ビジネスシーンでは、「ニーズ」や「ウォンツ」という言葉が非常によく使われます。これらは、マーケティング施策を進めるうえで基本中の基本であり、非常に重要度の高いものです。
簡単に言ってしまえば、ニーズやウォンツとは「お客様の需要や欲求」のことです。お客様が求めているもの、つまりニーズやウォンツを把握することで、売れる商品の開発や効果的な広告宣伝などに繋げていく。これがマーケティングの基本なのです。
そんなマーケティングの基本となる「ニーズ」や「ウォンツ」について、詳しく解説しましょう。
東京・新宿区にて、髪質改善を専門とする美容室「IDEAL 高田馬場(アイディール)」を経営。美容師として現場にも立つ一方で、店舗経営者やフリーランス向けの情報発信、オンラインサロンの運営、コンサルティングなども行う複業家。月間約10万PVのIDEAL公式ブログでは効果的な髪質改善の方法やヘアケア情報などを発信しており、ホットペッパーなどへの課金広告に頼らない集客を実現している。
ニーズやウォンツってなに? どう違うの?
マーケティングの世界においてニーズやウォンツという言葉がよく使われるようになったのは、マーケティング界の第一人者であるフィリップ・コトラーの影響だと言われています。まずは、そんなコトラーによるニーズ・ウォンツの定義から見ていきましょう。
ニーズとは「お客様の潜在的な欲求」であり「理想と現実の間のギャップ」である
コトラーは、ニーズを「人間が生活上必要なある充足状況が奪われている状態(欠乏状態)のこと」と定義しています。言い換えるなら、「お客様の理想と現実との間にあるギャップ」こそニーズであると言えるでしょう。
たとえば、「毎日洗濯物を干すのがめんどくさい。もっと楽したい」とか、「髪が傷んでしまってなんとかしたい。サラサラの美髪になれるように、ちゃんとしたケアがしたい」などがニーズだと言えます。
ウォンツとは「お客様が求める具体的なモノやサービス」のことである
ウォンツとは、ニーズを解消するための具体的なモノを指します。コトラーの定義は次の通りです。
【ウォンツとは?】ニーズを満たすための特定のモノが欲しいという欲望のこと
先ほど挙げたニーズの例からウォンツを考えてみましょう。たとえば「毎日洗濯物を干すのがめんどくさい。もっと楽したい」と考えている人は、「洗濯乾燥機が欲しい」というウォンツを持っていると考えられますね。
また、「髪が傷んでしまってなんとかしたい。サラサラの美髪になれるように、ちゃんとしたケアがしたい」というニーズに対しては、次のようなウォンツの例が考えられます。
- 高級なドライヤーが欲しい
- いいシャンプーやトリートメントが欲しい
- 髪がサラサラ・ツヤツヤになるヘアオイルが欲しい
- 美容院でダメージヘアに効くトリートメントや髪質改善をして欲しい
- 自宅でできる正しいヘアケアの知識・情報が欲しい
このように、お客様が抱える不満がニーズであり、それを解消してくれる具体的な商品・サービスがウォンツとなるわけです。
ニーズは目的、ウォンツは手段である | ニーズとウォンツの違いや関係性
以上の解説からわかる通り、ニーズとウォンツは手段と目的という関係性にあります。
【ポイント】
- ニーズ = 目的
- ウォンツ = 手段
「お腹が空いたから、何か食べて満たしたい」という目的がニーズであり、それを解消する具体的な手段として「レストランに行きたい」とか「パスタが食べたい」などといったウォンツが生まれるわけです。
ニーズと反対の関係にある「シーズ = 企業の強み」も覚えておこう!
マーケティングの施策・戦略を考えるうえで、ニーズ・ウォンツとともに「シーズ」という用語もよく使われます。せっかくですので、こちらも一緒に覚えておくと良いでしょう。
シーズとは、自社独自の強みとなる技術やノウハウなどといった、自社がお客様に提供できる価値のことです。ちなみに、植物の「種」を意味する「Seeds」が元になっています。
マーケティングでは、お客様が求めるニーズやウォンツを起点にしてどんな商品を開発するべきかの戦略を立てるのが基本ですが、シーズはその逆にあたる「企業側からの視点」ということになります。
現代のビジネスシーンでは、開発目線、自社目線であるシーズばかりを考えて商品開発や広告宣伝をしてもうまくいかないのが普通ですが、とはいえ自社の強みや価値を考えることもやはり大切なことです。
マーケティングでは、顧客目線である「ニーズ・ウォンツ」と企業目線である「シーズ」の両面から戦略を考える必要があるのです。
より重要なのは顧客の「ニーズ」を掴むこと。顧客の「潜在ニーズ」がマーケティングの鍵!
ニーズ・ウォンツを考えるうえで、より重要となるのはお客様の「ニーズ」を掴むことです。お客様の声は大抵の場合「水が飲みたい」とか「iPhone13 が欲しい」などのように「ウォンツ」の形で現れるものですが、ウォンツをそのまま提供するのではなく、ウォンツからニーズを把握してあげることで、お客様により満足していただくことが可能になるのです。
「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」
ニーズには実は、 2つの種類があります。「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」です。
【ポイント】
- 顕在ニーズ = 自分自身で気づいている欲求
- 潜在ニーズ = 自分では気づけていない本当の欲求
例として、ぼくの本業である美容室のお客様を例にあげてみましょう。お客様から「縮毛矯正して欲しいです」というご希望を伺ったとしましょう。この「縮毛矯正したい」というのは具体的な「ウォンツ」ですね。これを元にカウンセリングが始まります。
どうして縮毛矯正をしたいのか聞いてみると、「最近髪がうねってしまって綺麗にセットできないんです」というような答えが返ってきますね。この「うねりを抑えたい」「綺麗にセットできるようにしたい」というのがお客様の「顕在ニーズ」です。
でも、ここからさらに質問を重ねることで、お客様自身でも気づいいていなかった「潜在ニーズ」と「本当に提供すべき商品」にまでたどり着くことができます。
実のところ、この場合にお客様が求めているのは「自分でも扱いやすくて、思った通りにセットできる髪の毛」です。縮毛矯正するかどうかは一つの手段でしかなく、もしかするとこのお客様にとっての理想を叶えるにはヘアカットだけで済むかも知れませんし、縮毛矯正ではなくパーマやトリートメントの方が合っている場合もあります。そこをプロとして見極めて適切な提案をしてあげられれば、お客様に感動と満足を届けられるわけです。
この例からわかるように、お客様は「自分の本当のニーズ」を認知していないことも多いものです。このことを知っておくことは、商品開発や広告宣伝などでも役立ちますし、先ほどの例のように営業・セールスでも効果的なのです。
【まとめ】ニーズ・ウォンツの分析が顧客理解とマーケティングのファーストステップ!
お客様の「求める欲求 = ニーズ」と「ニーズを解消するする手段 = ウォンツ」を正しく把握することで、適切なマーケティング施策が可能になります。ニーズ・ウォンツとは、ビジネスやマーケティングの起点となる最も重要なものなのです。
ビジネスを成功させるには、お客様のニーズをより深く、より正確に見抜くことが重要です。お客様自身も気づいていなかった「潜在ニーズ」を見極めることで、お客様に「そうそう!これが欲しかったんだよ!」という感動を届けることができるのです。
これは大企業の商品開発プロジェクトでも、個人店のチラシ作りや営業でも言える、マーケティングの基本中の基本です。ビジネスをするならどんなことにでも当てはまるものですので、お客様の「ニーズ」をより深く考える訓練をしておきましょう!