マインド・仕事術

予言の自己成就(自己達成予言)とは?── 思考が現実化する心理学現象をわかりやすく解説!

「予言の自己成就」とは、たとえ根拠のない思い込みであったとしても、それを信じて行動することで、実際にその予言が実現してしまうという心理学現象です。「自己達成予言」や「自己成就的予言」などということもあります。

予言の自己成就は、日常生活からビジネスシーンまで幅広い場面で見受けられます。予言の自己成就がプラスに働く例を挙げると、

  • 自信がなかったけど「できます!」と言って引き受けた仕事で成果を出せた
  • 部下に「あなたならできるよ」と声をかけると、みるみる成長していった

などがあります。逆にマイナスに働く場合もあり、たとえば

  • 受ける前から「試験に落ちるかもな」と思っていると、実際に不合格になってしまう
  • なんとなく苦手そうだなと思っていた人と一緒に働いたら、本当に苦手で対立してしまった

などの例が挙げられます。

このように「予言の自己成就」は良いほうにも悪いほうにも働くため注意が必要です。しかし、予言の自己成就をうまく利用すれば、夢や目標の達成を引き寄せられるかも知れません。なぜそのようなことが起こるのか。そしてどう利用すればよいのか。今回は「予言の自己成就」について詳しく解説いたします。

心理学現象「予言の自己成就(自己達成予言)」とは?

「予言の自己成就(自己達成予言)」は、アメリカの社会学者ロバート・K・マートン氏が提唱した心理学現象です。単なる思い込みや噂でも、意識的または無意識的にそれらが実現するように行動をとることでそれが現実になるという仮説です。

有名な例だと、こんな例があります。

ある日、「とある銀行が倒産する」という噂が流れました。根も葉もない噂であり、実際に銀行の経営は上手くいっていました。しかし、噂を聞いた人々が銀行に殺到。みんなが揃って自分の預金を下ろし始めます。すると、資金がなくなってしまったその銀行は、本当に倒産してしまったのです。

このように、予言されたこと自体は「ただの噂」であっても、そのまま予言通りになってしまうことがあるのです!

「予言の自己実現」は前述した例のように景気などと言ったマクロなことだけではなく、個人的なことにも当てはまります。たとえば、「自分は人見知りだ」と思っていると、人前に出たときに緊張してうまくコミュニケーションが取れず、ますます人見知りに拍車がかかってしまうなどです。

久保真介
久保真介
この現状は自然界では起こりえません。「明日地震が起きます」と予言しても、信憑性は果てしなく低いですよね。なぜなら、「予言の自己成就」は人間が他者から社会的な影響を受けて行動を決定しているからこそ起こる現象だからです!

「予言の自己成就」が起こる理由 ── 予言が現実化する流れ

根拠のない噂や思い込みが実際に実現してしまう「予言の自己実現」などという現象が起こるのは、一体なぜなのでしょうか。そこには、次のようなメカニズムがあります。

ポイントは、虚構を真実だと思い込んだ人々が実際に「行動」を起こしているということです。「嘘から出た実(まこと)」という言葉があるように、たとえ単なる思い込みであっても、それを信じて実行した行動によって嘘が真実になってしまうのです。

社会全体で「予言の自己成就」が見られた事例 ── トイレットペーパーがお店から消えた理由

2020年3月、お店からトイレットペーパーがなくなった社会現象を覚えていますか? 新型コロナウイルスが流行し始めた当時、SNSでは「マスクとトイレットペーパーは同じ原料で作られているから、トイレットペーパーが足りなくなる」という噂が話題となりました。その噂に不安を募らせた人々が買い溜めをした結果、本当に店頭からトイレットペッパーがなくなってしまったのです!

記憶に新しいこの社会現象も、まさに「予言の自己成就」が体現された一例です。

当時は正体不明の新型コロナウイルスの出現によって、社会全体が不安に包まれていました。人々の不安定な心境と、感染予防のためのマスクの需要が高まったのが合わさり、まったく根拠のない噂が、瞬く間に日本社会全体に影響を与えたのです。

「予言の自己成就」は、このように社会全体にパニックを及ぼすようなネガティブなパワーを持っているものですが、逆もまた然りです。ポジティブに活用することで、人生を好転させることもできるのです!

「予言の自己成就」をポジティブに使えば思考を現実化できる!?

「予言の自己成就」をポジティブに活用することで、夢や目標も現実にすることができるかもしれません。世界的ベストセラーになっている『思考は現実化する』では、「予言の自己成就」を上手く使うことが、ビジネスや人生で成功をもたらす方法だと説いています。

【ポイント】
著者のナポレオン・ヒルは、世界中の成功者にインタビューして共通する「思考」や「やり方」を体系的にまとめあげました。そうして導き出した成功哲学の中で、特に重要だったのがタイトルにもなっている「思考は現実化する」ということ、つまり「予言の自己成就」だったのです。

著者のナポレオン・ヒルの名言に以下のようなものがあります。

背が高く力持ちの人が勝負に勝つのではない。
背が小さく、すばしっこい人が勝つ訳でもない。
「私はできる」そう思った人が結局は勝つのだ。

成功者との対談を通して執筆した本がベストセラーとなり、彼自身も成功者の一人となったナポレオン・ヒルの名言からも分かるように、決してあきらめずに「自分はできる」という強い思いを持ち続けることが、成功するための基礎になるのです。

いわゆる「引き寄せの法則」の根拠も「予言の自己成就」

「引き寄せの法則」とは、自分が叶えたいことに集中することで、願いが実現したり、欲しいものが手に入ったりするというもので、自己啓発本やセミナーなどでも良く取り上げられています。叶えたい願いに集中し、すでに願いが叶った姿を想像して喜び味わうことで、良いものを引き寄せていくというものが、引き寄せの法則で語られることです。

引き寄せの法則には「スピリチュアル要素が強すぎる」「願うだけで現実になるわけがない」などといった反対意見も多く見られますが、実際には「予言の自己成就」という根拠に基づいています。

たとえ単なる予言(=思い込みや噂)であったとしても、実際に行動を起こすことで現実になるというのが「予言の自己成就」ですが、引き寄せの法則では「叶いたい願いに集中する」というのが、予言の部分にあたります

両者とも最初のステップは根拠のないものなのですが、それを信じて行動に移していくということで、最終的には現実にしてしまいます。要は、メカニズムは同じなのです。

久保真介
久保真介
「引き寄せの法則」に反対する人が口にする通り、願うだけで思考が現実になるわけはありません。しかし逆を言えば、願いもしなければ行動をすることはないとも言えます。成功を信じて、それにともなった行動をしている自分をイメージすることで、自然と自分の態度や行動が理想の姿に近づいていくのです。

主体的でポジティブな思考や態度が成功を引き寄せる!

世界一売れたビジネス書『7つの習慣』でも同様のことが語られています。フランクリン・R・コヴィー博士は、同著の中で次のように述べています。

“主体的な人は、影響の輪の領域に労力をかけている。自分が影響を及ぼせる物事に働きかける。主体的な人のエネルギーには、影響の輪を押し広げていくポジティブな作用があるのだ。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.097より

自分を奮い立たせるために、あえて自ら周囲に目標を公言することも「予言」にあたります。そして、自分がコントロールできるところにだけ集中してコミットしていくことで、予言(=目標)を実現していくのです。

久保真介
久保真介
7つの習慣の第1の習慣「主体的である」はまさに、主体的な思考・態度がいかにして成功の土台になるかを説いたものです。詳しくは以下の記事を読んでみてください!

『7つの習慣』徹底解説① ──「第1の習慣 主体的である(主体性を発揮する)」とは? フランクリン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』と言えば、全世界のビジネスパーソンに愛される「世界一売れたビジネス書」として知られ...

一緒に知っておきたい「予言の自己成就」と関連した心理学現象

「予言の自己成就」を始め、人間の心理学現象を理解することは自身の成長やビジネスの成功に大きな示唆を与えます。いくつかの興味深い心理学現象を紹介しましょう。

① ピグマリオン効果

「ピグマリオン効果」とは、他者から期待されることで勉強や仕事の成績・成果が向上する現象を表す心理学用語です。アメリカの教育学者ローゼンタールが、教師が生徒に期待をかけることによって生徒の成績が上昇したという実験結果を報告したことが始まりであるため、「ローゼンタール効果」「教師期待効果」とも呼ばれています。

期待を言葉で表し、個人の能力に応じた適度な期待をかけることで、ピグマリオン効果は上手く発揮され、モチベーションアップや生産性の向上につながります。しかし、使い方を間違えるとかえって逆効果になってしまうときもあるので注意が必要です。

久保真介
久保真介
ビジネスシーンでのピグマリオン効果の有効な使い方については、こちらの記事を参考にしてください!

② ゴーレム効果(負のピグマリオン効果)

ゴーレム効果とは、相手に低い期待をかけるとパフォーマンスが低下してしまう現象を表す心理学用語で、別名「負のピグマリオン効果」と呼ばれています。こちらも、ピグマリオン効果の発見者のローゼンタールが提唱しました。

ゴーレム効果はマイナスなイメージを抱かれやすいですが、過度な期待はかえって精神的なプレッシャーになってしまうこともあります。ときには「あえて無関心になり相手の力量に任せる」という姿勢を取ることで、伸び伸びと取り組め成果があがることもあるわけです。相手の性格や望んでいることなどを見極め、適切に対応していくことが大切です。

③ ホーソン効果

ホーソン効果とは、人が「注目される」ことによって成果を上げようと努力する現象です。一見するとピグマリオン効果と似ていますが、明確な違いがあります。

ピグマリオン効果は、教師や上司といった目上の人からの「期待」によって勝手に成果があがっていきます。一方で、ホーソン効果は第三者からの「注目」によって、注目された相手が成果を出そうと自ら意識し行動します

他者からのポジティブな注目は、やる気を引き起こし主体的に物事に取り組むようになり、良い結果を生み出すのです。

(関連記事)ホーソン効果とは?(※近日公開予定)

④ ハロー効果

ハロー効果とは、モノや人を評価するときに、目立つ特徴に引きずられて全体の印象にまで影響を与える現象です。

たとえば、採用面接で「有名大学卒業」と「アルバイト経験しかない」という2人がいたとします。たとえ両者の能力が同じだったとしても、有名大学のネームバリューによって前者の方が高い評価を得やすい傾向があります。

人は良くも悪くも、目につく印象が全体の印象にまで波及してしまう性質を持っています。だからこそ、好印象をあたえるための身だしなみや優れたスキルが重要になるのです。

(関連記事)ハロー効果とは?(※近日公開予定)

⑤ ダニング=クルーガー効果

ダニング=クルーガー効果とは、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価しやすいという「優越の錯覚」についての認知バイアスです。つまり、人間は「井の中の蛙」になりやすいということです。

ある分野において知識や能力が乏しい人は、その分野の全体像や奥深さが見えません。また、有能な人がどれだけ高度なことをやっているのかも理解できません。そのため、能力が低い人は「自分自身にどんなスキルが足りないのか」を理解する知識も持っていない(= メタ認知能力が低い)ため、自分はそれなりにスキルがあると思い込んでしまうのです。

【まとめ】「予言の自己成就」をポジティブに使えば「思考を現実化」できる!

根拠のない噂や思い込みでも、信じて行動すればそれが現実になるという「予言の自己成就」をポジティブに活用することで、ずっと叶えたいと願っていた夢や目標も実現することができます。

仕事で大きな成果を出したい、長年の夢を叶えたいと思っているなら、やるべきことはとてもシンプルです。「行動」することです。予言の自己実現が起こるのは、最初はただの思い込みであったとしても、実際に行動することで嘘を真実にしているからですそう、行動がすべてなのです

いうならば、予言の自己成就とは「行動するために必要なマインドセット」を変える方法だと言えます。たとえ自信がなくても、とりあえず「できる」と自分の将来を予言(=宣言)することも、ときには大事です。自分に程よくプレッシャーをかけつつ、その予言を実現するためにはどうすればよいか自ら考え、試行錯誤する。そのプロセスのなかで学びと失敗を繰り返しながら予言を現実化していき、人間としても成長していくことでしょう。

ビジネスシーンで頭一つ抜けた存在になるために、心理学の知識をうまく活用していきましょう!

久保真介
久保真介
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【参考資料】

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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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