SWOT分析(スウォット分析)は、中小企業やスタートアップ、フリーランスなどの小規模事業主の事業戦略を考えるのにおすすめなフレームワークです。「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字からSWOTと呼ばれています。
SWOT分析ではまず、自社の内部環境である「強み・弱み」と自社を取り巻く外部環境の「機会・脅威」を表に整理・分析していきます。
表のテンプレートを埋めたら、次は「強み・弱み」と「機会・脅威」を掛け合わせてクロス分析(クロスSWOT分析)を実施して、4つの軸で戦略を考えていきます。
【ポイント】
- 強み × 機会(SO分析): 積極戦略
- 弱み × 脅威(WT分析): 致命傷回避・撤退縮小戦略
- 弱み × 機会(WO分析): 改善戦略
- 強み × 脅威(ST分析): 差別化戦略
このように、クロス分析を通して、自社の強みを活かしつつ弱みの影響を最小化するような「事業戦略」を導き出し、そこからさらに具体的な戦術・アクションプラン、数値目標などを定めていくのです。
そんなSWOT分析には会社の規模が大きくなると使いにくいなどのデメリットもありますが、誰でも直感的に理解しやすくて取り組みやすく、具体性と根拠のある戦略等をスピーディーに導出できるという大きなメリットがあります。
【ポイント】ただし、SWOT分析は「誰でも簡単に理解できて取り組みやすい」反面、実は「ちゃんと使いこなすにはコツがいる」という注意点もあります。なんとなく強みや弱み、機会、脅威を考えるだけでは始めから分かり切っていたことを整理しただけで終わってしまい、戦略立案まで結びつかないことが多いのです。
そこで今回は、会社の業績アップに結びつく「具体的で超実践的なSWOT分析のコツとやり方」を詳しく解説していきます!
SWOT分析は「時代遅れ」とか「使いにくい」とか言われてしまうこともあるのですが、正しいやり方さえ身につけていればかなり使えるツールです!
この記事では知識ゼロの方が読んでも明日からすぐに実践できるように、「超分かりやすく」「超具体的に」解説していきますので、ぜひ最後までお読みください^^!
なお、SWOT分析を正しく行うためには、そもそもの「SWOT分析を行う目的」が明確になっていることも大切です。この記事を読む前に以下の記事をお読みいただくと、さらにこの記事の理解が深まるはずかと思います!
最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
成果の出るSWOT分析のコツは? ── 事例から学ぶ成果が出るSWOT分析のポイント
SWOT分析は1960年代ごろから使われている歴史の長いフレームワークであり、理論のシンプルさと分かりやすさから、日本ではとても人気があります。しかしながら、いざSWOT分析をやってみると、「始めからわかっていたことを整理してまとめ直しただけ」になってしまうなど、意外とうまく使いこなせないものです。
そこでまずは、「よくあるSWOT分析の失敗例」を見て失敗の理由を解説したのち、成果が出るSWOT分析のコツと成功事例を解説していきます。
具体性のないSWOT分析では何も生み出せない ── 失敗するSWOT分析の事例
なんとなくSWOT分析のことを学んで、思いつくままに強みや弱み、機会、脅威を書き出してみても、あまりいいアイディアは出てこないものです。
たとえばの例として、「もっと売上を伸ばしたい!」と思っている地方の個人美容室さんがSWOT分析をしてみたとしましょう。多くの場合、こんなSWOT分析ができあがります。
正直なところ、このSWOT分析からでは効果的なクロス分析や戦略立案は難しいです。このSWOT分析には、次のような問題があるのです。
- ある事柄を「強み」に入れるべきなのか「機会」に入れるべきなのかなどが不明瞭で、感覚で分けている
- 主観的で、あまり「強み」になっていないことなども混ざっている
- 戦略や施策に結びつかない事象が多く混ざっている
- 施策に結びつく核心的で強い「強み」や「機会」が発見できていない
それでは、どうすれば成果に結びつくSWOT分析ができるのでしょうか?
1番のコツは「具体性にこだわる」こと ── SWOT分析で成果を出すための7つのポイント
意味のあるSWOT分析をするために大事なポイントは、「前提の理解」と「具体性」です。もう少し詳しくいうと、次の7つです!
【SWOT分析のポイント】
- 「単一事業」に対して行う(△経営戦略 ◎事業戦略)
- 「強み」「弱み」「機会」「脅威」の定義を明確にしておく
- 数値や固有名詞など「具体性」にこだわる
- 「仮説」や「深掘り質問」で具体性を高める
- ひとつの事実を多面的に解釈する
- 「脅威」や「弱み」の分析に時間をかけすぎない
- ロジカルにこだわり過ぎない
詳しくみていきましょう。
【ポイント①】「単一事業」に対して行う(△経営戦略 ◎事業戦略)
まず、SWOT分析は「単一事業」に対して行うのがおすすめです。経営戦略には「全社戦略」と「事業戦略」の2種類がありますが、SWOT分析は「事業戦略」向けなのです!
全社戦略とは、会社全体の業績が良くなるように、会社全体の中でリソース(ヒト・モノ・カネなど)をどのように配分するのか決めることです。つまりは、各部署や各事業にどのくらい予算や人員などを配置するのか決めることです。
それに対して事業戦略とは、単一事業に関して、その事業が成功して利益を生み出すためにどんな施策をするのかの基本方針を決めたり、事業内でのリソース配分をしたりすることです。
複数事業を抱える会社でも、それぞれの事業規模が小さく、また抱える事業の数も2つ、3つくらいと少なければ、経営戦略全体にもうまく使える場合もありますが、大企業のように複雑な会社になればなるほど、SWOT分析だけで戦略策定するのは難しくなってきます。
基本としては、「SWOT分析は単一事業の事業戦略立案に対して行う」と覚えておくと良いでしょう。
または、あえて経営戦略の立案にSWOT分析を使い続け、「SWOT分析がうまくいかなくなってきたら、もっと高度な分析が必要なステップ」と判断するのも1つの方法ですね。
より高度な分析方法としては、「ファイブフォース分析」や「STP分析」などがおすすめです。
【ポイント②】「強み」「弱み」「機会」「脅威」の定義を明確にしておく
2つ目のポイントに、「強み」とはなんなのか、「機会」とはなんなのかといった、定義をしっかり押さえることが挙げられます。多くの人はこれが曖昧になっているので、意味のあるSWOT分析にならないのです。
【ポイント :「強み」の定義】「強み」は、「良い点」ではありません。強みとは、自社が持つ経営資源(ヒト、カネ、モノ、情報など)の中で、チャンス(機会)に活かすことができて売上・利益の向上につながるものをいいます。
SWOT分析をすると、多くの人がただの「良い点」を「強み」に挙げてしまいます。どんな会社にも「良い点」はたくさんあると思うのですが、そのすべてが売上・利益に直結しているのでしょうか。
たとえば、「お店が新しくてキレイ」というのは間違いなく「良い点」だと思いますが、お店のキレイさ、美しさ、オシャレさだけで「ここに行ってみたい!!」とお客さんが思ってくれるほどのレベルに達しているでしょうか。このように、集客などに繋がっていないのならば、それは「強み」ではなく「良い点」レベルなのです。
同様のことが、「弱み」についても言えます。
【ポイント :「弱み」の定義】「弱み」とは、「これが原因で、せっかくのチャンス(機会)を掴めない!」というような、売上・利益の向上を妨げる「ネック」になっていることをいいます。「悪い点」「良くない点」「改善点」ではないのです。
先ほどと似た例を挙げると、「お店が汚い」という事実は必ずしも「弱み」になるとは限りません。「汚いけどウマい」と有名な飲食店がたくさんあるように、ターゲットとなる顧客層がお店の汚さを問題としていないのならば、それはあくまで「良くない点」レベルであり、「弱み」ではないのです。
続いて、「機会」や「脅威」がなんなのかハッキリさせましょう。
機会とは、「いま◯◯が流行ってるみたいだから、うちでもやってみたら!?」というような、社外の人でも簡単に思いつくようなものではありません。また、「グローバル化」なども事が大きすぎて、中小企業やフリーランスにとっては関係ないことが多いです。
「脅威」も同様で、「不景気」とか「消費増税」とか当たり前すぎることは無視できる場合が多いものです。
【ポイント :「機会」「脅威」の定義】「機会」や「脅威」は、自社がターゲットとしている地域・分野・市場・顧客のみに絞って考えます。
機会とは、「自社がターゲットとしているニッチ市場内」における「伸び代がある部分や新たなニーズの登場」をいいます。または、「自社が参入すべき新たなニッチ市場の発見」も機会となります。
逆に、脅威とは、自社の努力ではどうにもならないほどの市場環境の悪化や競合激化、法改正などを意味します。
たとえば、「近所に新しい高速ICができた」などは機会の一例となりますし、自社がターゲットとしているニッチ市場自体が消失してしまうような、「代替製品の登場や法律改正」などが脅威の一例です。
【ポイント③】数値や固有名詞など「具体性」にこだわる
3つ目に、SWOT分析の表への記入は「数値」や「固有名詞」などを使って「具体的に書く」ことです。要するに、感覚で書き込まずに「データや実際の事例を使って、事実を捉える」ということです。
思いつくままのSWOT分析だと、たとえば脅威や機会の欄には「景気後退」とか「オンライン需要の向上」などの抽象的な内容が並びがちですし、強みや弱みには顧客目線になっていない、自分目線の言葉が並びがちになってしまいます。つまり、独りよがりで客観性のない内容になってしまうのです。
そんな根拠のないスタート地点から分析をしても、そこから出てくる戦略は具体性や正確性を欠いて使い物になりません。もちろん、具体的で現実的な目標設定などできるはずもありません。
意味のあるSWOT分析をするためには、客観性や具体性が欠かせないのです。
【ポイント④】「仮説」や「深掘り質問」で具体性を高める
それでは、具体性を高めるにはどうすればいいのでしょうか? それが4つ目のポイント、「仮説」や「深掘り質問」です。
機会や脅威を考えるときに重要なのが「仮説」です。仮説とはつまり、「〜すれば・・・かも知れない」「もしこうなれば〇〇かも知れない」と考えることですね!
【ポイント】パッと思いついた機会や脅威を起点にして、そこからいろいろな仮説を立ててみることで、本当の機会や脅威が見えてきます。
こうした「仮説」による具体化によって、外部環境を外部のままにせず自社と結びついたリアルなものに変換することができます。そうして具体性を高めた内容をマトリックスに記入することで、意味のあるSWOT分析が可能になのです。
「深掘り質問」も同様です。深掘り質問とは、要するに「なぜ(why)」を繰り返すことです。「なぜ(why)」の他にも、「どうやって(how)」や「何を(what)」も有効です。これは強み・弱みを考えるのにも、機会・脅威をあぶり出すのにも使えます。
何か「これがうちの強みかな?」と思う要素を思いついたとして、そこで「どうしてそれが"強み"と言えるのだろう?」と考えてみるのです。
【ポイント】「why」「how」「what」を2回、3回と繰り返すことで、抽象的で根拠のなかった事象が具体化され、数値や固有名詞に変換されるのです。
たとえば先ほど「失敗例」として挙げた美容室のSWOT分析の中にあった、「高校生・大学生のファンが多い」という強みも、そこに「why」を繰り返すことで、次のような「本当の強み」が見えてきます。
- 持ち家で家賃がないぶん、価格を安くできている
- 高校が近くにあり、通り沿いで通学路として目についている
- 紹介カードでの割引が、あまりお金の余裕のない高校生にマッチしている
- 高校生だった顧客がリピートしてくれて、大学生になっても来てくれている
- スタッフ全員若くて学生にとって親しみやすいというお店の雰囲気もリピートの一因になっている
- ハイトーンカラーなど若者向きのスタイルが得意
このような、根拠や具体性のある本当の「強み」こそ意味があるのです。
【ポイント⑤】ひとつの事実を多面的に解釈する
5つ目に、ひとつの事実を多面的に解釈する視点も大切です。たとえば、「近くに同業者がオープンした」という事象は単純に考えると「脅威」に思えますが、視点を変えれば「そこで満足いかなかったお客さんを取り込む施策が打てる」という「機会」に変換することもできます。
日本を代表するマーケター・森岡毅さんは、「西武ゆうえんち」のリニューアルにあたって、「古い」「ボロい」という一見「弱み」のような要素に対して、「昭和レトロ」「懐かしさ」という文脈を与えることで、見事に「強み」へと変換しました。
このように、戦略次第、ターゲット次第によって、弱みは強みに変わるし、脅威は機会に変えられるのです! 多面的なものの見方をして、本当の強みや機会、それを活かした戦略を考えていくことが大切です。
【ポイント⑥】「脅威」や「弱み」の分析に時間をかけすぎない
6つ目のポイントに、「脅威分析」「弱み分析」に時間をかけすぎないことが挙げられます。理由は単純で、脅威や弱みから抜本的な戦略は生まれないからです。
それに、脅威や弱みの分析は、挙げ始めるとキリがないものです。脅威や弱みを挙げ続けると「できない理由」ばかりが強化されてしまい、モチベーションの低下にもつながってしまいます。
【ポイント】「脅威」については「致命傷回避・撤退縮小戦略」にどう影響するのか、「弱み」については「改善戦略」にどう影響するのか意識して、最低限度の内容だけ挙げていきましょう。
【ポイント⑦】ロジカルにこだわり過ぎない
最後に、ここまでの話とは逆のように思えるかも知れませんが、「ロジカルにあまりこだわり過ぎない」という意識も実は大切です。
- 「これは脅威の定義に当てはまるのか?」
- 「これって強みだと思うけど、機会に書いたこととダブらないか?」
- 「そもそもこれって、書いて意味あるのか?」
SWOT分析に慣れていないと、このような疑問も多々あるものです。こういうとき、いちいち立ち止まって考え込んでしまうよりも、とりあえず一旦表を完成させて、クロス分析・戦略立案をしながら調整していく方が確実に結果に結びつきます。
このあと解説する「SWOT分析のやり方4ステップ」では、
→「②内部環境分析」
→「③クロス分析による戦略立案」
→「④アクションプランや数値目標への落とし込み」
というキレイな流れを示していますが、実際には強み分析をしている最中に「積極戦略」を思いついたり、積極戦略を考えている最中に新たな強みや機会に気づいたりするものです。
はじめからロジカルさや厳密さにこだわり過ぎるのはやめて、とにかく最後までやってみると良いでしょう。
【超実践的】成果が出るSWOT分析のやり方 ── 4ステップの戦略立案方法
前章で解説した7つのポイントを踏まえ、どのようにSWOT分析を進めていくのか解説していきましょう!
基本はSWOTではなくTOWS!
まず前提として、SWOT分析ではSWOTではなくTOWSの順番で分析するのが基本だと覚えておきましょう。つまり、外部分析が先、内部分析が後で、どちらもネガティブな要素からです。
【ポイント】先に「機会」を分析しておくことで、それを活かせる「強み」探っていくイメージで進めます。
ネガティブな要素を先に分析する理由は、7つのコツの中で解説した通りです。「脅威」や「弱み」の分析にはあまり時間をかけず、具体的な戦略につながるものだけを抽出しましょう。
ちなみに、「圧倒的な強み」があって「強みによる差別化戦略」という基本方針が決まっている場合なら、「強み→機会→弱みと脅威」という順番で分析していく方がやりやすいです。
その場合、強みを考えたうえで「強みを活かせるチャンス」を探していくような考え方になります。
SWOT分析のやり方4ステップ!
以上を踏まえて、SWOT分析の具体的な進め方を解説していきます。SWOT分析は、次の4ステップで進めていきます。
【SWOT分析の進め方4STEP】
- 【ステップ⓪】目的の明確化
- 【ステップ①】外部環境分析
- 【ステップ②】内部環境分析
- 【ステップ③】クロスSWOT分析
- 【ステップ④】アクションプランや数値目標の具体化
具体的な事例を交えながら、順に解説していきます。
【ステップ⓪】目的の明確化
まず前準備として、SWOT分析を行う目的やゴールを明確にしておきます。多くの場合は「事業戦略の立案」やその先の「アクションプランやKPIへの落とし込み」が目的になるかと思いますが、SWOT分析はさまざまな用途に応用することもできます。まず始めに「SWOT分析を通して得たい成果物はなんなのか」を明確にしてから行うようにしましょう!
【ステップ①】外部環境分析
まず始めに行うのが「外部環境分析」です。つまり、「脅威」と「機会」の分析です。先に脅威をサッと分析したのち、自社の事業にとってチャンスとなる「機会」をしっかり探っていきます。
脅威分析
脅威分析では、商品ライフサイクルや大企業の参入、市場自体を脅かす代替品の登場などを見据えて、具体的に「何がどのように脅威」なのか考えていきます。
【ポイント】脅威分析では、「他の儲かる分野に注力するために撤退すべきこと」や「強みを活かすためにも乗り越えるべきこと」など、具体的な施策・行動に結びつけるを強く意識して、自社のビジネス・売上・利益に直接関係することだけ考えていきます。
さて、先ほど挙げた美容室の事例においては、どんなことが脅威となるでしょうか。例えば、以下などが挙げられます。
- 最近近くにできた競合店が同じく若者向けであり、店舗はオシャレで女性客が好みそう。しかもSNSに力を入れているので、当店の顧客や見込み客が流れてしまう恐れがある
- 今後も同じ商圏に新たな美容院がオープンする可能性は十分にあり、店自体のお洒落さなどでは敵わない
- 顧客の多様なヘアカラーへの要望を叶えようとすると、カラー剤による材料代が高くつき過ぎる
- 高校生の顧客が多いので、進学や就職による引っ越し等でせっかく定着した顧客が離れてしまう可能性がある。
- 学生中心の顧客層なので、低価格への要望が強く値上げができない
なお、以下のトリガーリストを参考にしながら考えると、抜け漏れなくスピーディーに脅威を整理できるので、おすすめです。
【脅威分析のトリガーリスト】
- 顧客からの要望、顧客の変化など「顧客」に関することで脅威となることはないか?
- 地域への新規参入、大手企業の市場への参入など、「競合」に関することで脅威となる動きはないか?
- 技術革新や流行の変化などによる「代替品の登場」により、市場自体が縮小・消失することはないか?
- 原料高騰によって材料代が上がったり、外注先との取引が終了したりなど、「仕入れ」に関する脅威はないか?
- 自社の事業に脅威となる「法改正」が予定されていないか?
- 「グローバル化」や「景気動向」「インターネットの発展」などで、自社の事業にとって脅威となる要素はないか?
機会分析
クロス分析前の4つのSWOT分析の中で、もっとも重要と言えるのがこの 「機会分析」です。強みをどう活かすか考えるのも、弱みを改善すべきか検討するのも、どんな「機会」があるか次第だからです。
【ポイント】機会分析では、「7つのポイント」の中で紹介した「仮定」や「深掘り質問」を駆使しながら、自社にとってのチャンスを【具体的に】探っていきます。
また先ほどの美容室の事例を考えてみましょう。次のような機会をリストアップできると、その後の戦略策定が具体性を帯びてきます。
- 自店が得意とする「バーバースタイル」が流行している
- 「グレージュカラー」や「ミルクティーカラー」など、ハイトーンの外国人風カラーが流行している
- 都内で流行している「髪質改善」は、周りの競合店がまだ実施してないが、いずれこちらでもブームになるはず
- 花火大会が有名で、自店のターゲット層である若者たちはカップルでのデートであったり、仲良し男女グループで参加したりなどで参加している。花火大会前に美容院の需要があるし、当日も着付やヘアアレンジ、メンズヘアセットの需要がある
- 近くに高校があり、自店舗前は多くの生徒が通学路として毎日通っている
- メインの顧客層である高校生たちが大学進学や就職したあとも通い続けてくれれば、より高単価なメニューを狙える
- 得意なヘアスタイルなどをInstagramやWebサイトで発信することで、若者などへのリーチが狙える
- このあたりの美容室はほとんどが同じ仕入れ先から材料を仕入れているので、独自の商材を入れることで店販品売上を伸ばせるかも知れない
- 顧客である学生の母親をターゲットにすることで、予約の空きが多い平日昼間を有効活用できそう
抜け漏れのない機会分析を行うためのトリガーリストも用意したので、ぜひ参考にしてみてください!
【機会分析のトリガーリスト】
- 顧客や社会のニーズ変化などで、自店にとってチャンスになるものはないか?
- 自店の強みを活かせるニッチなニーズはないか?
- ターゲットを変えることで利益拡大できないか?
- 今の商品を別の切り口から宣伝し、新たな価値を与えられないか?
- どこかとコラボして、顧客に独自の価値提供はできないか?
- 競合をライバルではなく同業者仲間と捉えることで、お互いにメリットのある関係を築けないか?
- 競合の戦略を二番煎じでも真似することで、メリットはあるか?
- 自社の独自ノウハウを使って、同業者を顧客にできないか?
- 高価格帯の商品・サービスを実現する方法はないか?
- 経費削減などを通して、利益率はそのままに低価格化できないか?
- 宣伝広告の量や内容、チャネルを変えることで、収益増加に繋がらないか?
- あえて入口を「無料化」「格安」にして顧客を掴むことで、利益拡大できないか?
- インターネットをうまく利用できないか?
- 仕入れ先を変えることで、メリットはないか?
- エリア拡大はできないか?
- 法改正で自社の追い風になることはないか?
- 閑散期でも収益を上げる方法はないか?
- エリアのイベント等集客材料とならないか?
【ステップ②】内部環境調査
続いては、内部環境である「強み」と「弱み」を分析していきます。外部環境のときと同じくネガティブ要素である「弱み」から分析するのがベーシックですが、「機会分析」をした勢いのまま「強み分析」から先に行い、メインとなる方針の当たりをつけてしまうのも一つの手です。
強み分析
強み分析も、機会分析と同じくらい重要なSWOT分析の肝です。機会に活かせる強みを見つけ出して、これらを掛け合わせることで事業の突破口となる戦略の軸が見つかるのです。
「強み」とは前述の通り、ただの「良い点」ではなく、競合との差別化要因になったり、お客様が自社商品を選ぶ理由になったりするような、自社の売上・利益に直結する要素をいいます。
【ポイント】強みを考える際は、自分よがりな意見にならないように気をつける必要があります。
お客様からのクチコミも実は「本当の強み」を捉えていないことが多いので、お客様が自社の商品・サービスを買ってくれた理由を冷静に分析してみることが強み発見のポイントです。
さて実際に例を見てみましょう。先程の美容室なら、以下のような「強み」が挙げられます。
- メンズカットの評判がよく、リピート率が非常に高い
- ハイトーンカラーも得意で、奇抜なカラーや透明感のある外国人風カラーには定評がある
- サロントリートメントは良い商材を入れており、知識も豊富なのでヘアカラーをするお客様には非常に人気
- 実は女性のヘアカットも得意。特にショートスタイルはかなり得意
- 店長、アシスタントのスタッフ2名どちらも20代なので、学生をはじめとする若いお客様との距離が近く、信頼が厚い
- 店舗物件・土地ともに所有していて、改装費のローンも支払い済みなので、家賃等が一切掛からない
- 家賃等がないぶん、カット料金を引き下げることができていて、大きな集客材料になっている
- 紹介割引のおかげで、学生による友達紹介の新規来店が多く、リピート率も高い
- 大通り沿いの立地で駐車場もあるし、駅からも徒歩圏内
- 地方の美容室ながら、美容業界の最先端の情報・流行を敏感にチェックできていて、流行りに敏感な若いお客様の心を掴む一因になっている
- お客様と店長が直接LINEを交換することも多く、気軽に予約できるようになっている
以下が、強み分析の際のトリガーリストです。ぜひ活用してみてください!
【強み分析のトリガーリスト】
- お客様から高い評価を受けていることは何か?
- 競合と差別化できる専門的な知識や技術、サービス、ノウハウなどはあるか?
- 取り揃えている商品・サービスのラインナップはお客様の来店理由になるか?
- お客様の来店理由になる設備面・人材面の特徴はあるか?
- 価格面は強みになっているか?
- 競合との差別化になるほどの短期納品や小ロット対応などは可能か?
- エリアや立地上の強みはあるか?
- 競合と比較してマーケティング面での強みを持っているか?
- 思い切った設備投資や人材確保などが可能な資金力はあるか?
- 競合が手を出せない、特許などの権利を持っているか?
弱み分析
前述した通り、「弱み」とは「悪い点」や「改善点」ではなくて、チャンスを逃す原因となってしまう要素です。外部環境分析で挙げた「機会」を参考にしながら、それをうまく活かせない原因、ネックを考えていきます。
【ポイント】弱み分析では、自社が狙っている「ターゲット」「ニッチ市場」に関係のあることだけを考えます。
また、ターゲットの違う競合、自社と資本力に大きな差のある競合と比較する必要はないため、他社との比較は同じニッチ市場でターゲット層のシェアを奪い合うライバル企業とだけに対して行います。
さて、こちらもまた例の美容室で実例を考えてみます。ここでポイントとなるのは、弱み分析を始める前に機会と強みの分析を終えているので、なんとなく次のような基本方針が見えているということです。
- 「家賃やローン代が一切ないのは、他店と比べて大きな強みだな。カット料金で価格勝負に持ち込めば、狙いたい高校生たちのシェア率は取れるな!」
- 「メインとなる顧客は今後も高校生男子だろう。あとは、進学・就職後も継続して来てくれる割合を増やす方法を考えることだな!そうすれば自然と高単価化も狙えてくるはず!」
- 「顧客となってくれている学生たちのお母さんを呼び込むのはいい作戦だな。そのために必要な施策を考えよう!」
- 「インターネットを使ってないのはやっぱり良くないな。先を見据えて、Webサイト作りとInstagram運用を始めよう。」
これらを念頭に置きながら、ネックになりそうなことを考えていくと、例えば次のような「弱み」が見つかるはずです。
- スタイリストが店長1人だけなので、予約の取りこぼしがある
- 女性スタイリストがいないので、女性客が少ない
- 着付やヘアアレンジ、女性ヘアカットも実は得意なことをアピールできていない
- インターネットを一切活用できていない
- メイン顧客である高校生は平均客単価が安い
- 店舗物件が古く、あまりお洒落じゃない
- 資金面がカツカツで、大きな予算をかけた施策はできない
なお、弱み分析をの際には、以下のトリガーリストをチェックしながら行うと良いでしょう。
【弱み分析のトリガーリスト】
- 競合他社に明らかに劣っていて改善すべき点はないか?
- 狙いたい顧客のニーズに対応できていない点はどこか?
- リピート率を下げている要因は何か?
- 顧客クレームで多いのはどんなことか?
- 設備面・資金面でのネックはあるか?
- 人材面・組織面でのネックはあるか?
【ステップ③】クロスSWOT分析
さて、SWOT分析の表が埋まったら、これらを使って「クロス分析(クロスSWOT分析)」を行いながら、具体的な戦略を導き出していきます。このときは、以下のようなテンプレートを使うとやりやすいです。
前述の通り、クロス分析では内部環境の「強み・弱み」と外部環境の「機会・脅威」を掛け合わせることで、以下4つの軸で戦略を考えていきます(※ 重要度の高い順に記しています)。
【ポイント】
- 強み × 機会(SO分析): 積極戦略。業績アップのための中心戦略となる、もっとも重要な戦略を導き出す
- 弱み × 脅威(WT分析): 致命傷回避・撤退縮小戦略。積極戦略等に集中するために、戦略的に辞めることなどを検討する
- 弱み × 機会(WO分析): 改善戦略。長期的に売上・利益を伸ばしていくため、時間をかけて改善していくことなどを検討する
- 強み × 脅威(ST分析): 差別化戦略。強みを活かして脅威に対抗するのか。はたまた黒字でも早めに撤退するのかなどを戦略的に判断する
順番に解説しましょう。
強み × 機会(SO分析): 積極戦略
SWOT分析で一番重要なのが、この「積極戦略」です。積極戦略は事業の軸となる方針を定めるもので、それを踏まえてその他の戦略も考えていくことになります。積極戦略を導き出す際のポイントをまとめてみます。
【積極戦略の導出ポイント】
- どの「機会」にどの「強み」を掛け合わせた結果、どんな戦略が考えられ、どんな結果が期待できるのか具体的に記す
- その後の具体的な戦術やアクションプランがイメージできるように記す
- 抽象論や総論にならないように気をつける
- 具体的になりすぎて「戦術」や「アクションプラン」になっていないかも気をつける(方法論ではなく戦略論にする)
- ニッチ市場に対してターゲットを定め、同業他社と差別化した戦略を取れているか検討する
- この戦略で売上や利益が本当に拡大しそうか、よく確認する
例の美容室のSWOT分析結果を使って、積極戦略を導き出してみましょう。たとえば、以下のようなものが考えられます。
- 家賃代が掛からないという武器を活かしてヘアカット料金は安いままにして、高校生男子とその母親をメインの集客ターゲットに据える
- 紹介割引によって高校生同士の友達紹介や家族の紹介により新規を増やす
- 店舗の外装をできる範囲内でお洒落にするとともに、高校生向けのポップや看板を出して認知向上・新規来店を狙う
- 遠方からでも通いやすい立地の良さと、都心部との料金の違いを訴求し、高校生顧客が地元を離れたあとでも通ってくれるように促す
- 大学生や社会人のお客様をターゲットに、ヘアカラー&トリートメントを訴求し単価アップを狙う
- 流行に敏感な若者に刺さるヘアケア商材を取り入れ、地元の材料屋からのみ仕入れている競合店と差別化する
- Instagramに施術例をアップするとともに、3回に1回はメンズ向けヘアセット知識やマダム向けヘアケア知識などを投稿し、ファンを集める
弱み × 脅威(WT分析): 致命傷回避・撤退縮小戦略
次に取り組むのは、弱みと脅威を掛け合わせる「致命傷回避・撤退縮小戦略」の導出です。
これは「弱み」と「脅威」の掛け合わせなのでマイナスのイメージが強いですが、「収益につながる攻める戦略に集中するために、余分な部分を削ぎ落とすための戦略的撤退」と考えるべきです。
【ポイント】どんな会社も、リソースは限られています。その中で新しいことをやろうと思ったら、何かをやめなければきちんと実現するのは難しいのです。このことを、「選択と集中」といいます。
致命傷回避・撤退縮小戦略を考える際は、以下のようなことを検討すると良いでしょう。
【致命傷回避・撤退縮小戦略の導出ポイント】
- 赤字分野からの撤退
- 長期的に見て利益率の低い顧客からの撤退(LTVによる選別)
- 利益率の低い商品からの撤退
- 外注化・アウトソーシング化
- 発注先・仕入れ先の変更
- 経費削減(最悪の場合は人員のリストラも含む)
例の美容室では、次のような戦略が考えられます。
- 若い女性は当店の集客ターゲットからは除外する(近くの競合店が若い女性にウケそう、人材や設備的にも女性ウケは良くない)
- お店のお洒落にこだわることはやめ、最低限度を維持するのみに留める(資金力的に限界があり、改善して「強み」にするのは難しい)
弱み × 機会(WO分析): 改善戦略
続いて、弱みと機会の掛け合わせから「改善戦略」を考えていきます。改善戦略はその名の通り、今後のために、時間をかけて弱みを改善していくという戦略です。
今回の美容室の例なら、次のような改善戦略が考えられます。
- 女性スタイリストを1名増員する
- 店舗のWebサイトとInstagramを作って運用し、Webを通して商圏を広げる
- 資金を貯めて、いざというときの設備投資等ができる余裕をつくる
強み × 脅威(ST分析): 差別化戦略
最後の「差別化戦略」は、自社の努力ではどうにもならない脅威に対して、自社の強みをぶつけて対抗していくのか。あるいは強みがあってもその分野からは撤退するのかを考える戦略です。具体的には、次の4つのパターンが考えられます。
【差別化戦略のパターン】
- 市場をずらして競合と差別化する
- 他店も厳しいのなら、あえて逆張りしてエリアで市場トップを狙う(競合の買収等も検討)
- リソースをできるだけ使わないようにしたうえで、黒字が出ているうちは細々と続けながら、競合と我慢比べをする
- まだ黒字で利益が出ているうちに、早めの事業売却する
今回の美容室の場合では、1つ目のパターンに当たる「メンズの学生とその母親にターゲットを絞る」という競合との差別化戦略がそれに当たります。
【ステップ④】アクションプランや数値目標の具体化
4つの軸から戦略が出揃ったら、それを噛み砕いて戦術やアクションプラン、数値目標に落とし込みます。数値目標については、現在の売上データなどをもとにして、それぞれの施策でどの程度の効果が上がるのか試算していきます。
【まとめ】SWOT分析はとにかく「具体性」にこだわろう!
SWOT分析は直感的にわかりやすくてスピーディーに実行できる戦略立案の方法で、中小企業やフリーランスの方におすすめの便利なフレームワークです。
ただし、シンプルなぶん実は使いこなすにはコツが必要であり、なんとなくSWOT分析しても、分析前からわかっていたことを整理してまとめただけで終わってしまいがちです。そうならないためには、以下の7つのポイントを押さえておきましょう!
【復習・SWOT分析のポイント】
- 「単一事業」に対して行う(△経営戦略 ◎事業戦略)
- 「強み」「弱み」「機会」「脅威」の定義を明確にしておく
- 数値や固有名詞など「具体性」にこだわる
- 「仮説」や「深掘り質問」で具体性を高める
- ひとつの事実を多面的に解釈する
- 「脅威」や「弱み」の分析に時間をかけすぎない
- ロジカルにこだわり過ぎない
コツを押さえて「具体的なSWOT分析」を行えば、根拠のある業績向上のカギを見つけ出して、すぐさま実行できるプランまで立てることがができます。
SWOT分析は企業の事業戦略だけではなく、個人のキャリアプランを戦略的に考えるためなどにも広く応用できますので、ぜひ今の自分にあった目的で試してみてください!
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