マーケティング

PEST分析とは? ── マクロ環境から機会と脅威を探る分析フレームワーク

加速を続ける現代のビジネスシーン。日々新しい技術やサービスが生まれ、トレンドの移り変わりも早くなっています。そんな平成・令和の時代において、ビジネスの成功には「世の中の流れ」や「ニーズの変化」を読む力が不可欠となっています。

【ポイント】
法改正、人口統計、経済状況、グローバル環境、社会問題、流行、イノベーション……このような、自社を取り巻く「マクロ環境」を分析することで、自社にとっての「機会」や「脅威」を把握できます。このマクロ環境の理解こそ、事業戦略やマーケティング戦略を立案する際のファーストステップとなるのです!

そんなマクロ環境の分析手法として最も有名なのが、コトラー教授が提案した「PEST分析」です! PESTとは政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の頭文字を取ったもので、これら4つの視点からマクロ環境を捉えていきます。

久保真介
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そんなPEST分析について、目的設定の仕方や具体的な活用方法などを解説していきます。

PEST分析とは? ── 政治・経済・社会・技術からマクロ環境を読み解くフレームワーク

PEST分析は「マーケティングの神様」と呼ばれるフィリップ・コトラー教授が提唱した「環境分析」に用いるフレームワークの一種です。自社を取り巻くマクロ環境を「政治・経済・社会・技術」の4つの視点から分析し、事業の機会や自社にとっての脅威を見つけます。もともとは未来学者のジョン・ネイスビッツが著書『Megatrends 2000』で述べた記述がもとになっており、それをコトラー教授がビジネス・フレームワークとして定義しました。

久保真介
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ネイスビッツ氏の言葉を引用して紹介しようと思ったのですが、原著が英語で未翻訳の本なため、該当箇所を翻訳して記載している『[新版] グロービスMBA経営戦略』から引用しましょう。

「メガトレンドとは、社会、経済、政治、科学技術の大きな変化であり、それはゆっくりと形成されるが、ひとたび起これば、ある程度の期間──7年から10年、あるいはもっと長く──影響を及ぼす。」
── グロービス経営大学院 編著『[新版] グロービスMBA経営戦略』(ダイヤモンド社, 2017年)

PEST分析が取り扱う「マクロ環境」とは、簡単に言ってしまえば〝世の中〟を表します。ということはつまり、PEST分析とは「世の中全体の流れを政治・経済・社会・技術という4つの視点から捉えて、未来予測に活かす」ためのフレームワークと言えます。

具体的には、次のようなことを調査・分析していきます。

  • 政治 : 法改正(規制強化・規制緩和)、税率、政権交代、デモ など
  • 経済 : 景気動向、物価、消費動向、経済成長率、為替、貿易、株価 など
  • 社会 : 人口動態、少子高齢化、世論、流行、ライフスタイル、価値観、SDGs、ジェンダー、教育、宗教 など
  • 技術 : Web、IoT、AI、ブロックチェーン、ドローン技術、最新医療、特許 など

このような「社会の大きな変化」を捉え、自社のビジネスに活かしていくのです。

拡張概念として「PESTE分析」や「PESTEL分析」などもある

PEST分析の拡張概念として「PESTE分析」や「PESTEL分析」というフレームワークもあります。

新たに加えられた「E」は「Environment factor (環境要因)」のことで、昨今のビジネスにおいて重要な問題となっている「環境問題への配慮」などを反映しています。もともとは「社会(Social)」の一要素となっていましたが、重要性の高まりから外枠を設けて分析漏れを防いでいます。

「L」についても同様で、元々は「政治(politics)」の一要素だった「Legal factor(法的要因)」を独立させています。

久保真介
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その他、PESTELではなくPESTLEとしたり、人口統計の「D(Demographics)」を加えて「DESTEP分析」としたりなどのパターンもあります。

マーケティング戦略立案はマクロ環境分析からはじまる ── PEST分析の重要性

PEST分析は主に、中長期的な戦略立案に使用されます。中長期的な視点で考える場合は外部環境の不確定要素が多くなるため、予測できる機会や脅威を見落とさないようにする必要があるのです。

【ポイント】
環境分析は「①マクロ環境分析 → ②業界分析 → ③市場・顧客・競合・自社分析」と、マクロからミクロという順番で行うのが一般的です。つまり、PEST分析は戦略立案で一番最初に行うべきものなのです!

PEST分析は事業の「機会」と「脅威」をあぶり出す ── PEST分析の目的

PEST分析が分析対象とするマクロ環境は、基本的に自社が影響を与えることはできないことから「Givenな環境(与えられた環境)」と呼ばれます。

久保真介
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ビジネスをゲームに例えるなら、マクロ環境とは「ルール」や「ステージ」に該当しますね!

ビジネスのルールを規定する「与えられた環境」を理解しないことには、事業の舵を正しく取ることはできません。PEST分析でマクロ環境を理解し、世の中の動向を予測することで、事業への投資価値を判断ができるのです。

PEST分析の目的は「機会」と「脅威」を把握し投資価値を判断すること!

PEST分析で世の中の動きを分析すれば、自社のビジネスにとっての「機会」と「脅威」を判断できます。それをもとにして事業が成功しそうかどうか(=投資する価値があるかどうか)判断できるのです!

【ポイント】
PEST分析で大事なのは、ただ政治・経済・社会・技術の状況をリサーチするだけでなくて、そこから未来を予測することです。

4つの視点から市場規模やニーズ、競争優位性、代替品の出現などを予測して、事業の収益性の見込みがあるのか確認するのです。

目的なきPEST分析に意味はない

先ほどPEST分析の目的を解説しましたが、このような目的意識なしにPEST分析を行っても意味はありません

【ポイント】
PEST分析の分析対象である「政治・経済・社会・技術」の4要素はあまりにも広く、すべてを網羅的に理解することはできません。そんなマクロ環境を目的なしにリサーチしても、ただPESTの表を埋めるだけ、ただ事実を羅列するだけになってしまい、そこからは何も生まれないのです。

したがって、あらかじめ「このようなビジネスをしたら儲かるのではないか?」などと仮説を立て、そのうえで「機会・脅威・収益性を確認するため」という目的意識を持ってPEST分析を行うことが大切なのです。

分析結果を踏まえて「5F分析」「3C分析」「SWOT分析」などに繋いでいく

PEST分析は中長期的な戦略の立案には欠かせない視点ですが、この結果だけで戦略を立てることはできません。

【ポイント】
マクロ環境の分析結果を踏まえ、業界・市場・顧客などといったよりミクロな環境分析へと繋いでいくのです。

業界分析では「5F分析(ファイブフォース分析)」や「アドバンテージ・マトリックス」が役立ちます。これらの手法を用いて業界全体の規模や成長性、収益性などを確認します。

マクロ分析、業界分析の次は戦略立案にて最も重要な「3C分析を行います。市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company) という〝3つのC〟を総合的に理解して、事業の成否を分けるKSF(重要成功要因)を見つけ出します

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久保真介
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さらに「SWOT分析」でこれらの分析結果を整理するのも良いですね。SWOT分析は自社を取り巻く環境を「強み・弱み」という内部環境と「機会・脅威」という外部環境に分けて総合的に整理・分析するフレームワークです。

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PEST分析も含めたこれらの環境分析の結果を踏まえて、その後の戦略立案・施策決定を行なっていくのです。

久保真介
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具体的に言えば、次に「STP分析」で自社のターゲットと取るべきポジションを定め、それを踏まえて「商品・価格・出店場所/流通チャネル・広告宣伝(4P)」などの具体的なマーケティング施策を定めていきます。

PEST分析は「仮説」を持って「変化」を捉える ── PEST分析のコツと注意点

前述の通り、目的なしにPEST分析を行わっても意味がありません。PEST分析は「事業の機会・脅威・収益性の確認」のためにマクロ環境を理解するのです。

そんなPEST分析のコツやポイントを3つご紹介しましょう。

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【ポイント①】「仮説」を持って分析する

まず1番のポイントは、前述した通り「仮説」を持つことです。

  • ◯年後の法改正に合わせてこんなビジネスを始めたら儲かるのではないか?
  • 今後世の中の流れはこうなっていきそうだな。いまやっているこの事業でこんなサービスを始めたら利益が増えるんじゃないか?

このような仮説をあらかじめ持っておくことで、PEST分析に「その仮説の妥当性を確認するため」という目的が生まれます。すると広大なマクロ環境の中でどこを重点的に分析するべきなのかが見えてくるため、意味のあるPEST分析になるのです。

久保真介
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つまり、政治・経済・社会・技術について闇雲にリストアップするのではなく、自社のビジネスに関係の深い要素だけを考えれば良いのです。

【ポイント②】「変化」を「機会」と「脅威」に分けて理解する

PEST分析では、世の中を数年単位で眺め、この数年間で変わったこと、変わりつつあること、これから変わりそうなことと言った「変化」を捉える視点が大切です。

【ポイント】
そしてそれらの「変化」が自社のビジネスにとって「機会」になるのか「脅威」になるのか判断することが大切です。

そしてもうひとつ重要なのが、それらの変化が「短期的な変化」なのか「中長期的な変化」なのか見極めることです。

機会に思えても短期的・一時的なブームだとしたら、中長期的な利益は望めません。それを踏まえてでもすぐに手を打って目先の利益を狙うのもひとつの考え方ですが、中長期的なトレンドを見極めて時流に乗ったビジネスを行なった方が会社は安定するでしょう。

久保真介
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そのためにも「5F分析」や「3C分析」などとともに、定期的・継続的に行うことが大切です。

【ポイント③】4つの項目を独立した「点」ではなく「面」として捉える

PESTの4要素である「政治・経済・社会・技術」はそれぞれ独立したものではなく、互いに影響を与え合っていることにも注意が必要です。たとえばスマートフォンの登場に見られるように、革新的な新技術が経済や社会に大きな影響を与えた例は挙げればキリがありません。

それぞれの関連性を意識して未来を予測し、頭の中に地図を描くことが大切です。

【まとめ】PEST分析はマーケティングのファーストステップ!

PEST分析は中長期的な戦略立案にて使用される環境分析のフレームワークです。「政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Social)、技術(Technology)」という4要素からマクロ環境の変化を捉え、ビジネスのルールを規定する「Givenな環境(与えられた環境)」を理解し、ビジネスの「機会・脅威・収益性」などを分析します。

そんなPEST分析はマーケティングの戦略立案において最初に行うべきステップとなります。PEST分析の結果を踏まえて「5F分析」や「3C分析」などよりミクロな環境の分析を行い、その後戦略や施策を決定していくのです。

久保真介
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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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