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【要約/書評】デジタルマーケティングの定石 ── 成果につながるデジタル活用のやり方を学ぶならこの1冊!

さまざまなものやサービスがWeb上で完結する現代では、Webをいかに上手に活用していくかが重要です。実際、中小企業から大企業までがECサイトやWebサイトを活用しながら、ビジネスの成長を模索しています。

しかし残念ながら、多くの企業で正しいデジタル活用がされていません。コストをかけても、成果にはいまいち繋がっていないのです!

【ポイント】
デジタルマーケティングで結果を出すには、まずはデジタルに「できること」と「できないこと」を知ることが大切です。

また、先人たちが発見してきた「定石」を知ることで、限られたリソースを有効に活用できます

そこでおすすめしたいのが、垣内勇威氏の著書『デジタルマーケティングの定石』です。この本では、以下のことを学べます。

  • デジタルの「強み」と「限界」
  • マーケティングのためのデジタル活用方法
  • 無駄を省いたデジタルマーケティングの「定石」と実践方法

15年以上デジタルを活用してコンサルティングをしてきた垣内氏が見つけた、デジタルで成果を出すための施策 ——「デジタルの定石」を紹介していきます。

(こちらもおすすめ)【要約/書評】沈黙のWebマーケティング(※ 近日公開)

目次
  1. デジタルマーケティングの定石を理解しよう!ー本の概要とおすすめの人
  2. 定石とは?デジタルの強みと限界を理解して正しく活用しよう!
  3. デジタルマーケティングでは「顧客主導」が必要不可欠!ーまずは顧客を知ることから始めよう
  4. 定石の活用方法 ──「DXアクセラレータ」で定石を活用しよう!
  5. 【感想/考察】定石から逸れずに、自社ビジネスに合ったデジタルマーケティング手法を当てはめていくことが重要ポイント!
  6. 【まとめ】デジタルには限界があることを理解し、定石に則って既存業務を置き換えていく

デジタルマーケティングの定石を理解しよう!ー本の概要とおすすめの人

デジタルマーケティングの定石とは、成果を出すための施策をパターン化したものです。

垣内氏は2005年から15年に及ぶコンサルティング業務の中で、クライアントに提案する内容に大きな変化がないことに気づいたといいます。100社以上の企業に関わって気づいたのは、デジタルで成果の出る施策は業種や企業の規模に関係なくパターン化できるという事実だったのです。

ところが、現状のデジタルマーケティングの世界ではバズワードに翻弄されていたり、細かいデザインなどにこだわり過ぎて自己満足なサイト制作になっていたりなど、本質的でない施策が横行しています

デジタルの特性をきちんと理解できていないことが原因で、デジタルマーケティングで結果を出せずにいるんです!

  • 小まめにサイト情報を更新しているのに売上が伸びない
  • サイトの読者が増えない
  • 業務が増えるばかりで成果に繋がらない
  • デジタル活用をしたいけど何をしたらいいのかわからない

そんな悩みを持っている経営者やデジタル担当、営業の人にはぜひ読んで欲しい1冊です。

特に「デジタルマーケティングで成果を出せずに悩んでいる人」におすすめな一冊

この本を特におすすめしたいのは、デジタルマーケティングを頑張っているにもかかわらず、労力に見合った成果を出せていない人です。そんな人は恐らく、定石を無視したやり方をしてしまっている可能性が高いでしょう。

【ポイント】
何事においても基礎を無視していきなり応用編からやっても成果が出にくいものです。デジタルマーケティングの世界でも同じで、定石はデジタルマーケティングを活用するうえで必須事項です。

デジタルマーケティングをあれこれと試してみても思うような結果が出てない人は、まずはこの本を読んで「定石」の考えを身につけてみましょう!

定石とは?デジタルの強みと限界を理解して正しく活用しよう!

デジタルは万能ではありません。多くの仕事や業務がデジタルやAIに置き換えられている現代では、まるで全てをこなせる存在のように思われています。しかし、万能と思われがちなデジタルにも限界があり、人間にしかできない仕事があるのです。

【ポイント】
デジタル活用は「デジタルの強みと限界」を理解したうえで、強みを活かしていくことが大切です。

デジタルが得意とする分野がわかれば、そこで人間が時間を掛けてしまっている仕事をデジタルに置き換えることで、効率良く成果を出せます。

デジタルの性質を理解し、強みを活かしながら正しく活用していきましょう!

デジタルは万能ではない!デジタルの「4つの限界」

デジタルには4つの限界があります。しかし、デジタルの限界を理解できていないばかりに、デジタルには不向きや無理なことをさせてしまっている人や企業は少なくありません。

デジタルは一発勝負で結果を出すためのツールではなく、今ある業務をデジタルに置き換えるツールとして使うべきなのです。つまり高いコストが掛かるマス広告や、顧客へ紙媒体で送っているDMを置き換えられるのがデジタルというわけです。

デジタルに置き換えるべき業務を知るためにも、まずはデジタルの「4つの限界」を理解していきましょう。

【デジタルの限界①】デジタルユーザーは自分の興味あるものや求めるものしか見ない

基本的にWebサイトを利用するユーザーは、自分が探しているものや興味ある情報にしか目が止まりません

実は、Webサイトで検索機能を使う人の平均滞在時間はほとんどが1分未満です。さらに閲覧するのは2ページ程度といわれています。そして、1分もしくは2ページで、求めている情報や欲しい商品が見つからなければ離脱してしまうのです!

【ポイント】
デジタルで顧客の意識を変えて、購買意欲の高いユーザーだけを獲得するのは困難です。顧客の意思を変えたり、高い見込み客だけを獲得するのはデジタルの仕事ではありません。デジタルの仕事は、少しでも自社のサイトや商品に興味を示す顧客に会員登録などをしてもらい、人間(=営業担当)へバトンパスをすることなのです!

デジタルでは、ページから離脱されないようにユーザーの求めるものを的確に提供するのみに尽きます。

久保真介
久保真介
これがまず知っておかなければならない超重要なポイントです。Webマーケティングをかじった程度の人は「SEO記事で集客して、この記事を読んでもらって顧客教育して、LPに遷移させてCVを獲得する」などといった「理想的なカスタマージャーニー」を描いてしまいますが、それは妄想に過ぎないのです!

(関連記事)カスタマージャーニーとは? 多くのWebマーケターの「勘違い」と「本当の目的・活用方法」を解説!(※ 近日公開)

【デジタルの限界②】データの行動履歴から気持ちや理由を知ることができない

デジタルはユーザーの行動履歴を知れても、その行動に至った心理状況を知ることはできません

【ポイント】
デジタルを活用すれば、行動履歴データから検索流入経路やWebサイトページ内滞在時間などがわかります。しかしあくまで行動履歴がわかるだけであって、Webユーザーの感情や深層心理はわからないのです。

実はユーザーを本当に理解するためには、デジタル社会となった今でも「アンケート」と「インタビュー」だといいます。垣内氏が顧客を知るために推奨している方法は以下の通りです。

Webやアプリなどを介して顧客候補となる対象者にアンケートを実施
 ↓
さらにそこから自社のターゲット層に近い人を呼んで「行動観察」
 ↓
目の前で自社のWebサイトを通常通り使用してもらい、実際には何に興味を持っているのかを観察する
 ↓
その後、対象者にWebサイト閲覧時の「行動」についての「インタビュー」を実施。

この流れでアンケートやインタビューを行い、ようやくユーザーを正しく理解出来るのです。デジタルユーザーの行動履歴データはユーザーを知るものではなく、ユーザーを正しく知るための材料として活用するべきなのです。

【デジタルの限界③】デジタル広告にはマス広告のような爆発的効果はない

デジタル広告にはテレビや街頭広告のような爆発的効果はありません。基本的にデジタル広告は、効果が出るまでに期間を要するのです。

なお、デジタル広告と呼ばれるものは、下記の5つがあります。それぞれにデジタルの限界を抱えています。

  • <検索> 検索結果で上位に上がるのに数か月から半年は必要
  • <広告> クリック型広告もバナー広告も、広くリーチしようと思うとマス広告より高くつくうえに、表示されただけではユーザーの記憶に残らない
  • <SNS> バズれば爆発的な効果があるけれど、バズる投稿をし続けるのは大変
  • <メール> 広告効果を出すほどの顧客情報を集めるにはある程度の期間が必要
  • <アプリ> メールと同じく、アプリユーザーを一定数獲得するには期間が必要

以上のように、デジタルでの集客には限界があります。しかし、デジタル集客の特性を利用し、ターゲットを絞った集客をすれば、将来的には低コストで広告を発信し続けられるのです。

久保真介
久保真介
デジタルの強みをうまく活かすことが大切です。

【デジタルの限界④】ユーザーの行動データを大量に手に入れるだけでは効果を生み出せない

デジタルを活用すれば、大量の行動データが手に入ります。それも「ほぼ無料」です。しかし、データを大量に手に入れても正しく活用できないと何も効果を生み出せません

【ポイント】
効果を出すためには、データ分析の前にまず仮説を立てる必要があります。ユーザー行動の仮説を立てたうえでデータを分析し、そして仮説の検証を行います。

この仮説を立てずにいきなり大量の行動データの分析を始めてしまうと、複雑なデータを分析できずに終わってしまうのです。

デジタルで得られるユーザーの行動データから得られる情報は膨大です。「データを活用して何をしたいのか」データ活用の意味を決めておかなければ効果を発揮することはできません

久保真介
久保真介
これはデータ分析や環境分析の「あるある」です。調査や分析は「仮説」を立て、「目的」や「最終的な成果物」を決めてから行うことが大切です!

デジタルの強みはコスパの良さ!コストカットこそデジタル活用の主目的

デジタルの最大の強みは、テレビCMや人間(営業担当)に比べてコストパフォーマンスが高い点です。ただし、その一方でテレビCMのような爆発力(リーチ数)や、人的営業ほどの高い営業力は持っていません

【ポイント】
しかしながら、デジタルは人的営業より高いリーチ数と、テレビCMより高い営業力を持ち合わせています。また、テレビCMや人的営業ではコストを掛け続けないと宣伝も顧客フォローもできません。しかしデジタルなら顧客情報やWebページをストックしていけば、マーケティングにコストを掛け続ける必要がなくなるため、総合的なコスパが高いのです!

つまり、デジタルには、テレビCMや人的営業が持つそれぞれの強みを程よく持ちつつ、圧倒的なコスパで戦える強みがあるのです。そのため、いま人間が時間を費やしている業務をデジタルへ置き換えていくなど、コストカットを意識するのが重要ポイントになってきます。

久保真介
久保真介
デジタル活用の目的はコストカット。これをはっきりさせておくだけで、デジタルとの向き合い方が変わってくるはずです!

【デジタルの強み①】デジタルは無料で1対多数の接客ができる

デジタルはほぼ無料でユーザーにアプローチし続けられる強みを持っています。

LINEやメールアドレスなどのデジタルを活用すれば、24時間365日いつでも何度でも顧客への宣伝やフォローが可能です。一方で人間が顧客に対して手厚いフォローをしようとすると、どうしても1対1体制になってしまい、人件費が掛かります。

デジタルなら顧客が使用方法や困った際のサポートなどをWeb上に作成しておけば、いつでも同時に同水準のサポートの提供ができるようになるのです!

始めはコストを掛ける必要がありますが、将来的にほとんど費用を掛けなくても同時に多数の顧客対応をし続けてくれるようになるのがデジタルの強みの1つです。

【デジタルの強み②】デジタルはストック型マーケティング!低コストで半永久的に集客し続けられる

デジタルは集客できる形が整えば、半永久的に集客しつづけられる「ストック型」マーケティングの性質を持っています。

【ポイント】
ストック型とは、効果が出るまでは時間がかかるけれど、初期投資だけすればあとは投資を止めても効果を出し続けられる施策のことを指します。Web検索で上位に記事をあげたり、顧客のメールアドレス取得やLINE友達登録などがまさに「ストック型」です。

逆に、テレビCMは多額の広告費を掛ければ、お茶の間にいる大勢へ即認知させる瞬間的効果があります。それを「フロー型」のマーケティング効果と呼びますが、そのようなフロー型では広告を打ち続けなければ効果を失ってしまいます

ストック型マーケティングでは、テレビCMのような短期での効果は期待できません。しかし長期で戦うための施策をしっかり立てれば、最終的には低コストで集客しつづけることができるのです。

【デジタルの強み③】旬なデータを大量に手に入れられる

デジタルを活用すれば、リアルタイムなデータを大量に集められます

従来のアンケートでは、旬なデータを大量に集めるのは困難でした。そのうえ正確なデータを集めようと思えばリサーチの専門家に頼らざるを得ず、高額な費用が必要だったのです。

しかも、データ収集から分析まで時間を要するため、頻繁にできるものでもありません。それでようやく手に入れたデータもアンケート実施から月日が経っており、旬な情報ではなかったのです。

しかしデジタルを活用すれば、低コストで旬なデータを大量に集められます。アンケートを実施から分析まで時間を必要としないため、頻繁に行うことも可能です。

デジタルの強みは、大量にデータを取れるだけではなく、旬なデータを無料(または低価格)で手に入れられるところにあるのです。

経営者や責任者など会社の裁量権を持つ人がデジタルの定石を理解することが大切!

多くの企業がデジタルのことはデジタル部門任せで、他の部署やトップは理解できていません。しかし、デジタルの効果を最大限に発揮するには、裁量権を持つトップが「デジタルの定石」を理解することが不可欠です。

会社全体でデジタルで成果を出していくには、デジタルの専門家を社内で育てる必要があります。しかし日本の企業ではジョブローテーションが当然のようにあり、デジタルの専門家を育てる環境が整っていません。

デジタルの専門家を育てるためにも、これから解説する無駄な業務をや止めるためにも、人事や業務遂行などの裁量権がある人にデジタルマーケティングの定石を理解させることが非常に重要なのです。

久保真介
久保真介
トップがデジタルの「強み・限界・定石」を押さえておけば、組織のデジタル活用は見違えて効率化するはずです。ツールの使い方や細かいデータの見方までは理解しなくても問題ないですが、最低限のことだけは理解しておきましょう!

デジタルマーケティングでは「顧客主導」が必要不可欠!ーまずは顧客を知ることから始めよう

デジタルマーケティングは「顧客主導」で考えていく必要があります。デジタルが生活に浸透した現代では、顧客は商品を購入するまでにネット検索やSNSなどでリサーチします。デジタルがなかった頃は、企業が売りたい商品を顧客に購入してもらうマーケティングが可能でしたが、現代では顧客が商品を選ぶようになっているのです!

もちろん、これまでも「顧客重視」の考え方は広く浸透し、実際多くの企業で顧客を重視する考えや想いを企業理念にかかげられてきました。Webマーケティング手法でも「3C分析」のように顧客も巻き込んで、マーケティング環境を分析するフレームワークとして用いられています。

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しかし、垣内氏はマーケティングには「顧客重視」ではなく「顧客主導」の考えを持つべきだと提唱しています。

【ポイント】
3C分析では「Company(自社)」「Competitor(競合)」と「Customer(顧客)」が横並びになっていて、顧客第一ではありません。その状態では商品ありき、あるいは競合ありきの考えになってしまいがちで、本当の意味で顧客を知ることはできません。常に「顧客」を主語として考えることで顧客を知ることができるのです。

顧客主導の考えは、本来のマーケティングにおける本質でもあり、デジタルマーケティングを実施するうえで必要不可欠なことのです。

久保真介
久保真介
マーケティング施策を成功させるなら、顧客起点で考えることが絶対に欠かせません。想像ではなくリサーチで顧客のことを深掘りすることがマーケティング施策成功の第一歩なのです。

「顧客が買うまでの流れを知る」 –– 多くのマーケターが顧客の行動を理解できていない

顧客が商品を購入するまでの流れ(カスタマージャーニー)、つまり

  • どうやってその商品を知ったのか?
  • どんなタイミングで、なぜこの商品を買ってみようと思ったのか?
  • どのように使用し、2回目購入に繋がったのか?

などの顧客行動は企業側の想像と大きくかけ離れている場合がほとんどです。

たとえば、実店舗を持つ雑貨小売店でアンケートと行動観察調査を行ってみると、そのお店のファンはECショップを新商品や自分の欲しい商品のチェックのためにカタログ代わりとして使用していました。ECショップでは商品のチェックだけをして、実店舗で購入していたのです。

また、高額商材を取り扱うBtoBビジネスのWebサイトは、顧客がその企業へ問い合わせするかどうかの確認のためだけにほんの数十秒見られていただけでした。最終的な決定は営業担当を実際に呼んで話やプレゼンテーションを聞いてから行うため、詳細をWebサイト上で知る必要がないからです。

【ポイント】
顧客が商品を買うまでの流れは、「調査対象を決めて」「アンケートを実施し」「行動観察」を行えば見えてきます。顧客を知るために最低でも1年に1回は既存の顧客に会い、調査を実施するべきです。

久保真介
久保真介
これはつまり、「カスタマージャーニー」を正しく捉える必要があるということですね。想像ではなく顧客インタビューなどの「リサーチ」を行い、カスタマージャーニーを正確に把握することがデジタル・アナログ問わずマーケティングでは非常に重要なのです。

(関連記事)カスタマージャーニーとは? 多くのWebマーケターの「勘違い」と「本当の目的・活用方法」を解説!(※ 近日公開)

(こちらもおすすめ)N1分析とは? 西口一希さんのマーケティング手法を経営者目線で解説!

3つのフェーズ「日常生活」「初回購入」「継続購入」に分けて、デジタルを活用していく

調査で得たデータをもとに「顧客が購入するまでの流れ(カスタマージャーニー)」 を知り、マーケティング施策に活用するには、以下の通り3つのフェーズに分類して考えると良いと垣内氏は提唱しています。

フェーズ 目的 ポイント
日常生活
フェーズ
無関心な顧客に商品を知ってもらい、何かのきっかけでニーズが発生したときに名前を憶えてもらう 潜在顧客リスト獲得と継続接触
初回購入
フェーズ
偶然の購入でいかに顧客に満足してもらい、継続に繋げるかが重要。デジタルから人間へのバトンタッチが必要になる 顕在層のゴール直行
継続購入
フェーズ
初回購入でいかに満足感と必要性を感じさせるかがポイント。デジタルの活用でコストカットができる コンテンツ&ルーティーンづくり

順に解説していきます。

「日常生活フェーズ」の定石 ──「純粋想起の獲得」と「ニーズ検知」

日常生活フェーズの定石は、「純粋想起の獲得」と「ニーズ検知」です。

残念ながらデジタルの領域で無関心な顧客にニーズを感じさせるのはほぼ不可能といえます。

【ポイント】
興味が顕在化していない顧客からニーズを引き出すのは、デジタルではなくマス広告や画期的なアイディア商品の開発、もしくはトップクラスの営業担当の仕事です。

デジタル領域では、偶然にニーズが生じた際に「純粋想起の獲得」ができるかがまずひとつ目に達成すべき目的だと言えます。

「純粋想起」とは、ハンバーガーと聞くとマクドナルドを思い浮かべるように、特定のカテゴリを聞いたときにひとつの商品が頭に浮かぶことを指します。マス広告などをきっかけに偶然ニーズが生じた際に自社の商品を思い浮かべてもらえるように、デジタルを活用してユーザーに刷り込むのです。

そして、偶然に生じたニーズをきっかけに自社のリンクをクリックしたり、アプリをダウンロードしたりした人に対して商品のお知らせなどを行います。営業担当が顧客への定期訪問でニーズを感じ取るのと同じで、デジタルで「ニーズを検知」し、初回購入のきっかけを作っていくのです。

「初回購入フェーズ」の定石 ──「最速的確にニーズを満たし」、「ゴール直行」を目指す

初回購入フェーズの定石は、顧客のニーズを最速で満たすことです。

【ポイント】
顧客は自分が求めるものや興味あるものしか見ていません。こちらが売りたいものへ無理に誘導をせず、求めている情報へいかに早く導くかが重要です。出来れば1クリックか2クリックで目的物へたどり着けるように、Webサイト設計をしておきましょう。

さらにこの初回購入フェーズで重要なのが、ゴール設定をどこにしておくかという点です。たとえば資料請求なら障壁は低いですし、有料商品購入ならゴールへの障壁は高いといえます。

ここでのゴール設定はLTV(顧客生涯価値)を踏まえて考えます。ゴール設定をするのはデジタル部門だけで完結するのは難しく、成果を出すには他部署との連携が不可欠です。

久保真介
久保真介
現在のビジネスでは、どの分野でもLTVが非常に重要となっています。つまり、いかにしてお客さまを「ファン化」し、リピートしてもらうか(継続利用してもらうか)が重要なのです!

「継続購入フェーズ」の定石 ──「継続購入型」でLTVを最大化する

継続購入フェーズでは、これからのビジネスの主流「継続購入型」でLTVを最大化するのが重要ポイントです。

今までは売ってしまえば終わりといったような「売り切り型」が少なくありませんでした。しかし売り切り型の場合、商品に満足できなくても返品が出来ないなど、顧客の不満足や不利に繋がるものも多かったのです。

デジタルが浸透した現代では、パワーバランスが顧客側へと偏っています。そのため、アップデートしながら常に最善のものを継続的に提供できる「継続購入型」のニーズが益々増えてくると予想されます。

「継続購入型」の代表的なものがサブスクリプションサービスです。顧客側は気に入らなければ、いつでも解約できるという強みを持っています。一方で企業側は、顧客に継続的に満足してもらえるように改善や改良をし続けなくてはなりません。

「継続購入型」では今まで以上の企業努力を必要としますが、一度定期購入などで契約をしてもらえれば顧客が解約するまでは継続的に収益を得られるメリットがあります。デジタルならデータを活用すれば、顧客が解約しそうなタイミングでフォローを行うこともできるのです。

定石の活用方法 ──「DXアクセラレータ」で定石を活用しよう!

デジタルマーケティングの実践では、上記で説明したフェーズごとに、やるべきこととやらないことを決め、優先順位をつけて実行していく必要があります。そのために便利なツールとして、垣内氏は「DXアクセラレータ」というテンプレートを提案しています。

【DXアクセラレータとは?】
DXアクセラレータとは、横軸にカスタマージャーニーの3つのフェーズを、縦軸に「GOAL」「USER」「ACTION」とした3×3のボックス型シートのこと。垣内氏が開発したもので、自身のコンサルティング事業にて実際に用いているツールです。

DXアクセラレータの図例。なお、実際はExcelなどを使って作成すると良いだろう。

DXアクセラレータの使い方

GOALのボックスには、各フェーズの「目的・KPI・目標」を入力します。ビジネスモデルによってデジタルマーケティングの目的は多少変わるため、まずはGOALを明確化することが大切です。

次のUSERのボックスには、まず各フェーズにおける「ユーザーの現状」を記載し、それを踏まえて「理想の顧客接点フロー」を記載します。複数設定しても構いません。

最後のACTIONボックスには、「施策内容」を優先度に応じて3つに分類して記載します。最優先すべきなのは、時間や費用をかけずにKPIを大きく伸ばせる施策です(A1)。次に、KPIは大きく伸ばせるけども時間や費用がかかる施策をまとめます(A2)。ここまでが取り組むべきアクションリストです。

そして最後に、捨てるべき仕事として、KPIへの寄与が少ない施策をリストアップしておきましょう(A3)。やらないことを明確にしておくことで、余計な施策に時間やお金を投下してしまうのを防止できます。

このように、自分のビジネスに合わせてDXアクセラレータを埋めていき、これをデジタルマーケティングを進めていくのです。

久保真介
久保真介

なお、デジタルマーケティングの定石は業種や規模に関係なく共通していますが、目標とすべきGOALや実施すべきACTIONなどはビジネスモデルによって多少変化します。

垣内氏は、ビジネスモデルがBtoBなのかBtoCなのか、Webだけで完結するのかどうか、商品単価の大小などによって、デジタルマーケティングの活用方法は「18の型」に分けられると述べています。

本書の最終章では、この18の型に応じた施策例なども詳しく解説していますので、興味がある方はぜひ読んでみてください!

【感想/考察】定石から逸れずに、自社ビジネスに合ったデジタルマーケティング手法を当てはめていくことが重要ポイント!

本書『デジタルマーケティングの定石』は、マーケティングにおけるデジタルの役割を明確にして、本質的な施策とは何なのかを明らかにしてくれる良書です。マーケターだけではなく、ビジネスに「デジタルを活用したい」と思っている人全員におすすめしたい一冊ですね!

特に、「ゴール直行」の考え方と、顧客をカスタマージャーニーによって3つのフェーズに分割し、フェーズごとにGOALとACTIONを設定するという考え方はとても参考になりました。

本書をよく読み、DXアクセラレータを埋めるだけでもWebサイト運用の方向性が明らかになるはずですので、デジタルマーケティングを学び、実践するための基礎中の基礎が作れますね!

久保真介
久保真介
なお、この本では「行うべき施策・行うべきでない施策の根本的な考え方」が学べますが、細かいページづくりのことなどまでは詳しく触れられていません。次の一冊としては、『沈黙のWebマーケティング』あたりを読むのがおすすめですね!

(こちらもおすすめ)【要約/書評】沈黙のWebマーケティング(※ 近日公開)

【まとめ】デジタルには限界があることを理解し、定石に則って既存業務を置き換えていく

デジタルで成果を出すには、デジタルの限界を知り、強みを活かすことが大切です。光のスピードで成長を続けるデジタルの世界ですが、15年経っても基本的なことは変わっていません。「デジタルマーケティングの定石」を知らずに闇雲に目新しい施策にチャレンジし続けるのは、コストを無駄遣いしているに過ぎないのです。

「コスパの良さ」「ストックの効果」「リアルタイムデータの収集」といったデジタルの特性を活かし、既存業務を置き換えていくことがデジタルの施策を成功させる秘訣です。

「業種や企業の規模に関係なく、定石は共通している」と垣内氏はいいます。デジタルマーケティングの定石を正しく理解し活用すれば、どんな業種も規模の違う企業でも今より良い成果を出せるでしょう。

久保真介
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