会社の経営戦略や事業戦略を考えるための有名なフレームワークのひとつに、SWOT分析(スウォット分析)という手法があります。SWOT分析とは何なのか簡単にまとめると、「自社や市場の現状を『強み・弱み・機会・脅威』の4要素に分けて把握・分析するフレームワーク」であり、「中小企業や個人事業主などといった小規模事業者の戦略立案に向いた手法」だと言えます。
【ポイント】SWOT分析は「分析性や客観性に欠ける」「戦略立案には使いにくい」「時代遅れのフレームワークである」などと言われることもあるのですが、実際には必ずしもそうとは限りません。
確かに、正確性の高い分析と戦略立案が必要な大企業には不向きなのですが、効果の期待できる戦略をスピーディーに立案してすばやく実行に移したい、中小企業やスタートアップ、フリーランスなど小規模事業者にとって、SWOT分析は非常に使いやすく便利なツールなのです。
ただし、何となくSWOT分析のテンプレートに穴埋めをするだけではあまり意味のある分析にならず、時間の無駄になってしまうことも多々あります。今回は、SWOT分析をあなたのビジネスに即応用できるように、概要から具体的な使い方、注意点まで余すことなく解説していきます。
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SWOT分析とは? ── 小規模事業者の戦略立案に有効な環境分析フレームワーク
SWOT分析は、1960年代に生まれた戦略立案のためのフレームワークです。ハーバードビジネススクールで教員を務めていたエドモンド・ラーンド、C・ローランド・クリスティンセン、ケネス・アンドリュースの3人がSWOT分析の原型をつくったと言われています。ちなみにSWOTとは、「強み・弱み・機会・脅威」の頭文字をとったものです。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
SWOT分析では、市場のニーズや競合の動向などから導き出した「機会・脅威」を、自社の「強み・弱み」と照らし合わせて分析することで、自社が取るべき戦略や戦術、アクションを導き出します。
具体的には、環境をまず「内部環境」と「外部環境」に分けて考えます。さらにそれらを「ポジティブ要素」と「ネガティブ要素」に分けることで、以下のテンプレート(マトリックス)を埋めていきます。
つまりは、自社や市場のさまざまな要素を以下の4つに分けて整理・分類していくわけです。
- ポジティブな内部要因 = 強み(S)
- ネガティブな内部要因 = 弱み(W)
- ポジティブな外部要因 = 機会(O)
- ネガティブな外部要因 = 脅威(T)
そうして作ったマトリックスを見ながら事業戦略などを考えていくのがSWOT分析です。
SWOT分析の主な目的は事業戦略や戦略目標を導出すること!
SWOT分析をするにあたって、一番大切なのは「そもそも何でSWOT分析をするのか」を事前に把握しておくことです。
SWOT分析だけに限った話ではありませんが、マーケティングや経営戦略の手法やフレームワークは、それを使用する目的を事前に明らかにしておかないと、有効に活用することはできません。机上の空論にならないためには、目的をしっかりと理解して、その目的に向かって分析を進めていく必要があるのです!
【ポイント】SWOT分析を行う目的は、究極的に言えば「儲けること」、ただそれだけです。もう少し砕いて言えば、売上や利益を増やすために「事業戦略や具体的な戦術、アクションプラン、目標を導出すること」がSWOT分析の目的です。
つまり、SWOT分析は売上や利益の向上につながる「事業戦略」や「アクションプラン」を立てるために行うのです!
SWOT分析は「立案済みの戦略・計画の評価ツール」としての利用も効果的!
SWOT分析は「事業戦略立案」のためのツールと述べましたが、SWOT分析は「立案済みの戦略を評価する」という目的に利用することもできます。
戦略立案のためのフレームワークは、SWOT分析のほかにも「ファイブフォース分析(5F分析)」や「STP分析」など効果的な手法がいくつかあります。特に大企業などではSWOT分析よりも5F分析、STP分析等を用いた方が有効な場合が多いため、それらの方法で戦略を立てたうえで、立てた戦略に問題がないかチェックするという目的でSWOT分析を使用することもできるのです。
SWOT分析は大企業の戦略立案には向かないと最初に述べましたが、このような使い方であればSWOT分析は効果的に活用できます。
事前に戦略の仮説を立てたうえだとSWOT分析自体も進めやすいため、この使い方も非常におすすめです!
社員の当事者意識やモチベーション向上のための「社内研修」にも使える
SWOT分析には「難しいことを知らなくても、感覚的に取り組みやすい」という特徴がありますので、社員研修の題材として使うのにも効果的です。
「この会社の強みや弱みってなんだろう?」とか「うちの売上をあげるためにはどんなことをすればいいんだろう?」と従業員に考えてもらうことで、従業員に「会社の事業に参加している」という当事者意識が芽生え、モチベーションアップが期待できます。
また、普段だとなかなか聞くことができない「従業員たちが普段感じていること」を知る機会にもなるため、従業員だけでなく経営陣にとっても意味のある研修になるでしょう。
SWOT分析は時代遅れって本当? SWOT分析のメリット・デメリットと有効な活用方法
前述した通り、SWOT分析はかなり古くからあるフレームワークであり、「使いにくい」とか「時代遅れ」と言われることもあります。実際、メリットだけでなくデメリットもあり、すべての企業の事業戦略立案におすすめできるようなツールではありません。
SWOT分析のメリット・デメリット
SWOT分析のメリットとデメリットを簡単にまとめてみましょう。以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
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|
上記の通り、SWOT分析は「取り組みやすいけど精度はやや劣る」戦略立案の方法です。「ファイブフォース分析(5F分析)」や「STP分析」など、もっと精度が高いとされる戦略立案の手法・フレームワークも考案されており、それゆえに「時代遅れ」などと評されてしまっているのです。
事実、競争戦略の第一人者でありファイブフォース分析の考案者でもあるマイケル・ポーター氏は、以下の通りSWOT分析の有効性を否定する立場を取っています。
"SWOTは企業を環境と結びつけることを目的とするが、得てして分析性と客観性に欠ける。"
── ジョアン・マグレッタ 著『〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房, 2012年)p.287より
この意見は、僕も正しいと思います。ただし、そうだからと言って、「SWOT分析はもうまったく不要」というわけでもないと思っています。
SWOT分析は中小企業やスタートアップにおすすめの手法!
経営コンサルタント・伊藤達夫さんの以下の言葉は、SWOT分析のメリット・デメリットと、それを踏まえたうえでの活用方法を端的に表しているでしょう。
“SWOT分析は中小企業が成長のために活用し、卒業しているツールだと私は考えています。”
── 伊藤達夫 著『これだけ!SWOT分析』(すばる舎リンケージ, 2013年)p.165より
「取り組みやすい」「誰でも使える」というメリットがあるSWOT分析は、駆け出しのスタートアップや中小企業、フリーランスなどといった事業規模がまだ小さい事業主にとっては便利なものです。
小規模の事業主にとっては「スピードこそ武器」ですし、「多少荒くてもいいからスピーディーにアイデアを出してアクションまで繋げたい」という人は多いです。
また、SWOT分析を繰り返すことで自然と経営者思考やマーケティング脳を鍛えらるというメリットもありますので、「これから事業を拡大していきたい」とか「傾いた経営を立て直したい」などと考える小規模事業主にとって、SWOT分析はぴったりなツールなのです。
【メモ】SWOT分析は個人の業績アップや転職活動にも活用できる
ちなみに、SWOT分析はビジネスオーナーのためだけのツールではありません。個人が会社の中で業績アップするために使ったり、転職活動を成功させるために利用したりなど、個人の自己分析と課題解決のためにも活用できます。
「戦略」を立てて臨むべきことになら何にでも応用できますので、SWOT分析は「戦略立案の基本的な考え方」として身につけておくと良いでしょう。
具体的なSWOT分析のやり方 ── クロスSWOT分析を活用して事業戦略を導出する方法
それでは、実際にどのようにSWOT分析を実践し、活用していけば良いのでしょうか。環境分析の方法から戦略立案の考え方まで、ステップごとに解説していきましょう。
【ステップ①】まずは「仮説」を立ててみる
SWOT分析に取り掛かる前にやるべきことがいくつかあります。まずやるべきは、「仮説」を立てることです。経営コンサルタントの伊藤達夫氏は、著書の中で次のように述べています。
“仮説がないSWOT分析のプロジェクトは、平板で、事実の整理に終始し、関わった人が疲弊し、特に新しいアイデアなどを生まずに終わることが多いです。”
── 伊藤達夫 著『これだけ!SWOT分析』(すばる舎リンケージ, 2013年)p.084より
どんな調査・分析も、仮説を立ててから行うことで調査すべき範囲や調査の目的がハッキリして、効率化することができます。SWOT分析の調査に入る前に、まずは「世の中全体がこんな風に変わってきているから、うちのサービスもこう変化させたら儲かりそうかな?」などといった仮説を立ててみましょう。
【ステップ②】「自社が提供している価値」などを明確にしておく
仮説が立ったら、次に行うべきは「自社が顧客に提供している価値」などの明確化です。このステップをしておくかどうかで、SWOT分析や戦略策定の精度が変わるからです。
具体的には顧客アンケートを取るなどの方法で、「どうして自社の製品を購入したのか?」「実際に購入してみてどうだった?」といったことを把握したり、「3C分析 = 顧客・市場・競合の分析」を行ったりしていきます。
そのような調査を踏まえて、「自社の価値」や「自社のライバルとなる商品・サービス」などを明確化することで、「KSF(Key Success Factor ; 重要成功要因) = 成功のカギとなる要素」を見つけ出すのです。
理想的には、この段階で「KSF=成功のカギ」が明確化できていると良いのですが、難しければそれも「仮説」で構いません。
SWOT分析の良さは「手軽で直感的に実行できる点」ですので、前準備に時間をかけ過ぎるのも考えものです。そもそも、SWOT分析は「厳密な調査や精度の高い分析などを実践する段階に至っていない事業主」向きの手法ですので、その点を理解しておきましょう!
【ステップ③】外部環境分析(機会・脅威)
「仮説」と「KSF」の準備ができたら、それらを踏まえて実際にSWOT分析を始めていきます。まず始めに行うのは「外部環境分析」です。
外部環境とは、顧客や市場、競合企業をはじめ、政治や経済、社会情勢などのマクロな状況なども含めて、自社の外部にあることすべてです。これらの要素をポジティブ要因とネガティブ要因に分けていき、「機会」と「脅威」を埋めていきます。
ただし、調べる際は「調査範囲」に注意しましょう。自社のビジネスにあまり影響がないことまで調べても仕方ありませんので、仮説やKSFを踏まえて、自社や業界に影響の大きいことを中心に調査しましょう。
【ステップ④】内部環境分析(強み・弱み)
続いては自社に関すること、つまり「内部環境」を調査・分析していきます。実際の売上データやお客様の声を元にしたり、社員へのヒアリングを行ったりして、「強み」「弱み」を埋めていきます。
ここで大切なのは、強みも弱みも、ライバルや市場の状況次第で変わってきますし、自社の戦略によっても変わってくると言うことです。戦略の仮説やKSFをもとに考え、自社の売上・利益を伸ばすために強みとなるのはどこなのか、弱みとなるのはどこなのか判断していきましょう。
【ステップ⑤】クロスSWOT分析を行い、戦略や戦術、アクションプランを具体化する
SWOT分析のテンプレートがすべて埋まったら、それらをクロス分析することで具体的な戦略や戦術を見出していきます。
【ポイント】
- 強み × 機会(SO分析) : 強みを積極的に利用し、チャンスを活かす。会社の重点方針や突破口になる部分(積極戦略)
- 弱み × 機会(WO分析) : チャンスを利用し、弱みを強みに変える。または、チャンスを活かせるように弱みを改善する(改善戦略)
- 強み × 脅威(ST分析) : 強みを活かして、脅威に対抗する。または、早めの売却等を検討する(差別化戦略)
- 弱み × 脅威(WT分析) : 弱みを踏まえて、脅威を避ける。戦略的撤退なども要検討(致命傷回避・撤退縮小戦略)
事前に明確化しておいた「KSF = 成功のカギ」を踏まえてこれらの分析を行い、仮説を検証したり、売上や利益を拡大できる新たなアイデアを生み出していきます。
このようにしてSWOT分析で得られたアイデアをもとにして、具体的なアクションプランに落とし込んでいくのです。
SWOT分析の活用事例 ── 全国No.1の評価を受けた「鳥取県立図書館」に学ぶSWOT分析の活用方法
具体的にSWOT分析はどのように活用されているのかの実例として、「鳥取県立図書館」の事例を紹介しましょう!
鳥取県立図書館は単純な図書館としての機能を持つだけではなく、ビジネス支援や子育て応援、法律情報サービスなど、さまざまな優れた活動を行っており、慶應義塾大学による2012年の「国立国会図書館向けサービス・事業に関する調査」では都道府県立・市町村立の図書館の中で全国No.1図書館の評価を得ています(国立図書館は除く)。
鳥取県立図書館がそんな評価を得ることになった大きな要因が、2003年から実施していたSWOT分析による現状分析とそれに基づくアクションプランの実行です。同図書館は、
- 「もっと県民に図書館の基本的な機能を理解して欲しい」
- 「図書館を,地域や個人の課題解決に資する情報提供が可能な頼りになる機関として認識して欲しい」
という2つの目標を掲げ、これらの目標達成のためにSWOT分析を行いました。その結果が以下の通りです。
この結果を踏まえて、2015年に「鳥取県立図書館の目指す図書館像」と「アクションプラン」を定め、それから着実にプランを実行して、サービスを向上させ続けています。具体的には、例えば以下のような施策を実現しています。
- 図書館活用で夢を叶えた事例を公募する「図書館で夢を実現しました大賞」を開催
- 首都圏ばかりで開催されたいた「ビジネスライブラリアン講習」を鳥取まで誘致し、図書館職員のビジネススキルを向上
- 私立を含むすべての県内高等学校に毎日必要な資料を送るシステムを整備
- 起業や経営、融資、特許などに関する専門機関と連携し、相談会やセミナーを定期的に開催
SWOT分析によって正確に現状を把握し、強みや機会を活かしたり、弱み・脅威をカバーしたりすることで、このように目標達成に向かっていくことができるのです。
SWOT分析を行う前に!知っておくべき注意点と分析のコツ
最後に、SWOT分析を行う際に気をつけておきたい注意点や分析のコツをまとめておきましょう! SWOT分析をするときは、次の5点がポイントです。
【SWOT分析のポイント】
- 前提条件を整理してから分析を行う
- ひとつの事実を多面的に解釈する
- 自社の強みや弱みもデータを見て判断する
- 内部要因と外部要因はしっかり切り分けて考える
- ロジカルにこだわり過ぎない
特に注意して欲しいのは、5つ目の「ロジカルにこだわり過ぎない」という点です。SWOT分析はそもそも、厳密にやろうとするとやりにくい手法です。たとえば「商品の値段が安い」というひとつの事実も、「お客様が買いやすい」と考えれば「強み」になりますし、「利益率が低い」と考えれば「弱み」になります。
このように、どんな事実にも多面性があるので、ロジカルにこだわり過ぎているとうまくSWOT分析を活用できないのです。
【まとめ】SWOT分析で自社の現状を正しく分析して事業に活かそう!
SWOT分析は、中小企業やフリーランスの事業戦略立案に効果的なフレームワークです。自社を取り巻く環境を「内部環境」と「外部環境」に分け、それらをさらに「ポジティブな要素」と「ネガティブな要素」に分けることで、事実を「強み・弱み・機会・脅威」に分類して整理していきます。
SWOT分析は「客観性や分析性が低い」というデメリットがありますが、誰でも取り組みやすくて「荒くても良いから、それなりに効果を期待できる戦略やアクションプランをスピーディーに立てる」という目的にはうってつけです。
事業の戦略やマーケティングについて考える練習にもなりますので、ぜひSWOT分析の考え方を身につけて実践してみましょう!
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