マーケティング

【基本編】マーケティングのSTPとは? わかりやすく簡単に解説します!

ビジネスで持続的な成功を収めるには、

  • 「安くて美味しい」
  • 「このメーカーなら外れない」
  • 「この地域でヘアカラーするならこの美容院で決まり!」

などといったように、「何かしらの特徴」を市場の中で示して、お客さまに「特別な存在」として認知してもらうことが大切です。

【ポイント】
「マーケティング」とは、このように自社の商品をお客さまにとっての「特別な商品」と感じてもらえるようにするために行う、商品企画やプロモーション、価格設定、ブランディングなどといった一連のプロセスのことです。そして、マーケティングの戦略を立てるための基本フレームワークを「STP」といいます。

STPはマーケティングの「戦略立案」における中心概念であって、ビジネスで成功するための原理・原則と言えるものです。特に、個人事業主や中小企業、ベンチャー企業などといった小規模ビジネスで成功するには、適切なSTPの設定が必要不可欠だと言えるでしょう。今回はそんなビジネスの基本中の基本「STP」について、わかりやすく簡単に解説いたします。

STPとは? ── 戦略立案の基本と進め方を表すフレームワーク

STPは戦略立案の基本的な進め方を示したもので、

  • S : セグメンテーション(Segmentation, 市場細分化)
  • T : ターゲティング(Targeting, 標的市場の選択)
  • P : ポジショニング(Positioning, ブランド・ポジションの規定)

の頭文字を表します。つまり、まずは市場をさまざまな顧客ニーズ等で分類して、その中でターゲットとなる顧客層を定め、選択した標的市場の中でどんなブランド・ポジションを目指すのかを決めること、これが「マーケティングのSTP」です。

マーケティングのSTPを定めることで、戦略の骨格ができあがるのです。

① セグメンテーション ── 市場を地理的要因や顧客ニーズ等で分割する

マーケティングの戦略立案ステップでは、まず市場を顧客の年齢やニーズ、地理的要因などでいくつかのグループに切り分けていきます。この作業を「セグメンテーション」あるいは「市場細分化」といい、このとき切り分けられたそれぞれのグループのことを「セグメント」と呼びます。

たとえば「美容室の経営」というビジネスを考えてみましょう。この場合、市場は次のような切り口で切り分けられるでしょう。

  • 顧客の性別(メンズ / レディース)
  • 顧客の年齢層(学生・若者 / 社会人層 / 高齢者層)
  • 地域
  • 価格帯
  • 得意な施術 / スタイル
  • 顧客の趣味・嗜好やライフスタイル
  • お店の雰囲気

このように、市場はさまざまな切り口で分割してみることで、次のターゲティングに活かしていきます。

② ターゲティング ── 自社が有利に戦える標的市場に狙いを絞る

市場を分割できたら、次にやるべきことは「ターゲティング」つまり「標的市場の選択」です。切り分けられたそれぞれのセグメントを評価して、自社にとって魅力的な市場を選び取ります。

ターゲティングにおいては、市場の規模や成長性、競合状況、自社の強み・弱みなどが判断基準になります。十分量で長期的なニーズを見込めて、自社が有利に戦える市場に狙いを定めることが大切です。

(もっと詳しく)ターゲティングとは? ── 顧客ニーズの違いを見極め、利益を最大化できるマーケティング戦略を立案しよう!(※近日公開予定)

③ ポジショニング ── 市場内でブランドをどう位置付けるのか決定する

標的市場が決まったら、次に考えるべきは「ポジショニング戦略」です。これはつまり、ターゲット顧客にどんな価値を提供して、どのように認識してもらい、市場の中でどんなブランド・ポジションを築いていくのか、ということです。

たとえばハンバーガー業界を考えてみると、

  • マクドナルド : 業界No.1。安くて美味しい。話題性のある新メニュー
  • モスバーガー : マックよりちょっと高いけど美味しい。健康志向
  • シェイクシャック : おしゃれで高品質。イマドキ感のある高級バーガー

などというように、有名チェーン店でも棲み分けがされており、ターゲットとしている顧客層であったり、イメージしている利用シーンが異なることがわかるでしょう。同様に、ゲーム業界でも任天堂とプレイステーションでは明確に違ったポジションを取っていることがわかります。

このように、顧客の頭の中に「うちの商品はこうですよ!」というイメージを植え付けることがポジショニングであり、わかりやすく明確なポジションを確立しているブランドは一定の顧客を掴むことができるのです。

(もっと詳しく)【まとめ】ポジショニングとは? ── 強いポジショニング戦略で顧客の「マインドシェア」を獲得しよう!(※近日公開予定)

そもそも、なんでSTPを定めるの? ── STPの目的・役割と重要性

市場を分割してターゲットを定め、狙った顧客層の脳内に特定のポジションを築き上げることがSTPですが、そもそもどうしてSTPが大切なのでしょうか? それは、現代のビジネス環境にはあらゆる商品が溢れ、基本的な顧客ニーズは一通り満たされ、より尖ったニーズを満たそうと各社が鎬を削っているからです。

【ポイント】
そんな現代において、ターゲットを定めない「マス(=全体)」を狙ったビジネスで成功するのは極めて難しいです。

他社は他の顧客層を捨ててでもターゲットを明確化することで、狙った顧客層の好みに最適化するような商品を作ってきます。広告もターゲットの目に留まりやすい媒体を選び、気を引きやすいコンテンツに仕上げています。

ライバル各社がそのような戦略を取っている中、自社だけ「全国民向け」の商品や広告を作ったところで、「誰にとっても悪くはないけど、誰にとってもジャストフィットはしない商品」になってしまい、印象に残らない(=独自のポジションを築けない)のです!

ターゲット層を明確にして、そこに最適化したポジショニング戦略を取ることとは、顧客により高い価値を提供することです。ターゲットを絞るからこそ、提供する価値を絞るからこそ、刺さる人には強く刺さる尖った商品、印象的な広告が作れるのです。

言い換えれば、自社の商品を競合他社と「差別化」すれば競合商品との直接対決を避けることができ、結果として収益性を高められると言うわけです。

STPを定めること = 戦略の基盤(WHO・WHAT・HOW)を定めること

STPを定めることとは、言い換えれば

  • 誰に(WHO)
  • どんな価値を(WHAT)
  • どのような手段で(HOW)

で提供するのか決めることに他なりません。「WWH」を決めることはマーケティングの基盤であり、ビジネスの基本中の基本と言えます。

マーケティングというと、データ分析やプロモーションのテクニックなどを思い浮かべる方もいるかも知れませんが、実際は「どんなWWHやSTPをを設定すれば売れる商品が作れるのか?」と考えるところからマーケティングは始まっており、むしろこの段階こそが結果を大きく左右するのです。

STPが明確になれば、具体的な施策(4P)が見えてくる

STPが決まれば企画のコンセプトが明確になりますので、それをもとにしてより具体的な施策を考えられるようになります。具体的な施策を考えるステップでは、「4P」というフレームワークをもとに考えるのが一般的です。

この「マーケティングの4P」において重要なのは「一貫性」です。あえて極端な言い方をすれば、「マーケティングとは一貫性のあるSTPと4Pを考えることである」とも言えるでしょう。

それぞれの戦略・施策をバラバラに考えるのではなく、定めたSTPを基準にして一貫した意味を持たせるからこそ、勝てるマーケティングが実現するのです。

久保真介
久保真介
マーケティング界で神様と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は、さまざまな学者たちが提唱していた理論をうまく総括して「STP-4P」というマーケティングの基本プロセスをまとめあげました。このSTP-4Pこそがマーケティングを考えるうえでの骨格なのです。

(関連記事)マーケティングってどうやるの? 実際のプロセス・流れを理解しよう(※近日公開)

(こちらもおすすめ )コトラーが語るマーケティングの定義とは? ── ファンダメンタルなマーケティング理論の礎を徹底解説!(※近日公開)

STP分析で収益性を分析・改善する方法 ── STPを見直して復活したUSJの事例

世の中で成功しているビジネスを紐解いていくと、そこには必ず「成功の理由」が隠れています。そして、そこには適切に設定された「STP-4P」が見つかるはずです。

一例として、P&G出身の敏腕マーケター、盛岡毅さんが仕掛けたマーケティング戦略によって逆転大成功した「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」の戦略を見てみましょう。

USJは、もともと「映画ファンのためのテーマパーク」として2001年にオープンしました。当時は大型テーマパークといえば東京ディズニーランドくらいしかない時代で、関西圏初の大型テーマパークとして話題になりました。

USJは好調な滑り出しを見せ、開業初年度は年間約1000万人以上の来場を達成しましたが、その好調は長くは続きませんでした。食品賞味期限の偽造問題や水道トラブルなどが続いてしまったうえ、インターネット上ではチケットが不正に高額転売されているのにUSJからの対処がない状況。このようなマイナスイメージが続き、顧客からの不信感が募ってしまったのです。このような要因が重なった結果USJのブランドイメージは地に堕ち、2004年には経営破綻寸前にまで陥いりました。

そんな状況のUSJを救ったのがマーケティング責任者として2010年に入社した盛岡毅さんです。盛岡さんはUSJの戦略を根本的に見直し、遂には2015年10月には東京ディズニーランドを上回る月間来場者数1,750万人を達成したのです!

そんなUSJの復活劇を「STPの見直し」という観点から見てみましょう。

収益性の低い「映画の専門店」というポジショニングが業績悪化の一因と推測

盛岡さんはまず、「映画ファンのためのテーマパーク」というコンセプト自体に問題があると考えました。固定費だけでも莫大な費用がかかる大型テーマパークを支えるには、ターゲット層が狭すぎたのです。

そもそもですが、あなたは1年間で何回映画館に訪れるでしょうか? 「年に1〜2回程度」という方が多いはずです。そうなのです、コアな映画ファンはそれほど多くないのです。

「映画ファンだけのためのテーマパーク」という縛りが、そもそも首都圏と比較して3分の1程度しかない関西圏の集客力をさらに狭めている。日本人がエンターテインメントを楽しむ際に、映画を見る確率は1割。アニメ、ゲーム、コンサートなどといった、残り9割のさまざまなエンターテインメントの要素を取り入れていかなければ、巨大なテーマパークは維持できないと森岡氏は主張しました。

そこで盛岡さんは、USJのコンセプトを映画も含めた「世界最高のエンターテイメント」を集めたセレクトショップという位置付けに変更します。アトラクションや企画もハリウッド映画だけにこだわることをやめ、人気の日本アニメなどとも積極的にコラボするようにしたのです。

このターゲティングとポジショニングの変更により、打てる施策の幅が広がります。そこから盛岡さんのさまざまなマーケティング施策が始まっていきます。

さらにターゲット層を拡大するための施策を次々と実行!

そこから盛岡さんはさまざまなマーケティング施策を打ち出します。たとえば、ハロウィーンイベントの強化がその一例です。これまで年間パス購入者限定で行っていた「ゾンビに遭遇するイベント」を拡大。「ハロウィーン・ホラーナイト」としてリニューアルし、テーマパーク全体を巨大お化け屋敷に仕立てます。

さらに盛岡さんがうまいのは、ターゲット設定とプロモーション戦略です。この「ハロウィーン・ホラーナイト」を「日頃のストレスをなかなか発散できないでいる日本の若い社会人女性たち」のためのイベントと位置付けます。夜の闇に紛れ、しかも仮装をして普段の自分から解き放たれた状態を作り出すことで、ストレス社会に生きる若い女性たちの「素を曝け出して大声で叫びたい」という顧客の深層心理を満たせると考えたのです。

この盛岡さんの狙いは的中。ハリーポッター誘致に先駆けた成功事例として、USJ復活の大きな原動力となったのです。

久保真介
久保真介
この事例のように、マーケティングでは消費者心理を読み解き、十分に売上が見込めるターゲットを見極めることが成功の鍵となります。適切なSTPを定められるかどうかが、売上を直接左右するのです!!

(関連記事)【要約/書評】『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』── 盛岡毅さんのマーケティング論を基礎から学ぼう!(※近日公開予定)

【まとめ】STPのフレームワークを使って、ビジネス戦略を見直そう!

「マーケティングのSTP」とは、マーケティング戦略を考えるうえで基本となる

  • S : セグメンテーション(Segmentation, 市場細分化)
  • T : ターゲティング(Targeting, 標的市場の選択)
  • P : ポジショニング(Positioning, ブランド・ポジションの規定)

という3つのステップの頭文字をとったものです。市場にどのような顧客ニーズがあるのか読み取り、さまざまな角度から市場を切り分け、その中から十分な売上を見込めるターゲットを選択します。そして、ターゲット層に刺さるコンセプトを打ち出し、魅力的な価値提案をすることで、顧客の頭の中に特別なブランド・ポジションを築き上げるのです。

適切に設定されたSTPをもとに、一貫したマーケティングの戦略・施策を立てることができれば、ビジネスは大きく成功に近づくでしょう。逆に、STP自体に問題があれば、たとえ商品自体は良いものであったとしてもなかなか売上につながりません。「誰に、どんな価値を、どのように届けるのか(WHO・WHAT・HOW)」を考え抜くことで、持続的な利益を生み出す強いビジネスが生まれるのです。

マーケティングの中核となる「STP」のフレームワーク。ぜひ自身のビジネスに活かしてみてください!

【参考資料】

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SIN
サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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