「パラダイム」という言葉はギリシャに由来しており、物事をどう認識・理解・解釈しているのかを表します。つまり簡単にまとめると、パラダイムとは「個人や社会が持っているモノの見方や考え方」ということです。
【ポイント】言うならば、パラダイムとは「物事の見方・解釈を決めるレンズ」です。誰しもが自分の人生経験やこれまで受けてきた教育などを通して、自分だけのパラダイムを持っています。ぼくたちは世の中をありのままに見ているのではなく、パラダイムというレンズを通して世界を見ているのです!
このように、個人の思想や価値観を決めるパラダイムですが、環境の変化や衝撃的な体験などがきっかけとなって大きく変化することがあります。このような、パラダイムの転換を「パラダイムシフト」といいます。ひとたびパラダイムシフトが起これば、身の回りで起こるすべての出来事が持つ意味が代わり、それに応じて態度や行動も大きく変わります。
このようなパラダイムの変化は個人レベルで起こる場合もありますし、社会全体にパラダイムシフトが起こる場合もあります。どちらにせよ、パラダイムシフトは個人や社会に大きな影響を与えるものなのです。
そんな「パラダイムシフト」の力をうまく使えば、自分自身を成長させることも、ビジネスで成功を収めることも可能です。今回は、ぼくたちの「成功」に大きく関わる「パラダイム」と「パラダイムシフト」について解説していきます。
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パラダイムとは? ── パラダイムが人の態度や行動、人格、人間関係、ビジネスの成否まで決定している!?
前述の通り、「パラダイム」はモノの見方や考え方を表す言葉です。言い換えれば、身の回りのものごとを「どう解釈するのか」は、その人が持つパラダイムが決定しているということです。そして、そんなパラダイムが何かをきっかけに変化することは「パラダイムシフト」と呼ばれます。
もともとは科学の専門用語だった「パラダイム」「パラダイムシフト」
この「パラダイム」という用語をはじめて使ったのは、アメリカの科学者であり哲学者でもあるトーマス・クーン氏です。彼は著書『科学革命の構造』(1962年)の中で「パラダイム」および「パラダイムシフト」という概念を提唱して、科学界における新発見の仕組みとそれが社会の常識を変えていく構造を説明しました。もともと「パラダイム」という言葉は科学の世界で使われる用語だったのです。
ビジネスの世界に「パラダイム」の概念を浸透させた『7つの習慣』
この「パラダイムシフト」という概念がビジネス界に広まったのは、スティーブン・R・コヴィー氏の著書であり「世界一売れたビジネス書」と言われる『7つの習慣』がきっかけです。
この本の中で、コヴィー博士は「成功するためには、自分が持っているパラダイムを認識し、成功者のパラダイムに書き換える必要がある」ことを述べています。「成功者のパラダイム」がなくても、ビジネスで一時的な成功を収めるだけなら「偶然」や「テクニック」などで得られる可能性もありますが、「人生の真の成功」を手にするためには、正しい人格や法則に基づいた「成功者の考え方・物事の捉え方」を身につける以外に方法はないと述べているのです。
それはなぜかと言うと、その人が持つパラダイムが「日々の態度や行動までを決定している」からです!
ものごとを「どう見る」が態度や行動を決定づける
どのようにしてパラダイムがぼくたちの振る舞いや行動に影響を与えているのか、簡単な例で考えてみましょう。
【出掛けようと思っていたせっかくの休日なのに、大雨が降ってしまったら・・・】
Aさん「最悪だ……。せっかくの休みなのにこんな雨じゃ外に出られないし、何もできないよ~」
Bさん「今日は雨か。外に出られないのは仕方ない。でもそれなら今日は、前から読んでおきたかった本を読んで勉強しよう!」
この二人の違いは明確ですよね。同じ状況に置かれても、人によってその状況をどう解釈するのか(どう受け取るのか)は異なりますし、それに応じて行動も変わってきます。これこそ、パラダイムが個人の人生に与える影響なのです。
このように、ぼくたちの態度や行動はパラダイムに支配されています。したがって、日々の行動を変えたいなら、まず変えるべきは目の前の「行動」ではなく「パラダイム」であり、パラダイムを変えれば自然と行動を変えられるのです!
パラダイムシフトは社会に劇的な変化を生み出す ── パラダイムシフトが持つ力
パラダイムシフトは個人だけのものではありません。天動説から地動説から常識が変化したように、社会全体でもパラダイムシフトは起きています。
最近の例では、新型コロナウイルス感染症の流行がまさに、全世界にさまざまなパラダイムシフトを引き起こしていますね。最も深刻化していた2020〜2021年の頃は、不要不急な外出は控える、大人数での集まりは避けるといったように、今まで当たり前にできていたことを我慢せざるを得なくなりました。また、リモートワークが普及したり、外出時のマスク着用が当たり前になったのも、コロナ禍に起きたパラダイムシフトの一例ですね。
このように、パンデミックなどをきっかけにして、社会全体のパラダイムが一気に変わってしまうこともあるのです。
スマホの登場は世の中のパラダイムと人々の行動を激変させた ── パラダイムシフトの事例
また、パラダイムシフトは必ずしも一気に起こるとは限りません。緩やかに社会の常識が変わっていった一例として、スマートフォンの普及による社会変化が挙げられるでしょう。
ガラケーの時代なら、携帯電話を持つ目的は電話やメールといった「連絡手段」がほぼすべてでしたが、現在のスマートフォンは連絡手段としての役割を越え、「カメラ」「娯楽」「情報のインプット・アウトプット」などあらゆる場面でぼくたちの生活に入り込んでいます。
どこか知らない場所に行くなら、昔なら地図を開いていたところ、今ならスマホでGoogle Mapを開く人がほとんどでしょう。また、外出先でランチをどこにするか決めるにも、今やGoogle検索やInstagramが欠かせません。自宅での娯楽時間もスマホひとつで完結するようになり、昔は「三種の神器」とも言われたテレビを手放す人すら増えてきています。
また、スマホは僕たちの購買行動も大きく変化させています。たとえば、くせ毛が嫌だから「ストレートアイロンを買おう」と思った場合、昔ならまず家電屋さんに行って商品を見比べたり、友達や美容師におすすめの商品を聞いたりなど、身の回りにある選択肢から情報を取得して、その中で一番よさそうなものを購入していたはずです。
しかし今なら、スマホでGoogle検索をすればさまざまなWebサイトがおすすめのヘアアイロンを紹介していますし、YouTubeやInstagramを見ればモデルや美容師によるレビューが見つかります。そのように、家の中にいながらして何十もの選択肢を比較し、現物を一度も目にすることなく購入まで可能となっています。
このように、スマートフォンは10年以上の時間をかけながら徐々に世の中を変えていき、今や以前の常識が考えられないほどにぼくたちの考え方を根本的に変えてしまっています。このように、パラダイムシフトはひとたび起これば社会に大きな変化をもたらすのです。
世の中のパラダイムシフトは、ビジネスチャンスにつながる!
スマホの登場のようなインパクトのあるパラダイムシフトは、大きなビジネスチャンスでもあります。「GAFA」の登場がまさに良い例です。
GAFAとは「Google、 Apple、 Facebook、 Amazon」という、国を超えて巨大な力を持ったITの巨人4社を表します。これだけの力を持ったGAFAですが、どれも誕生からわずか30年あまりで世界のトップ企業にまで成長しています。この急成長を可能にしたのは「インターネット」や「スマートフォン」による時代の変化にいち早く対応できたからであり、人々の生活をより便利にするパラダイムシフトを体現したからです。
また、GAFAのような大企業の話だけでなく、個人単位でもインターネットを活用してビジネスを成功させている人が大勢現れています。これも世の中の変化(ニーズの変化)にうまく対応して、今までになかった新しい価値を作り上げた結果です。
このように、世の中のパラダイムシフトは大小問わずあらゆるビジネスのチャンスを生み出すのです。
パラダイムシフトは個人の人生すら変える!? ── 成功を掴むためのファーストステップ
「なんとなくこのままではいけない」「人生を好転させたい」と思ったとき、あなたなら何から始めるでしょうか? きっと、ほとんどの人は成功者がどのようなことをしたのかという「How to(方法)」を取り入れようとしますよね。
しかしコヴィー博士は、成功者の「やり方」を模倣するのは小手先のテクニックに過ぎず、それでは真の成功は手に入らないと主張しています。
コヴィー博士は『7つの習慣』の中で、以下のように述べています。
“自分が本当に変わるには、ものの見方を変えなくてはならない。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.007より
つまり、真に必要なのはテクニックではなく、「一般人のパラダイム」から「成功者のパラダイム」にパラダイムシフトすることなのです!
「成功者のパラダイム」=「インサイド・アウト」──『7つの習慣』に学ぶ成功者になる方法
それでは、成功者のパラダイムとは何なのでしょうか? コヴィー博士は、もっとも重要なのが「インサイド・アウト」の考え方を身につけることだと説明しています。
"インサイド・アウトとは、一言で言えば、自分自身の内面から始めるという意味である。内面のもっとも奥深くにあるパラダイム、人格、動機を見つめることから始めるのである。"
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.043より
簡単にいえば、インサイド・アウトとは「主体性を持って生きること」です。他人との関わり合いの中で生活するうえで、人間は良くも悪くも外部(環境や他人)からの影響を受けやすいものです。他人の意見に影響されることもありますし、勉強しようと思っていてもついつい目の前にあったスマホに手が伸びゲームをしてしまったりするものです。
そのような環境の中で、他人の発言や欲望といった外部からの「刺激」に「反応的に生きる」のではなく、自分のパラダイムや価値観、その時々の感情などといった「自分の内面」に常に目を向け、「自分自身が変わる」「自分の内面にあるものを変える」といった、自分でコントロール可能なものに注力していく考え方が「インサイド・アウト」です。
【ポイント】言い換えれば、自分の人生に責任を持ち、外部に依存することはやめ、主体性を持って生きることこそ「インサイド・アウトのパラダイム」です。(詳細 → インサイド・アウトとは?)
インサイド・アウトの考え方を身につけることで、他者に依存せず自分の言動や感情を見つめて、自分をコントロールできるようになります。それが自分を成長させるためのファーストステップとなるのです。
習慣を変えれば人生が変わる!? ── パラダイムを変える方法
人生を好転させたいと思うなら、まずは自分のパラダイムを変えることが不可欠です。パラダイムが変われば「日々の態度や行動」が変わり、その積み重ねで「習慣」が変わります。生活とは言わば「習慣の集合」です。毎日の習慣が変われば人格が変わっていき、最終的に人生を変わっていくのです。
“私たちの人格は、習慣の総体である。「思いの種を蒔き、行動を刈り取る。行動の種を蒔き、習慣を刈り取る。習慣の種を蒔き、人格を刈り取る。人格の種を蒔き、運命を刈り取る」という格言もある。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.047より
この格言の中でいう「思い」の源泉にあたるのがまさにパラダイムです。パラダイムを変えて行動・習慣・人格を変えていくことが、真の成功を手にする唯一の方法なのです。
コヴィー博士が提唱する「原則」に基づいた「7つの習慣」を身につけよう!
それでは、パラダイムシフトを起こすためにはどうすればいいのか。それがコヴィー博士の唱える「7つの習慣」です。
「7つの習慣」は、第1の習慣から順を踏んで取り掛かっていくことが肝心です。
第1から第3の習慣は「私的成功」に位置付けられています。「依存」した状態から脱却し、主体的で効果的な人生を送れる「自立」した人格を手にするための習慣です。
続く第4から第6の習慣は「公的成功」を目指すためのものです。ここでは、自立した人間同士の「相互依存」を作り出すための考え方と習慣にフォーカスしています。そして、最後の第7の習慣は「最新再生」を目指すもので、第1から第6までの習慣の理解を深め、熟達するための自己研鑽の習慣となっています。
まずはひとりの自立した人間として人格を磨き、その成熟した人格を持って他者と関わっていくことで、ひとりでは成しえない卓越した成果を生み出すことができます。そして、自己研鑽を怠らないことで、成功の持続と人格の向上を目指します。
このように、成功者のパラダイムを身につけ、実践していくための方法がコヴィー博士の「7つの習慣」なのです。
【まとめ】パラダイム(= 世界を見るレンズ)が変われば人生が変わる!
パラダイムとは「モノの見方や考え方」であり、世界を見るレンズです。人間はあるがままにものごとを見ていると思っていますが、実はそれぞれの経験や考えに基づいたレンズ(=パラダイム)を通して見ています。同じものごとを見ても人によって捉え方が異なるように、一つの事実に対して無限の解釈があるのです。
そして、人間の態度や行動は、目の前の事実をどう解釈するかがベースとなって決定づけられています。したがって「パラダイムは人間の態度や行動の源泉」ともいえ、人格形成と密接に結び付いています。だからパラダイムを変える(=パラダイムシフト)ことで、人生を良い方向へと変えていけるのです。
自分のパラダイムを変えれば、人生が変わります。ビジネスでの成功にも繋がりますし、もっと大きな意味で「人生の成功」を手にする原動力になります。もしあなたも人生を変えたいと思うのなら、まずは自分のパラダイムを見つめ直し、成功者のパラダイムに書き換えることから始めてみましょう!
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