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【例文・テンプレート付き】ミッション・ステートメントの書き方徹底解説! ── 個人や企業を「真の成功」へと導く方法

ミッション・ステートメントとは、個人や家族、企業にとっての理念や信条など、もっとも重要な価値観をまとめて判断の拠り所とした「個人の(組織の)憲法」のことです。あるいは、自分(組織)にとっての「理想像」を明文化したものとも言えます。

また、ミッション・ステートメントは自分(組織)の「真の成功(≒ 目的地、最終目標、ゴール)」を定義するものにもなります。個人であれ組織であれ、ミッション・ステートメントを定めることでどこに向かって進んでいけば良いのかが明確になり、1日1日をどんな態度で過ごし、どんな行動をすれば成功に近づいていくのかハッキリするのです。

このように、意味のあるミッション・ステートメントを定めれば、自分(あるいは組織のメンバー)のやるべきことや目標が明確になり、主体性と効果性が向上して高い成果を上げられるようになります。そんなミッション・ステートメントの概要や効果については、以下の記事で解説しています。

ミッション・ステートメントとは? ── 7つの習慣を支える「個人の憲法」の意義と効果性を詳しく解説! ミッション・ステートメントは、経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィー博士による名著『7つの習慣』の中に出てくる重要キーワード...

今回は、上の記事では要点の紹介に留めておいた「ミッション・ステートメントの書き方・作り方」について、より具体的に解説しましょう。故スティーブン・R・コヴィー博士の大ベストセラー『7つの習慣』をもとにして、具体例を交えながら解説していきます。

目次
  1. ミッションステート・メントは個人や組織を成功に導く! ── 概要と作成の目的・意義
  2. 7つの習慣に学ぶ「個人のミッション・ステートメント」の作り方 ── 主体的な生き方を手にする方法
  3. 良いミッション・ステートメントの具体例
  4. 企業のミッション・ステートメントはどう作る? ── 作成方法と有名企業の実例3選
  5. 【まとめ】テンプレートを使って、自分だけのミッション・ステートメントを作ろう!【無料テンプレートあり】

ミッションステート・メントは個人や組織を成功に導く! ── 概要と作成の目的・意義

ミッション・ステートメントの書き方・作り方に入る前に、ミッション・ステートメントとはどんなもので、作ることでどんな効果が得られるのかを簡単に解説しましょう。ミッション・ステートメントは正しい理解を持たずに何となく作っただけではほとんど効果を発揮しないため、前提の理解が非常に大切なのです。

久保真介
久保真介
なお、先ほど紹介した記事を既に読んでいる方は、こちらの章は飛ばしてしまってOKです!

冒頭でお伝えした通り、ミッション・ステートメントは個人や組織にとって最も重要な理念や信条、価値観をまとめた「個人(組織)の憲法」です。自身の内面の奥深くを探り、本当に大事にしているものは何のかを考え、理想の未来を想像して自分の中心に定めることで、態度や行動、意思決定の拠り所となる個人の憲法が完成するのです。

そんなミッション・ステートメントは、

  • 個人のミッション・ステートメント
  • 組織のミッション・ステートメント(会社、企業、etc.)

の2種類に大別できます。

「個人のミッション・ステートメント」と「組織のミッション・ステートメント」

国内最大級のオンライン辞書「Weblio」で「ミッション・ステートメント」と調べてみると、以下の通り企業活動に絞った定義をしています(= 組織のミッション・ステートメント)。

“企業活動におけるミッション(mission)とは、企業と従業員が共有すべき価値観や果たすべき社会的使命などを意味します。従来の「経営理念」や「社是・社訓」がこれにあたりますが、そうした自社の根本原則をより具体化し、実際の行動に資する指針・方針として明文化したものを、とくに「ミッションステートメント」(mission statement)と呼びます。”
── 辞典・百科事典の検索サービス Weblio辞書より

これに対して、個人のミッション・ステートメントの重要性を説いたのが、スティーブン・R・コヴィー博士による世界的大ベストセラー『7つの習慣』です。

『7つの習慣』とは?

この本は、多くのビジネス書に見られるような「スキルやテクニックによる成功論」ではなく、真の成功は「優れた人格」によってのみ成し遂げられるという「人格主義」に基づいて書かれた本です。コヴィー博士は、現代は「ビジネスの成功」や「経済的な成功」ばかりが持て囃されすぎており、本来もっとも重要なはずの「人生の成功」が軽視されていることを危惧しています。

仕事がうまくいこうと、経済的に豊かになろうと、人は「自分自身の内面に眠る大事な価値観に基づいた成功」を手にしない限り満たされることはなく、幸せは感じられないことをコヴィー博士は『7つの習慣』の第一部で語ります。そして、そんな「真の成功」に導いてくれるのは「優れた人格」のみであり、優れた人格があれば自ずとビジネス面や経済的な成功も掴めることを述べているのです。

ミッション・ステートメントは「第2の習慣」の中心を成す概念!

人格主義による成功の原則を説くコヴィー博士は、優れた人格を手に入れ、真の成功を掴むための具体的方法を「7つの習慣」としてまとめています。

  • 私的成功
    • 第1の習慣 : 主体的である
    • 第2の習慣 : 終わりを思い描くことから始める
    • 第3の習慣 : 最優先事項を優先する
  • 公的成功
    • 第4の習慣 : Win-Winを考える
    • 第5の習慣 : まず理解に徹し、そして理解される
    • 第6の習慣 : シナジーを創り出す
  • 最新再生
    • 第7の習慣 : 刃を研ぐ

このうち、ミッション・ステートメントの概念が登場するのは「パーソナル・リーダーシップ」の実現を目指した「第2の習慣」です。パーソナル・リーダーシップとは自分の人生に自らリーダーシップを発揮すること、つまりは「自分自身の価値観や目的地を明確にして、それに従って主体的に生きること」です。そして、そのための具体的な方法がミッション・ステートメントの作成と活用なのです。

『7つの習慣』徹底解説② ──「第2の習慣 終わりを思い描くことから始める(目的を持って始める)」とは? フランクリン・R・コヴィー博士の世界一売れたビジネス書『7つの習慣』徹底解説の第2回です。 私的成功 ...
久保真介
久保真介

なお、コヴィー博士は同著の中で家族や企業など「組織のミッション・ステートメント」の効果や重要性も同著の中で語っています。とはいえ、本を一貫した主となるメッセージは「人格形成による個人の持続的成功について」です。

この記事もコヴィー博士の教えに倣い、個人についてのミッション・ステートメントを中心に解説し、企業に関する話題はサブとして解説していきます!

ミッション・ステートメントを定める価値 ── 本質は個人 / 組織を問わない

ミッション・ステートメントには「個人」と「組織」の2種類があると言いましたが、その本質や作成の目的自体は共通です。個人あるいは組織を正しい方向に導き、真の成功を掴むための基礎としてミッション・ステートメントを作成するのです。

個人のミッション・ステートメントは、自分の価値観や最も一番大事にしているものを軸に作成されます。人それぞれ価値観は異なり、何がいちばん大事なのかも違いますが、どんな人にも必ずそれぞれの「中心」となっているものがあるはずです。それを見極め、中心として据えることがミッション・ステートメント作成の最初のステップなのです。

【ポイント】
しかしながら、普段の生活の中では中心が明確になっておらず、その場の環境や他人に影響されて軸がぶれてしまっている人がほとんどだとコヴィー博士は述べています。その時々の気分や状況に応じて家族中心になってみたり、仕事中心になってみたり、時には自己中心や敵中心になってみたり……。そんな、軸の定まらない生活を送っていては主体性が低下してしまい、本来持っている能力は十分に発揮されなくなってしまうのです。

そこでミッション・ステートメントをつくると、その作成プロセスの中で自分の内面を深く見つめ、自分が持っている「真の価値観」を発見することになります。それを明文化して「自分の中心」に据え直すことで、ブレない強さと主体性が手に入るのです。

企業・組織のミッション・ステートメントも同様に効果性を高めてくれる!

企業など組織のミッション・ステートメントについても、基本は同様です。

  • この会社は何のために存在しているのか
  • 何を成し遂げたいのか
  • 組織としてどう在りたいのか
  • 社会にどう貢献したいのか

このような組織としての重要な価値観を明文化しておくことで、価値観に合ったメンバーが集まるようになり、メンバーの主体性も高まって組織としての効果性を向上できるのです。

【ワンポイント】「経営理念」や「ビジョンステートメント」との違いは気にする必要なし!

なお、ここまでの説明を読んで「会社のミッション・ステートメントって、結局のところ経営理念と何が違うの?」と思った人もいるかも知れません。あるいは、社是、社訓、ファイロソフィー、クレド、ビジョン・ステートメントなどといった用語も同様ですね。

【ポイント】
これらの用語の違いが気になる方もいるかも知れませんが、そこに本質はありません。< span class="marker">いずれもほぼ同義と捉えて問題なく、細かな違いを気にする必要はないのです!!

会社が「ミッション・ステートメント」ではなく「経営理念」という言葉を採用していようと、この記事の内容はそのまま適用できます。大事なのはどの用語を採用しているのかではなく、会社の「最も重要な価値観」や「社会の中で果たす役割」などがきちんと明確になっていて、所属メンバーが

  • この会社はどこを目指しているのか
  • 何を成し遂げたいのか(貢献、成果、実績)

を理解できるかどうかなのです。その目的さえ達成できていれば、会社が掲げているものが「ミッション・ステートメント」だろうと「ビジョン・ステートメント」だろうと「経営理念」だろうと関係なく、いずれにしても成功の原動力になってくれるはずです。

久保真介
久保真介
もちろん、「ミッション・ステートメント」と「ビジョン・ステートメント」を使い分け、両方掲げても構いません。目的を見失わずに運用しましょう!

ミッション・ステートメントとは? ── 7つの習慣を支える「個人の憲法」の意義と効果性を詳しく解説! ミッション・ステートメントは、経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィー博士による名著『7つの習慣』の中に出てくる重要キーワード...

7つの習慣に学ぶ「個人のミッション・ステートメント」の作り方 ── 主体的な生き方を手にする方法

さて、ここからが本題です。それでは、ミッション・ステートメントはどのように作成し、どのように活用していけば良いのでしょうか?

コヴィー博士の教えを読み解くと、個人のミッション・ステートメントの作り方は次の5ステップに分解できます。

【個人のミッション・ステートメントの作り方】

  1. 終わりを思い描く(自分の内面にある「基本的な価値観」を知る)
  2. 自分が生活の中で果たしている役割を「明確」にする
  3. 役割ごとに達成したい「長期的な目標」を考える
  4. 明文化の参考になる「資料(アイデアや引用句)」を集める
  5. 自分の価値観、あるべき姿、達成したいことを役割ごとに考えて「文章化」する

① 終わりを思い描く(自分の内面にある「基本的な価値観」を知る)

コヴィー博士は、ミッションステートメントを作るには「終わりを思い描くことから始める」必要があると述べています。「終わり」とはゴールであり目的地です。目的地が明確でなければ現在地も正しく掴めないですし、進むべき方角もわかりませんので、当然のことですね。

さて、それでは「終わり」として何を思い描けば良いのでしょうか? コヴィー博士は、終わりとは「自分の葬儀の瞬間」だと語ります。

「自分にとっての成功の定義」= 「自分の葬儀で述べて貰いたい弔辞の言葉」

新訳 7つの習慣』における「第2の習慣」の冒頭は、ミッション・ステートメントへの正しい理解を得るうえで欠かせないポイントです。長めの引用をしましょう。

このページと次のページは、邪魔が入らず一人になれる場所で静かに読んでほしい。これから紹介すること以外は頭の中を空っぽにし、日常生活の細々とした用事も、仕事や家族、友だちのこともすべて忘れ、意識を集中し、心を開いて読んでもらいたい。
 ある(愛する人の)葬儀に参列する場面を心の中に思い描いてみよう。あなたは葬儀場に向かって車を走らせ、駐車して車から降りる。中に入ると花が飾ってあり、静かなオルガン曲が流れている。故人の友人たちや家族が集まっている。彼らは別れの悲しみ、そして故人と知り合いであったことの喜びをかみしめている。

(中略)
 これは、今日から三年後に行われるあなたの葬儀だ。ここにいる人々は、生前のあなたに対する敬意、愛、感謝の気持ちを表しに来ているのである。
(中略)
 ここで深く考えてみてほしい。これらの人たちに、あなた自身あるいはあなたの人生をどのように語ってほしいだろうか。彼らの言葉で、あなたがどういう夫、妻、父、母だったと述べてほしいだろうか。彼らにとって、あなたはどのような息子、娘、あるいはいとこだったのか、どのような友人だったのか、どのような同僚だったのか。
 あなたは、彼らに自分がどのような人物だったのかを見てほしかったのか。どういう貢献や功績を憶えておいてほしいのか。その場に集まっている人たちの顔をよく見てもらいたい。彼らの人生に、あなたはどのような影響を及ぼしたかったのだろうか。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.116-117より
(※ 太字は当サイトにて編集)

このように、誰にも訪れる本当の終わり、つまり「自分の死」のことを考えたとき、あなたはどのように感じたでしょうか。きっと、お金や会社のことではないはずです。式に来て欲しいと思った人たちは「あなたが大事にするべき人たち」ですし、述べて欲しいと思った弔辞の言葉は「あなたにとっての成功の定義」なのです。

あなたの中心にガッチリととハマり、本当に効果を発揮できるミッション・ステートメントを作るには、このように想像力を働かせて「終わりを思い描く」ことから始める必要があります。忙しい毎日に晒され、外部の影響を受けた自分から離れて、自身の「本当の価値観」に触れることで、ミッション・ステートメントを書くための下地が整うのです。

久保真介
久保真介

終わりを思い描くことで、誠意、謙虚さ、誠実さ、勇気、正義、勤勉などをもとにした普遍の原則を感じて、自然に「成功に繋がる正しい価値観」を自分の中心に置いてミッション・ステートメントを作ることができるのです。

とはいえ、このステップでせっかく「正しい価値観」に触れることができても、ほとんどの人は日々の生活の中でまた普段の価値観に戻っていってしまうものです。だからこそ、正しい価値観を感じながらミッション・ステートメントを作ったうえで、それを自分の憲法に据えて毎日触れ、活用していくことで、自分自身の内面を徐々に「正しい価値観」に寄せていけるわけです。

② 自分が生活の中で果たしている「役割」を明確にする

終わりを思い描き、自分が本当に大事にしている価値観に触れたら、次は自分が生活の中でどんな役割(ペルソナ)を果たしているのか書き出していきます。人は毎日、たくさんの役割を演じているものです。A社〇〇部△ △課の課長、妻に対しての夫、我が子に対しての親、自分の親に対しては子供、趣味のコミュニティのメンバー、友人関係、などなどですね。どれも同じように大切なものでしょう。

【ポイント】
目標やミッションを考えようとするとき、どうしても「その瞬間に大切だと思っていること」ばかりに目が向いてしまい、バランスを失ってしまうことがあります。それでは効果的なミッション・ステートメントは作れないのです。

自分の役割、自分が責任を負っている分野を明確にして、それぞれの面で目標やミッションを考えることで、バランスと調和の取れた生活につながるのです。

③ 役割ごとに達成したい「長期的な目標」を考える

自分の役割を書き出したら、そのそれぞれについて「長期的な目標」を考えます。つまりは目的地です。

前述した通り、目的地がはっきりすることでそこに辿り着くまでの方法や道のりを考えられるようになります。これがミッション・ステートメント作成の指針・枠組みを与えるのです。

④ 文章化の参考になる「資料(アイデアや引用句)」を集める

自分の中心を知り、役割と目標をはっきりさせたら、あとはミッション・ステートメントを文章にするだけです。とはいえ、いきなり文章にしようとしても

  • どんな言葉が自分の考えをより良く表せるのか
  • どんな文章にすれば良いのか
  • どんなフォーマットで書くべきか

など悩んでしまいますよね。そこで、自分の参考になる資料探しのステップを挟むと、より納得度の高いミッション・ステートメントを作成できるでしょう。

参考になる資料はいろいろあります。インターネットで他人のミッション・ステートメントを検索してみたり、言葉を変えてビジョンや信条を探してみるのもいいでしょう。企業の経営理念なども参考になるはずです。

また、さまざまな慣用句や偉人の名言であったり、好きな作家の言葉からインスピレーションを受けることもあるでしょう。直接引用することもできますし、参考にして自分風にアレンジしてもいいですね。

自分の価値観を納得のいく言葉で文章化できれば、より高い効果を発揮できるはずです。感銘を受けた本や映画を見返してみるのもいいかも知れないですね。

久保真介
久保真介
ただし、資料探しにばかり時間をかけ過ぎないことが大切です。ある程度のところで文章化のステップに進みましょうね!

⑤ 自分の価値観、あるべき姿、達成したいことを役割ごとに考えて明文化する

ここまでできたら、あとは自分のミッション・ステートメントを文章化するだけです。ここでのポイントは3つです。

【文章化のポイント①】良い自己宣言書の五つの条件

コヴィー博士は、ミッション・ステートメントが日々の生活の中で実際に活用できて、効果を発揮できるものになるように、「良い自己宣言書の五つの条件」を次のようにまとめています。

【ポイント】

  1. 個人的な内容であること
  2. ポジティブな姿勢が表現できていること
  3. 現在形で言い切ること
  4. 視覚的であること
  5. 感情が入っていること

つまりどういうことか、コヴィー博士の例を紹介します。

“子供たちが良くない振る舞いをしたときに、私は(個人的)、知恵と愛情、毅然とした態度、そして自制心を持って(ポジティブな姿勢)対応する(現在形)ことに、深い満足感(感情)を覚える”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.171より

コヴィー博士の文章のように、「自分自身」に関わることであり、「視覚化(イメージ)」できる具体性の高い内容で書くことがまず何より大切です。

もし「世界平和に貢献する」とか「ジェンダー格差の問題をなくす」などのように対象が大きくて抽象的なことを書いても、現在の「自分」とかけ離れ過ぎていて実際の態度や行動と結びつきません。これでは意味のないミッション・ステートメントになってしまうので、具体的にイメージできるところまで落とし込む必要があるのです。

そして、「ポジティブ」な姿勢と「感情」を表した「言い切り」の文章にすることで、右脳が司る「想像」と「創造」の力を発揮できるようになります。

アスリートが試合前にイメージトレーニングをしてプレッシャーを跳ね除け、本番で高いパフォーマンスを発揮するように、ミッション・ステートメントを見返すたびにポジティブな姿勢や感情が自分の考え方を変えていき、人生の脚本を書き換えていけるのです。

【文章化のポイント②】中身や形式は人それぞれでOK!

2つ目のポイントは、ミッション・ステートメントの中身やフォーマットに正解はないということです。コヴィー博士の言葉を引用しましょう。

“一人ひとり個性が異なるように、個人のミッション・ステートメントも同じものは二つとない。形式も中身も人それぞれである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.131より

ミッション・ステートメントとは、個人の憲法です。自分の態度や行動の拠り所となり、普遍的な判断基準となるものです。この目的を果たすことが重要なのであり、逆にいえばそれさえ果たせていれば問題ないともいえます。したがって、

【ポイント】
必ずしも格好の良い言葉や引用句を使う必要はないですし、難しい文章にする必要はありません。もちろん、フォーマットも人に決められるものではないのです。

同様に、ミッション・ステートメントを手帳に書くのか、壁に貼り付けるのか、パソコンやスマホのメモアプリに書くのかも自由です。日々見返すことができて、活用できれば問題ないのです。

【文章化のポイント③】最初から完成形を目指す必要はない

最後に、最初から完全なミッション・ステートメントを目指す必要はないということを覚えておきましょう。自分がより納得できる言葉や形式を選び、完成度の高い文章を作った方が良いのは間違いないことです。だけどそれは、少しずつ修正を加えていけば良いだけのことです。

【ポイント】
ミッション・ステートメントは一度作ったら終わりではありません。毎日見返し、活用していくものです。そして、節目節目に更新してより良くしていくのも大切なことです。だから、最初から完璧なものを目指す必要はないのです。

以上の通り、ミッション・ステートメントは自由な言葉・形式で書いてOKですし、後から修正を加えてもOKです。だからまずは作成して、活用し始めることが大切なのです。

良いミッション・ステートメントの具体例

ここまでの内容を踏まえて、ぜひあなただけのミッション・ステートメントを作ってみましょう! その参考になるように、コヴィー博士の『7つの習慣』から、ミッション・ステートメントの例を3つ紹介しましょう。

ミッション・ステートメントの例① (『7つの習慣』より)

“まず家庭で成功しよう。
神の助けを求め、それにふさわしい生き方をしよう。
どんなことがあっても正直でいよう。
お世話になった人たちの恩を忘れずにいよう。
判断を下す前に双方の言い分を聴こう。
他人の忠告に素直に耳を傾けよう。
その場にいない人を擁護しよう。
誠意を持ち、なおかつ強い決断力を持とう。
毎年何か一つ新しいことを身につけよう。
明日の仕事は今日計画しよう。
待ち時間を有意義に使おう。
常に前向きな姿勢でいよう。
ユーモアを忘れないようにしよう。
職場でも家でも規律正しくしよう。
失敗を恐れず、失敗から学び成長の機会を逃すことだけを恐れよう。
部下の成功を助けよう。
自分が話す二倍の時間、人の話を聴こう。
異動や昇進を気にせず、今ここにある仕事にすべての力を注ごう。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.131-132より

これは、コヴィー博士の友人であり、末日聖徒イエス・キリスト教会の名誉総支配人であるロルフ・カー氏のミッション・ステートメントです。

この例では、自分にとって大切なこと、ありたい姿、望む態度や行動を箇条書きのように書き並べています。役割ごとに細分化するのではなく、すべてに一貫する普遍的な内容を抽出したものとも言えるでしょう。

久保真介
久保真介
どんなスタイルを選ぶかは自身の性格や価値観次第です。このような書き方は、仕事を引退した後の人であったり、あるいは経営者層など仕事とプライベートの境界が曖昧になっている人は向いていそうですね!

ミッション・ステートメントの例②(『7つの習慣』より)

“私は仕事と家庭を両立できるように努力する。私にとってどちらも大切なことだから。
 私も家族も、そして友人たち、お客さまも、くつろげて、楽しめて、幸せを味わえる家にする。清潔で整理整頓が行き届き、暮らしやすく、居心地のよい環境をつくる。何を食べるか、何を読むか、何を見るか、何をするか、何にでも知恵を働かせる。子どもたちには、愛すること、学ぶこと、笑うこと、自分の才能を伸ばすことと活用することを教えたい。
 私は民主主義社会の権利、自由、責任を大切にする。一市民として社会が直面している問題を理解し、政治のプロセスに参加し、声を上げるべきときは上げ、自分の一票を有効に使う。
 私は自ら行動を起こして人生の目標を達成する。自分が置かれた環境に左右されるのではなく、自分からチャンスをつかみ、状況を良くしていく。
 私は破滅に通じる習慣に近づかない。自分の限界を押し広げ、可能性を解き放ち、選択の幅を広げる習慣を身につける。
 私はお金に使われず賢く使う、経済的な自立を目指す。欲求のままに購入せず、必要のあるものを家計が許せば購入する。住宅や自動車のローン以外は借金をしない。収入以上のお金は使わず、収入の一部は定期預金や投資にまわす。
 自分の持っているお金と才能を使い、奉仕活動や寄付を通して社会に貢献する。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.132より

こちらは、家庭と仕事を両立する女性のミッション・ステートメントの例です。

表などを作って明確に役割ごとに分けているわけではありませんが、家庭、自己成長、子ども、市民、お金、社会活動といった具合にカテゴリごとに文章を綴っています。

ミッション・ステートメントの例③ (『7つの習慣』より)

“私の人生のミッションは、誠実に生き、人の人生に違いをもたらすことである。

このミッションを果たすために:
私は慈愛を持つ──どのような境遇に置かれている人も愛する。一人ひとりを見出して、愛する。
私は自己犠牲を惜しまない──自分の時間、才能、持てるものすべてを人生のミッションに捧げる。
私は人をインスパイアする──人は皆、慈しみ深い神の子であり、どんな試練でも乗り越えられることを、自ら身をもって示す。
私は影響力を発揮する──自分の行動によって、他者の人生に良い影響を与える。

私は人生のミッションを達成するために、次の役割を優先する:
──妻は私の人生においてもっとも大切な人である。妻とともに、調和、勤勉、慈愛、倹約の精神を持ち、実りある家庭を築く。
父親──子どもたちが生きる喜びを深めていけるように手助けする。
息子・兄弟──必要なときにはいつでも支えとなり、愛情を示す。
クリスチャン──神との誓約を守り、他の神の子らに奉仕する。
隣人──キリスト教が説く愛をもって隣人と接する。
変化を起こす人──大きな組織の中で、高い業績を生み出す触媒となる。
学者──毎日新しい大切なことを学ぶ。

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.176-177より

こちらはとある会社経営者のミッション・ステートメントです。こちらの例では、座右の銘とも言える大きなミッションを掲げたのち、それを4項目に分類してあるべき態度・行動を示しています。

さらに、自分にとって重要な役割を明確にして、それぞれどのような態度でありたいかを示しています。

久保真介
久保真介
体系的でとてもわかりやすいですね。このような書き方なら、表にまとめても良さそうですね!

企業のミッション・ステートメントはどう作る? ── 作成方法と有名企業の実例3選

ミッション・ステートメントは個人にとってだけでなく、家族や企業などといった「組織」に対しても有効です。ミッション・ステートメントを作ることで組織の目的や存在意義が明確になり、所属メンバーも自分がすべきことを認識できるようになるのです。

久保真介
久保真介
その結果、組織の生産性も自ずと高まるということですね!

組織のミッション・ステートメントは「作成のプロセス」が重要

コヴィー博士は、企業も含めて組織のミッション・ステートメントや企業理念というのは、作った文章以上にその作成プロセスこそ大切だと述べています。すなわち、組織の全員が作成のプロセスに参加し、納得したものであるからこそミッション・ステートメントの真価が発揮されると述べているのです。

“組織のミッション・ステートメントが効果的であるためには、その組織の内側から生まれたものでなければならない。経営幹部だけでなく、組織の全員が意味のあるかたちで作成のプロセスに参加する。繰り返すが、組織のミッション・ステートメントもまた、できあがったものと同じようにプロセスが重要であり、全員が参加することが、ミッション・ステートメントを実践できるかどうかの鍵を握っている。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.181より

どんなに立派なミッションを掲げていても、それが社員に受け入れられているものじゃなければただの「飾り」であり、存在価値はありません。そうならないためには、仕事に関わる全員がミッション・ステートメントに理解や共感を示すことが必要であり、それには作成ステップからの参加が一番良いわけです。

久保真介
久保真介
もちろん、必ずしもスタッフ全員で作成できるわけではないかも知れません。とはいえ、考えるべき本質は同じで、スタッフ全員が納得し、共感するミッション・ステートメントを掲げ、それに沿った会社運営をすることが何より大切です。そうすれば社員の会社への信頼が向上し、自発性が高まり、仕事の質が変わってくるのです。

有名企業の実例3選 ── ユニクロ、スターバックス、ディズニーランド

ミッション・ステートメントの一例として、世界的に有名な一流企業3社の事例を紹介しましょう!

① ファーストリテイリング(ユニクロ)

■ ステートメント ─ Statement
服を変え、常識を変え、世界を変えていく

■ ミッション ─ Mission
ファーストリテイリンググループは─
・本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
・独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します

── FAST RETAILING WAY (FRグループ企業理念)より

② スターバックスコーヒー

Our MISSION
人々の心を豊かで活力あるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから

Our VALUES
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。
お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。
勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。
誠実に向き合い、威厳と尊厳をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。
一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。
私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。

── スターバックス会社案内 会社概要 Our Mission and Valuesより

③ オリエンタルランド(ディズニーランド)

企業使命
自由でみずみずしい発想を原動力に
すばらしい夢と感動
ひととしての喜び
そしてやすらぎを提供します。

経営姿勢
1. 対話する経営
2. 独創的で質の高い価値の提供
3. 個性の尊重とやる気の支援
4. 経営のたゆまぬ革新と進化
5. 利益ある成長と貢献
6. 調和と共生

行動指針
1. 探究と開拓
2. 自立と挑戦
3. 情熱と実行

時と空間を超える新しい創造をめざして

われわれは、常に探究し続ける。
未知の世界に乗り出し
さまざまな文化を吸収し
ひとびとの心に輝きをもたらす
真理を発掘する。

われわれは、常に挑戦し続ける。
自己の能力を最高度に発揮し、
磨き、前進する。
それが、企業のエネルギー、
新たなる事業の源泉となる。

われわれが情熱を傾け創り出すものは、
すべてのひとの幸福のために、捧げられる。
それは愛とやすらぎに満ち
活力を再生させる。

ここに生きる歓びは、
心という広大な宇宙を開拓し
想像と創造を繰り返しながら
美しい人間の進化に寄与することにある。

── オリエンタルランド 企業理念より

【まとめ】テンプレートを使って、自分だけのミッション・ステートメントを作ろう!【無料テンプレートあり】

ミッション・ステートメントは、個人や組織にとっての「憲法」となり、そのもっとも根幹を成す中心的な価値観を明確にするものです。ミッション・ステートメントとして内面を明らかにしておくことで、他人の言動や環境の変化に流されない普遍の軸を築く ことができ、主体的で効果的な生き方が可能になるのです。

そんなミッション・ステートメントを作る際は、「終わりを思い描く」ことで「自分の根幹を成す価値観、本当に大事にしているもの」を見極めることが何より重要です。さらに自分の「役割」を明確にすることで、役割ごとに自分はどうありたいのか、どんなことを達成したいのか考えることで、心から納得できるミッション・ステートメントが完成するのです。

なお、ミッション・ステートメントをつくるときは、紙で草案を考えたのち、Excelファイルで表にしてまとめるのがおすすめです。役割ごとにまとめることで見返しやすいミッション・ステートメントになりますし、修正も簡単です。印刷して手帳等に貼ることもできますね!

以下からExcelファイルの無料テンプレートをダウンロードできますので、ぜひご利用ください!(※ 現在まだ準備中です。ぜひ本ページをブックマークしてお待ちください!)

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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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