!

とりあえず「売上をあげること」や「集客すること」はマーケティングの本質じゃない

近年、Twitterを見たり人に話を聞いたりしていると、「マーケティング」を「売上をあげること」「集客すること」と考えている人が多いようです。特に、「Webマーケティング」を現場で使っている人に多い傾向なのかなと感じています。

久保真介
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そもそも、マーケティングとプロモーションやセリング(セールス)の違いをよくわかっていない人が多いのかな、と思います。

でもこれは、マーケティングの本質とはかなりズレています。確かに、適切な市場調査に優れたプロモーション戦略、セールスコピーなどがあれば、それだけで商品の売上を一気に伸ばすことも不可能ではないです。

しかしそれだけでは、長期的に成功することはできないのです!

マーケティングの本質は「顧客理解」と「ファンづくり」

マーケティングの本質とは、「顧客理解」を通して「持続的に売れる仕組みをつくること」であり、「顧客を創造すること 」です。西口さんも本の中で次のように記しています。

“そもそもマーケティングとは、平たく言うと、魅力的な商品やサービスを開発し、顧客に継続的に購買、使用していただく活動です。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.023より

この一文にある通り、マーケティングは「魅力的な商品やサービスを開発すること」から始まっています。そのために市場調査などをするのです。

そして、マーケティングの真の目的は、顧客に【継続的に】買ってもらうことです。言い換えるなら、【ファン】になってもらうということです。本の別の箇所では、西口さんも次のように述べています。

“マーケティングの責任は、ロイヤル顧客数および一般顧客数を拡大し、それぞれの単価と購買頻度を向上させて、掛け算としての売上を最大化し、費用対効果を高め、利益率を向上させていくことです。”
── 西口一希 著『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社, 2019年)p.089より

この西口さんの一文にある通り、マーケティングは商品の価値を高めることで、「単価」と「購買頻度」を同時に向上させるものです。安売りしなくてもお客さまが喜んで買ってくれる。そのための活動がマーケティングなのです。

マーケティングの目的とは「売れる仕組みをつくること」である!マーケティングの役割やメリット、本質をわかりやすく解説! 「マーケティング」という言葉を見聞きする機会は年々増えていますが、あなたはマーケティングとはなんなのか、どんな役割があって、どのよう...

 

本を読んで感じた顧客起点マーケティングの難点 ── 予算・規模感の問題

前述の通り、西口さんの『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』は素晴らしい一冊です。ただし、注意しておくべき点もいくつかあります。

まず、マーケティング初学者が読むには少々難しめかも知れません。現場経験をしてから読むか、この本の前に2〜3冊は入門書を読んでおくことをおすすめします。

そして、いちばんの注意点は、この本で紹介されている手法を実行するには、それなりの予算感が必要ということです。この本は西口さんのマーケティングプロセスを詳細に解説してくれているのでそのまま真似することもできる素晴らしい書籍なのですが、効果的に活用するとなると「テレビCMの活用が視野に入っている」くらいの事業規模が望ましいと思われます。

久保真介
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顧客ピラミッドや9セグマップをつくるための定量調査には、1回あたり数万円はかかり、それを継続的に行う必要があります。また、見い出した「アイデア」を早期に形にして「認知形成」するためには、テレビCM等の予算がかかる施策が必要な場合もあるでしょう。

そのため、マーケティングにあまり予算を割けない中小企業やフリーランスの方にとっては、この本の内容をそのままに活用するのは難しい場合が多いでしょう。

久保真介
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逆に言うと、予算をしっかり持っている企業のマーケティング担当者なら、この本は物凄く有用な一冊です。ぜひ読んで実践してみてください!

とはいえ、ぜひ読んでおきたい「マーケティングの本質論と現場論」を両方学べる良書!

ただし、中小企業やフリーランスの人にとっても、この本はぜひ読んでみて欲しい役立つ一冊だと思っています。マーケティングの本質を密度濃く深掘りしていて、重要な示唆に富んだ良書だからです。

それに、この本の中で一番大切な「N1分析による顧客理解」という考え方は、予算に関わらず誰でも実践できます。いつも来てくださるお客さまや家族などの身近な人に話を聞いてみたり、行動をよく観察してみることで、自分のビジネスを成功させる鍵が見つかるかも知れません。「N=1」から事業を発展させる考え方を、ぜひ学んでみてください!

 

【まとめ】西口一希さんの「顧客起点マーケティング」は顧客への「N1分析」を徹底した本質的なマーケティング手法

「顧客起点マーケティング」とは、西口一希さんが著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』の中で提唱する、独自のマーケティング理論、マーケティングプロセスです。

  • 定量調査をもとに顧客を分類する「顧客ピラミッド」と「9セグマップ」のフレームワーク
  • たった一人のお客さまに注目して、徹底的に行動や深層心理を理解する「N1分析」

この2つを要に、強い商品企画やプロモーション戦略を導き出し、さらにフレームワークによってマーケティングやブランディング施策の費用対効果を可視化します。

「顧客理解の徹底」という、マーケティングの本質に忠実な考え方なうえ、非常に具体性と再現性の高い手法です。ぜひ西口さんの本を読んで実践してみましょう!

久保真介
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