マーケティング

PODとは? ── 差別化マーケティングの基本「POD / POP / POF」を押さえて強いブランド・ポジションを築き上げよう!

マーケティングはよく「持続的に売れる仕組みをつくること」と訳されますが、その考え方の基本中の基本となるのが「差別化」です。

競合がひしめく現代のビジネス環境の中、自社の製品・サービスが顧客に選ばれるためには何かしらの「選ぶべき理由」が必要です。そこで、他社とは違った価値を提案して直接の衝突を避け、異なる顧客ニーズを持った消費者をターゲットにして、市場の中に自社独自のポジションを築き上げる。そのような、優れた「差別化戦略」こそ現代ビジネスで求められていることなのです!

さて、そんな重要性を増す「差別化戦略」を理解するうえで、絶対に押さえておくべきキーワードのひとつが「POD」です。PODはPoint of Difference(ポイント・オブ・ディファレンス)の略で、他社製品との「差別化ポイント」を意味します。

差別化マーケティングを考えるうえで重要な「POD」という概念とその重要性、活用方法を解説いたします。

差別化マーケティングの基本「POD(Points of Difference ; 相違点)」とは?

POD(ポイント・オブ・ディファレンス)は「差別化ポイント」と訳され、「他社製品との違いの中で、商品を買う理由になるもの」といった意味を表します。マーケティング界の権威であるケラー教授の著書『エッセンシャル 戦略的ブランド・マネジメント 第4版』では、PODは次のように定義されています。

“差別化ポイント(ポイント・オブ・ディファレンス)とは、消費者がブランドを強く連想し、ポジティブに評価し、同じレベルのものは競合ブランドには見つかるまいと考えるような、ブランドの属性あるいはベネフィットのことである”
── ケビン・レーン・ケラー 著, 恩藏直人 訳『エッセンシャル 戦略的ブランド・マネジメント 第4版』(東急エージェンシー, 2015年)p.061より

「Point of Difference」という英語を単純に訳すと、「異なる点」あるいは「違うポイント」となります。しかし上記の通り、マーケティングにおいてPODとは単に「相違点」を表すのではなく、「競争優位につながる独自の強み」を意味します。

たとえば「ハーゲンダッツ」は、アイスクリーム市場の中でも「爽」や「スーパーカップ」などとは明確に違った、プレミアムで上質な時間とワンランク上のおいしさを与えてくれます。このような、顧客が他の商品を差し置いてその商品を選びたくなる理由がPODであり、このようなPODを商品・サービスに創り出すことが差別化戦略の基本なのです。

PODとUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)

PODとほぼ同じ意味のマーケティング用語として、広告業界の巨匠ロッサー・リーブス氏が提唱した「USP (Unique Selling Proposition ; ユニーク・セリング・プロポジション)」があります。

USPは「自社だけが持つユニークな価値提案」を表し、主に「広告宣伝」や「セールス」の分野で使われます。

久保真介
久保真介
PODもUSPも、その本質はまったく同じです。他社と「差別化」した独自の価値が競争優位を生み出す、ということですね!

PODだけじゃ不十分!「Points of X(POX)」のフレームワークとは?

差別化戦略を考えるとき、PODと同時に押さえるべきポイントがもう2つあります。POPPOFです。

  • POP(Point of Parity): 同質化ポイント
  • POF(Point of Failure): 脱落ポイント

POP(Points of Parity ; 同質点)は「満たすべき最低条件」を表す

POPはPoint of Parity(ポイント・オブ・パリティ)の略で、「類似化ポイント」あるいは「同質化ポイント」などという意味です。

POPは同一カテゴリーの一般的な商品が共通して持っているような機能・性質・特徴を表し、もしそれがなければ「買わない理由」になります。

たとえば、新発売されたスマホがどれだけ高音質を実現しようと、どれだけお洒落なデザインを実装したとしても、スマホ全般と比較して圧倒的にカメラ機能が貧弱であれば、選択肢にすら入らないでしょう。すなわち、顧客が最低限期待する程度のカメラ機能は、すべてのスマホ製品にとって必ず持ってなければならないPOPなのです。

POF(Points of Failuere ; 脱落点)は「他社が選ばれる理由」を表す

POFはPoint of Failuere(ポイント・オブ・フェイリャー)の略で、「脱落ポイント、脱落点」という意味です。

POFは他社製品の性能・機能として脱落しているポイントを意味し、「他社製品を選ぶ理由」になります。

先ほどと同じくスマホの例を挙げるなら、ブランド力やデザイン性の高さ、Macとの優れた連携などさまざまなPODを持つiPhoneですが、競合であるXperiaと比較すれば、互換性の高いType-C充電やSDカードに対応していない点はPOFとなるでしょう。これはiPhoneを買わない理由というより、他社製品(Xperia)が選ばれる理由と言えます。

久保真介
久保真介
つまりPOFは、裏を返すと「他社製品のPOD」となるわけです。

差別化戦略の肝はPOXのバランス!「差別化」と「同質化」の本質とは?

POD, POP, POFについて、違いを整理しておきましょう。

POD
Point of Difference
差別化
ポイント
選ばれる理由、競争優位の源泉
POP
Point of Parity
同質化
ポイント
最低限の必要条件
POF
Point of Failure
脱落
ポイント
他社製品が選ばれる理由(他社製品のPOD)

つまり、商品はPODで売れ、あるべきPOPの不足で売れなくなるわけです。そしてPOFは他社が売れる理由であり、差別化戦略の中で自社が捨てた要素というわけです。

したがって、商品開発では「このカテゴリにおけるPOP」をしっかりと押さえたうえで、どのようなPODを創り出すかが戦略の基礎となるわけです。

久保真介
久保真介
なお、自社と競合他社のPOD, POP, POFをまとめて理解し、戦略立案に役立てることを「Point of X分析(POX分析)」と呼びます。

PODには「RTB(信じる理由)」が不可欠!

顧客はPODに価値を感じて商品を購入するわけですが、そこには必ず「この商品を信じるに値すると思った理由・根拠」が存在します。それをマーケティング用語では「RTB(Reason to Believe ; 信じる理由)」と言います。

RTBとは? 顧客の「信じられる理由(Reason to believe)」を押さえてマーケティング・ブランディングを成功させよう! マーケティングでよく耳にする用語「RTB」とは、「Reason To Believe」の略で「信じるに足る理由」を意味します。 ...

RTBとなり得る要素はさまざまな種類が考えられます。たとえば化粧品やサプリメントなら「有効成分」や「専門家のお墨付き」などがRTBとして機能します。 iPhoneやロレックスなら、これらのブランドが築き上げてきた「ブランド力」が大きなRTBになるでしょう。また、市場価格よりも低価格を売りにした商品ならば、「低価格実現までのストーリー」がRTBとなります。

久保真介
久保真介
無印良品の「不揃いバウム」なんてまさにそれですね!

このように、強いPODを生み出すためには、単に他社製品よりも優れた機能・サービスを提供するだけではなく、その機能やサービスを顧客に信じてもらうための根拠(RTB)を明確に示し、認識してもらうことが重要なのです。

久保真介
久保真介
さらにいえば、明確に示せるRTBがないようなPODであれば、それは他社もすぐに真似できてしまうでしょう。そうなればせっかくのPODもPOPへと変化し、競争優位は長続きしなくなってしまうのです。

POPを高めることで他社のPODを無効化できる

POPは日本語では「類似化」あるいは「同質化」と訳されていますが、その理由は、POPが「どの商品を買っても得られる、共通した最低限の価値」を表しているからです。言い換えるなら、POPがその製品カテゴリーを規定しているのです。

ここでポイントなのが、自社製品にどんなPOPを持たせるかによっても、競争優位は生み出せるということです。

【ポイント】
競合他社が優位に立とうとしているポイント(競合のPOD)で「引き分け」に持ち込んでしまえば、それはお互いの製品にとってPOPになります。つまり、POPによって競合のPODを無効化できるのです。

久保真介
久保真介
ちなみに、ケラー博士はこのようなPOPを「競争的類似化ポイント」と呼んでいます!

ただし、このようにして「カテゴリ全体の価値基準を引き上げる」ことは、競合だけじゃなく自社も含めた業界全体にとってマイナスに働く場合もあるので注意が必要です。

平均的な市場価値を高められ、それによりお互いが値上げできて利益率を向上できる場合なら問題ないですが、コストが増加したのにお互いに値上げできない状況ならば、業界全体の収益性が下がっただけとなってしまうのです。

久保真介
久保真介

スマホ業界は競合各社が切磋琢磨して平均的な機能レベルを引き上げ、それに応じて値段も向上しています。これが理想的な競争のあり方です。

一方、かつてのホテル業界で見られた「ベッド戦争」などは無益な競争の好例です。ウェスティンホテルが数千万ドルかけて開発した「ヘブンリーベッド」に対抗して、ヒルトン、マリオット、ハイアットなどもそれぞれオリジナルベッドを生み出しました。結果としてどのホテルも競争優位には立てず、研究開発費を回収するだけの値上げも叶わず、業界全体が損する結果になってしまったのです。

この例からもわかる通り、POPで他社のPODを無効化できますが、それは必ずしもプラスに働くとは限りません。それを理解したうえでPOD, POPを設定することが差別化戦略の基本であり、マーケティングの基本なのです。

【まとめ】POX(POD、POP、POF)による差別化戦略で、ライバルに差をつけよう!

「差別化ポイント」を表す「POD(ポイント・オブ・ディファレンス)」は、マーケティング戦略を考えるうえでの基本中の基本です。市場に混在するさまざまな顧客ニーズ、競合他社の戦略、自社の強みを総合的に理解して、他社と差別化したユニークな価値、すなわちPODを顧客に提案していくことこそマーケティングの本質なのです。

久保真介
久保真介
なお、自社製品にどんなPODを持たせるべきかを考えるためには、「3C分析」や「SWOT分析」などのフレームワークが役立ちます。ぜひチェックしてみてください!

今回解説したPOX分析をはじめとするビジネスフレームワークであったり、Webマーケティングの手法だったりを理解し使いこなせるようになれば、ビジネスの収益性改善や会社での業績アップに非常に役立ちます

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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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