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マーケティング施策の成否の鍵「ベネフィット」とは? | ベネフィットとメリットの違いを理解しよう!

マーケティング施策を考えるうえで、顧客の「ベネフィット」を理解することがとても重要です。ベネフィット(Benefit)を直訳すると「利益、恩恵、利便性、利点」ですが、ビジネスやマーケティングを語るうえでの文脈では、ベネフィットとは「お客様が得られるプラスの体験」を意味しています。

ところで、あなたは「ベネフィット」と「メリット」の違いをきちんと説明できるでしょうか。メリット(Merit)は直訳すると「利点、価値、長所、功績」などを意味しますが、マーケティングにおいては、「商品やサービスの強み・特徴」を表す言葉です。

直訳では同じようなことを意味する「メリット」と「ベネフィット」ですが、ビジネス、マーケティングを語るうえでは明確な違いがあります。「ベネフィット」を正しく理解することは、ビジネスやマーケティングの成功を大きく左右します。今回は、そんな大切な概念・ベネフィットについて、詳しく解説いたします。

ベネフィットとは?ビジネスやマーケティングにおける意味と使い方

ビジネスやマーケティングにおいて、ベネフィットとは「お客様が得られるプラスの体験」だと前述しました。これは「顧客が商品やサービスを利用することによって得られる恩恵」と言い換えることもできます。

マーケティングの入門書として有名な『ドリルを売るなら穴を売れ』という本がありますが、この本のタイトルはまさにベネフィットの重要性を表しています。

“ベネフィットとは、「顧客にとっての価値」だ。あなたが工具のドリルを売っているとする。あなたにとっての売り物はドリルだが、顧客にとっては、ドリル自体ではなくドリルが開ける「穴」に価値があるのだ。この「穴」がベネフィットということになる。”
── 佐藤義則 著『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社, 2006年)p.044より

 

久保真介
久保真介

ちなみにこの本のタイトルは著者・佐藤義典さんのオリジナルではなく、マーケティング界で有名なT・レビット博士が著書『マーケティング発想法』の冒頭で書いた格言をオマージュしたものです。

『マーケティング発想法』は1968年発売と50年近く昔の本なのですが、「ドリルを買う人が欲しいのは”穴”である」というレビット博士の言葉は、それだけ長い間語り継がれるマーケティング界の格言となっているんです。

ドリルを買う人が「ドリル本体」ではなく「ドリルで空けた穴」を求めているように、顧客が何か商品を購入するとき、顧客は「その商品を使うことで得られる利益や未来」を求めてお金を払っています。つまり、「商品自体」ではなく「商品が持つベネフィット」に魅力を感じて購買行動に移っているのです。

したがって、マーケティング施策を考えるときにはベネフィットを押さえることが非常に重要となります。顧客が本当に求めているものは何なのか、商品が持つ本当の価値はなんなのかを考え抜くことにより、お客様に刺さる商品企画や広告宣伝が可能になるのです。

メリットとベネフィットでは主語が違う!具体例でわかるベネフィットとメリットの違い

ベネフィットの重要性の解説に入る前に、もう少しメリットとベネフィットの違いをはっきりさせておきましょう。メリットとベネフィットの違いを理解するには、「主語が違う」という点に着目するとわかりやすいです。

【ポイント】

  • メリットの主語 : 商品
  • ベネフィットの主語 : お客様

メリットの主語は「商品」。メリットは機能やスペックを表す

商品のメリットを語る場合、主語となるのはその「商品自体」です。「この商品には、他社製品にはないこんなメリットがあります」というように、商品の強みや特徴などのといった「機能面」を語るわけです。

一例として、「iPhone13 Pro」のメリットを挙げてみましょう。次のようなスペック面の特徴がiPhone13 Proのメリットとなります。

  • 直感的にわかりやすいユーザー・インターフェース(UI)
  • 洗練されたプロダクトデザイン
  • トリプルカメラ搭載。1200万画素の高性能カメラ
  • 1TBの大容量ストレージ
  • 3,095mAhの大容量バッテリー

上に挙げた例からもわかるように、メリットは「既存品」や「他社製品」との比較によって語られます。「(Andoroidよりも)使いやすい。洗練されている」「(過去のiPhoneや多くのAndoroid製品よりも)高性能なカメラやストレージ、バッテリー」といった具合です。

このように、メリットとは「商品が顧客にとって魅力的ですよ」とアピールする「自己紹介」のようなものなのです。

ベネフィットの主語は「お客様」。ベネフィットは顧客体験を表す

「商品」を主語にして語るメリットに対して、ベネフィットの主語となるのは「お客様」です。「この商品を使えば、あなたはこんな体験が得られますよ!」といった具合に、商品を使うことで「お客様が得られる体験」を語るのです。

先ほどと同じように、iPone13 Proで例を挙げてみましょう。iPhone13 Proが提供するベネフィットは、たとえば次のようなものです。

  • 説明書を読まなくても快適に使用できる
  • 利用者が多いので、わからないことがあっても誰かにすぐ聞ける
  • 「Appleの最新機種を持っている」という所有欲を満たしてくれる
  • 思い出を綺麗な動画や写真で残せる
  • 容量が大きいので、不要な写真やデータをまめに整理しないで済む
  • 外出先でも気兼ねなくゲームや動画視聴を楽しめる
  • モバイルバッテリーを持ち歩かなくて済む

例からわかるように、多くの場合ベネフィットはメリットと対応しています。「使いやすいUI」というメリットがあるから、「説明書を見なくても快適」というベネフィットが得られるわけです。

このように、ベネフィットとはメリットの先にある満足感やプラスの体験をさしているのです。

対義語からもわかるメリットとベネフィットの違い

メリットとベネフィットの違いは、「対義語」を考えてみてもよくわかります。

メリットの対義語は、「欠点」を意味する「デメリット(Demerit)」ですね。一方で、ベネフィットの対義語には「損失」や「不利益」、「ロス(Loss)」などが当てはまります。

久保真介
久保真介
その他、「ディスアドバンテージ(Disadvantage)」や「ダメージ(Damage)」もベネフィットの対義語として挙げられます。

一例として、iPhone13 Proを購入する際のデメリットやロスを考えてみましょう。たとえばiPhone8を使用している人が iPhone13 Proへの買い替えを検討しているとすると、次のようなデメリット・ロスが考えられます。

【デメリット】

  • 本体重量が重くなる
  • 本体サイズが大きくなる(※ 人によってはメリットと感じる人もいます)
  • 高い費用を要する

【ロス(損失)】

  • ポケットに入れたときの重さが気になる
  • 画面が大きくなって、片手での操作がやりにくくなる
  • iPhone 11やSEを選べば、数万円を別のことに使える

このように、メリット・デメリットは商品の機能面を捉えているのに対して、ベネフィット・ロスは顧客にとってどのような効果・体験があるのかを述べているのです。

【おまけ】プロフィットとは?メリットやベネフィットの違いは?

なお、メリットやベネフィットと似たような言葉に「プロフィット」というものもあります。プロフィット(Profit)は、「(企業の)利益、収益」を意味する言葉です。

ベネフィットは「顧客目線」の言葉ですが、プロフィットは「企業目線」というのが一番の違いです。また、ベネフィットは体験や感情といった「無形の価値」にも使われるのに対して、プロフィットは「金銭」に限定して使われるという違いもありますね。

顧客のベネフィットこそマーケティングの肝!ベネフィットの種類と重要性

さて、ここまでベネフィットとはどのようなものなのかをメリットと対比しながら解説しましたが、このベネフィットこそがマーケティング成功のカギといえるほどに重要なものです。なぜなら、お客様にダイレクトに伝わるのは、メリットではなくベネフィットだからです!

それはどういうことなのか。ベネフィットについてもう少し深堀りしてみましょう。

お客様に本当に伝わるのは「メリット」ではなく「ベネフィット」

優れた商品の開発やサービスの考案に成功すると、企業はつい商品の機能面・スペック面を全面に推し出したくなるものです。でも実は、商品のメリットばかりを広告してもお客様にはなかなか響きません。それはなぜかというと、顧客が手に入れたいのは商品ではなく「ベネフィット」だからです!

これは例を挙げるとよくわかります。スティーブ・ジョブズ氏は初代iPodを生み出したとき、「1,000曲をポケットに」というキャッチコピーで大きなムーブメントを生み出しました。でももし、ジョブズ氏が「ポケットサイズなのに、5GBもの大容量」というコピーでiPodを発表していたらどうだったでしょうか。きっと、iPodへの注目度は大きく変わったはずです。

(画像引用元)Yahooニュース

別の例を挙げてみましょう。たとえば、A社とB社の両方が大風量をウリにしたドライヤーを開発したとします。A社の広告には「風速2.0㎥/sの大風量」というコピーとともに、ドライヤー本体の写真がデカデカと載っています。一方でB社の広告はドライヤーを実際に使っている女性の写真を使用し、「えっ?もう乾いたの……!?」というセリフとともに「毎日のドライヤー時間を半分に」というコピーが書いてあります。

あなたがドライヤーの買い替えを検討している女性だとしたら、どちらの商品に興味を持つでしょうか? おそらく、B社を選ぶ人が多いでしょう。

2つの例からわかるように、商品やサービスの「メリット」をただ説明するだけでは、顧客を惹きつけることはできません。具体的な「ベネフィット」を伝えて、顧客に商品を手に入れたときのイメージを連想させることが大切なのです。

久保真介
久保真介
つまりは、機能面・スペック面のメリットばかりを伝えられても、お客様にとってはあまりピンとこないということです。

お客様が感じるベネフィットには3つの種類がある!

以上の通り、マーケティングにおいて非常に重要な概念であるベネフィットですが、3つの種類に分類することで、さらに深く理解することができます。

マーケティング理論家のデビッド・アーカー氏は、ベネフィットを「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」の3種類に分類しています。

名称 概要 具体例
(G-SHOCKの腕時計)
➀機能的ベネフィット 商品の特徴によってもたらされる、プラスの効果や体験
(簡単、便利、安い、早い、おいしい、使いやすい など)
・防水なので雨でも安心
・頑丈なので一生使える
➁情緒的ベネフィット 商品を持つことで得られる、プラスの感情
(おもしろい、かっこいい、楽しい、安心だ)
・お洒落なデザインを楽しめる
・有名ブランドだから自慢できる
➂自己表現ベネフィット 商品を持つことで可能になる自己表現、自己実現
(理想の自分に近づける、自分に自信がもてる、自分らしくいられる)
・イケてるビジネスパーソンに近づいた感覚
・有名ブランドを身に着けている自分に自信がつく

重要なのは、機能面のベネフィットよりも情緒や自己表現に訴えかけた方が、より深く顧客の心に刺さるという点です。

「機能的ベネフィット」は、最も「メリット」に近い部分です。機能面の良さを訴えても顧客に響きにくいことは前述した通りですし、そもそも多くの人たちは、日常の中でそれほど論理的にものを考えているわけではありません。さらには、近年では企業努力によって、商品の機能面の差はつきにくくなっています。だからこそ、機能面よりも情緒や自己表現に訴えかけるべきなのです。

アーカー氏は、「機能的なベネフィットを超えたものにする」という言葉を残しています。Zaraで服を買えばクールな気分になれるし、ルイ・ヴィトンのバッグを手にしたときには気分が高揚しますよね。Zaraもルイ・ヴィトンも、それぞれが自社が提供している価値・ベネフィットを理解して、それに即したマーケティング戦略を実行し続けているブランドです。

機能面だけでなく情緒や自己実現に訴えかけることで、持続的な差別化や継続購入につながるのです。そしてその結果として、競合と差をつける強いブランドが確立していくのです。

【まとめ】「ベネフィット」を感じられるかどうかがマーケティングの成否を左右する

ビジネスやマーケティングにおいて、ベネフィットとは、顧客が商品やサービスを利用することによって受けるプラスの体験を意味しています。

メリットと似ていますが、メリットが商品の機能面を表すのに対して、ベネフィットは商品を買った先にある(メリットの先にある)顧客の体験を表しているのです。そしてこの違いを理解すれば、売れる商品、売れる広告をつくることができるのです!

顧客の立場に立って考え抜かれたベネフィットを提供しているビジネスは、長く支持され、他社と差別化を図ることができます。

顧客のベネフィットについて深く理解することは、すべてのビジネスの基本です。ぜひ、顧客目線のベネフィットを考えられ、伝えられるビジネスパーソンを目指しましょう!

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久保真介
最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
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