5フォース分析とは、経営戦略論の第一人者マイケル・E・ポーター教授が提唱する外部環境分析の手法です。
【5フォース分析とは?】5フォース分析は「5つの競争要因」を分析することにより、「業界とその周りを取り巻く各プレイヤーの力関係」と、その中での「価値・利益の流れ」という「その業界におけるビジネスの本質的な収益構造」を明らかにするフレームワークです。
業界の平均的な収益性を知り、それはなぜなのかを理解することで、「自社はこの業界の中でどのように立ち回るべきなのか」という戦略立案への重要な示唆が得られます。(詳細 → 5フォース分析とは?)
5フォース分析をすることで「業界」という広い視野からビジネスを俯瞰でき、その本質を理解することができます。そこから具体的な「経営判断」や「戦略立案」に繋げよういうのが、5フォース分析を行う理由です。
5フォース分析を正しく理解して使いこなせるようになれば、会社全体や自分自身の業績アップに直結します。この記事では、そんな実践的なフレームワーク「5フォース分析」の具体的なやり方を詳しく解説します。
この記事は、「5フォース分析自体は知ってるけど実際にはどうやったらいいか分からない!」と思っているアナタに是非読んでいただきたい記事です。
「そもそも5フォース分析って何?」という方は、ぜひ以下の記事を先にご確認ください!
最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
5フォース分析を行ううえでの正しい考え方 ── 本質は業界の構造を分析・理解すること
5フォース分析の本質的な価値は「業界構造への深い洞察が得られること」にあります。この業界にはどんなプレイヤーが参入していて、どのような競争を繰り広げているのか。収益性のネックになっているのはどこなのかなどを理解することで、成功のカギを見つけ出すのです。
【ポイント】5フォース分析は「業界の魅力度を知るためのツール」とよく言われますが、それは間違いです。確かに業界が魅力的かどうかを知ることもできますが、そういった判断を下すためだけに用いるツールではないのです。
このことについて、ポーター教授自身も次のように述べています。
“五つの競争要因分析のねらいは、業界が魅力的か否かを判断することではない。これもよくある誤解だ。このフレームワークは、業界の業績と自社の業績について理解を深めるために使ってほしい。”
── ジョアン・マグレッタ 著, マイケル・E・ポーター 協力, 櫻井祐子 訳『〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房, 2012年)p.024より
「業界が魅力的かどうか」を知りたいだけなら、わざわざ5フォース分析などしなくても業界の「ROI(投資利益率)」を調べてみれば十分です。高い収益性を上げている企業が多いのなら、魅力的な業界と判断できるでしょう。
しかし5フォース分析が与えるのは、そんな表面的な理解ではありません。
- なぜ平均収益率はその水準なのか?
- 他の業界に比べて平均収益率が高い(低い)のはなぜなのか?
- 業界平均を超える収益性を上げている企業の成功要因は何なのか?
などといった「この業界におけるビジネスの本質」を捉え、強い戦略を立案するために分析を行うのです。
5F分析は「業界の定義」から始まる ── 業界に属するプレイヤーを理解する
5フォース分析は、自社のビジネスにとって本当の「業界」とは何なのか ── つまり、競合、参入障壁、代替品、顧客、サプライヤーとは何なのか ── その定義を与えることからスタートします。
言い換えれば、
- 誰のためにどんな価値を創造しているのか?
- どの企業と競争しているのか?
などを正しく理解することから5フォース分析は始まるのです。
業界を正しく定義することで、正しい戦略を立てられる
業界の定義は広すぎても狭すぎても正しい分析ができません。
業界を広く取りすぎた場合、異なるビジネス構造を持った企業群まで同一業界とみなすことになってしまい、分析精度が低くなって重要な成功要因を見落とすことにもなりかねません。
逆に狭すぎた場合、本来は狙えたはずのターゲット顧客が視界から外れてしまったり、重要な脅威を見落としてしまったりといった失敗に繋がる可能性があります。
自社が属する「業界」を正しく定義することで、正しい戦略を立てられるのです。
業界の定義を間違ってしまうと? ── 業界を広く取りすぎて失敗してしまう事例
一般的に、業界の定義は広く取りすぎてしまうことが多いといわれています。たとえば、美容室や床屋、美容材料屋などをまとめて「理美容業界」と言ったりしますが、この業界定義は分析を行ううえでは広すぎます。
一般的に、美容室は女性を、床屋は男性を顧客にします。また、同じ美容室で比べても、東京都内の激戦区と地方のお店とでは「客層、客数、平均客単価、土地の代金、顧客の求めるニーズ、仕入れるべき材料、提供すべきメニュー、顧客の交通手段や情報収集の手段」など、ビジネスを取り巻くあらゆる環境や条件が変わってきます。
業界分析を行う際は、このような地域特性なども考えて「自社の属する業界」を適切に定義することで、分析精度の向上につながるのです。
競争とは「価値の蓄積と分配」── 5つの力から業界の構造を理解する
自社の属する「業界」を適切に定義できたら、そこに属するプレイヤーの力関係を分析していきます。
【ポイント】ポーター教授は、どんな業界でもその平均的な収益構造は「既存企業」「新規参入」「代替品」「買い手」「売り手」という「5つの競争要因(≒プレイヤー)」の力関係によって決まると述べています。これら5つのプレイヤーたちによる「価値・利益」の奪い合いの本質を捉えるのが5フォース分析です。
5フォース分析の本質とも言える、5つの競争要因による「価値分配の流れ」について、詳しく説明していきます。
業界内の各社企業や新規参入企業、代替品が「価値」を生み出し蓄積する
自社を含めた業界内に身を置く企業たちは、製品/サービスを通して「価値」を生み出しています。もちろん、そのためにはサプライヤーも欠かせない存在であり、材料や人材の提供などを通して価値生産の一端を担っています。
また、一見すると違う製品/サービスだとしても、同じ価値を提供しているビジネスは業界にとって「代替品」と考えられ、同じ顧客を共有しています。
まずは、これらのプレイヤーたちが業界という「プロフィットプール(※)」に価値を蓄積しているイメージを持っておきましょう。
【※プロフィットプールとは?】
その業界に属するすべてのビジネスの利益額の総和のこと。参入する業界を検討する際には、プロフィットプールの大きさが一つの重要な指標といわれています。
生み出された「価値」が5つのプレイヤーに分配される
業界内に生み出された価値は、5つのプレイヤーたちにさまざまな形で分配されています。買い手(顧客)は商品を購入することで価値を享受していますし、自社・競合・代替品の各社は売上を通して利益を得ています。また、サプライヤーも業界内の企業との取引により、売上・利益を得ているわけです。
このとき、力の強いプレイヤーがより多くの価値・利益を勝ち得ることになります。つまりは、サプライヤーの交渉力が強かったり、代替品の脅威が大きかったり、競合企業が強力だったりする場合、自社が得られるパイが小さくなるわけです。
業界構造への深い洞察を得ることこそ5フォース分析の本質
この「価値の分配がどのようになされているか」こそが業界構造の本質です。それぞれのプレイヤーの力関係を理解し、業界構造の本質を掴むことが5フォース分析を行う目的だといえます。
業界の構造がわかれば、
- 自社にとってどんなチャンスがあるのか?
- 自社が持っているチャンスに活かせる強みは何なのか?
- せっかくのチャンスを逃す原因になり得るウィークポイントはどこか?
- 自社が対抗すべき脅威は何か?
- 自社はどの程度の危機に瀕しているのか?
などを理解できるでしょう。これが、正しい経営判断・戦略立案に繋がるのです。
【超実践的】5フォース分析の正しいやり方 〜前準備編・4ステップ〜
さて、ここからは5フォース分析の「実践編」として、具体的なやり方を解説していきます。まずは5フォース分析に取り掛かる前に行うべき「前準備」を4ステップで解説いたします。
【前準備①】現在どのように事業を行っているのか(戦略)を明らかにする
既存事業の場合は、まずは現在どのように事業を行っているのか、現状を明らかにすることから始めましょう。
「特に戦略なんて考えてなかった」ということもあるかもしれません。しかしその場合でも、無意識的に何かしらの戦略はとっているものです。
自社の商品/サービスのことや、それを買ってくれた顧客のことを考え、
- 顧客は「どんな人(who)」なのか?
- 顧客に「どんな価値(what)」を提供しているのか?
- その価値を「どんな商品で、どこで、どんな方法で(how)」届けているのか?
- 自社は顧客からどんなイメージを持たれているだろうか?
などを明らかにしてみましょう。それが、これまでにとっていた戦略です。
【前準備②】新しい戦略立案のための「仮説」を立てる
次に、業績アップのためにはどんな施策が有効だろうかと「仮説」を立てます。たとえば、次のような施策です。
- ターゲットとする顧客を変える
- 提供する商品を変える/アップデートする
- 商品の提供場所を変える/流通の方法を変える/ネットを利用する
- 広告宣伝の方法や媒体を変える/商品の価値の伝え方を変える
- 顧客が自社に抱いているイメージを変える(リポジショニング/ブランディング)
- コストカットする
できるだけ施策案の根拠も考えて「〇〇なチャンス(脅威)がありそうだから、△△をしたら良いのではないだろうか?」といった形で仮説を立てておくと、その後の分析がより効果的になります。
仮説なき分析は、時間ばかりかかる割に大した成果に繋がらないものです。まずは直感や予測でも構わないので戦略案を立て、それを「検証」をしていくようなつもりで分析を進めていきましょう。
【前準備③】分析の「ゴール(成果物)」を明確にする
前項であげた仮説をもとに、5フォース分析で何を明らかにしたいのか、分析の目標となる成果物を設定をします。
【分析で明らかにするべき成果物の例】
- この業界の平均的な収益率(ROI)
- この業界の平均的収益率が高い(低い)のはなぜなのか、その理由や根拠
- この業界における収益性のボトルネック
- うまくいっている企業の例
- うまくいっている企業の成功要因(ターゲティング / ポジショニング / ブランディング / バリューチェーンなど)
先に目標設定をすることで、無駄なリサーチに時間をかけることなく、成果につながる分析をスムーズに行えます。
【前準備④】PEST分析でマクロ環境を理解する
「仮説」と「目標」が決まったら分析に入っていくのですが、まずは業界分析よりも広い視野を持って「社会全体の流れ(マクロ環境)」を分析しておきましょう。新たな仮説が見つかったり、仮説の信頼性を強化できたり、業界分析実施時の見落としが減ったりするため、5フォース分析がより効果的になります。
マクロ環境分析には、PEST分析を使うのが一般的です。政治・経済・社会・技術の4つの側面から社会の「変化」を読み取り、「機会」と「脅威」を分析します。
【超実践的】5フォース分析の正しいやり方 〜実践編・7ステップ〜
前準備が完了したら、5フォース分析を始めましょう。次の7ステップで進めていきます。
【5フォース分析の進め方】
- 業界を定義する
- 業界の参加者(5つの力)を特定する
- 業界の平均的な収益性(ROI)を調べる
- 縦の軸(新規参入・競合・代替品)を分析して、影響の大きな要因を特定する
- 横の軸(買い手・売り手)を分析して、影響の大きな要因を特定する
- 5つの力から業界の収益性への理解を深める
- 自社が下すべき経営判断や取るべき戦略的ポジションなどを検討する
順に解説していきます。
【ステップ①】業界を定義する
前述の通り、最初のステップは業界を定義することです。業界を定義するときは、構造に注目します。
ある商品と別の商品が同じ業界に属するかどうかは、顧客・流通経路・サプライヤーなどが同じ(もしくは類似)していれば同じ業界に属すると考えられます。
【ステップ②】業界の参加者(5つの力)を特定する
次に、この業界における「5つの力」にあたるプレイヤーを特定します。
5つの力とは、「既存企業同士の競争」「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「買い手(バイヤー、顧客)の交渉力」「売り手(サプライヤー、供給業者)の交渉力」です。それぞれのポジションに該当する存在を具体的に特定しましょう。
【ステップ③】業界の平均的な収益性(ROI : 投資収益率)を調べる
その業界では、平均的にどの程度の収益性が見込めるのかを理解しましょう。調べる指標は「ROI(投資収益率)」です。
ROIとは「投資に対してどれだけの利益が出ているのか」を表す指標で、簡単にいえば「どれだけ効率よく稼げているか」つまりは「コスパ」です。
業界の平均的なROIは、簡易的にはGoogle検索で調べられますし、詳しく知りたいならリサーチの専門業者から調査レポートを購入しましょう。
【ステップ④】縦の軸(新規参入・競合・代替品)を分析して、影響の大きな要因を特定する
業界の平均的な収益性がわかったら、5つの力から業界構造を詳しく理解して、その理由を探っていきます。
5フォース分析の肝は、縦の軸と横の軸に分けて分析を行い、それぞれで特に影響の大きい競争要因を特定することです。まずは縦の軸を見てみましょう。
縦の軸に並んでいる、「新規参入業者」「競争業者」「代替品」は、「顧客の奪い合い」という競争関係を表しています。3つのパワーバランスを分析して、どの影響が大きいのか(新規参入がどんどん入ってくるのか、既存企業同士で価格競争や広告合戦が激しいのか、強い代替品が存在するのか)を判定します。
業界の収益性を引き下げている原因がわかれば、優先順位をつけて対応策を練ることができます。たとえば、競合や新規参入が多くてシェアが取らてしまったり、広告合戦のコストが高くついてしまったりするようなら、差別化とブランディングに力を割いて「市場で独自のポジションを得る」ことで利益率を高められるでしょう。
このように、脅威を特定して対策を立てる ことこそ、5フォース分析の実践的な活用方法です。
【ステップ⑤】横の軸(買い手・売り手)を分析して、影響の大きな要因を特定する
次に横の軸に目を移しましょう。横の軸に並ぶ「供給業者」「競争業者」「買い手」は「利益の奪い合い」という競争関係を表しています。このうち、どの影響が大きいのか(値段が安くて顧客が得しているのか、原料が高くてサプライヤーが得しているのか、業界が得できているのか)を考えます。
ここでも同様に、収益性のネックになっている要因への対抗策を考えれば、それがそのまま一つの戦略になるわけです。
たとえばサプライヤーの力が強くて圧倒的な交渉力を持っている場合、価格を抑えるために利益率を下げざるを得なくなってしまいます。この場合なら、「別の材料で同等以上の品質を維持できるように商品開発を重ねる」などといった対応策が考えられますね。
【ステップ⑥】5つの力から業界の収益性への理解を深める
5つの力分析の結果から、業界の平均的な収益性がなぜその値に落ち着いているのか考えます。他の業界と収益性を比較したり、業界構造の違いに着目することで、この業界での勝負のカギが掴めるはずです。
また、業界内で突出した利益率を上げている企業に注目するのも攻略の糸口を掴むポイントです。成功企業の戦略やポジション、5つの力に対してどのような対策を行っているのか考えてみましょう。
【ステップ⑦】自社が下すべき経営判断や取るべき戦略的ポジションを検討する
以上の分析結果と自社の強み・弱みなどを踏まえて、どんな戦略を取るべきか考えます。前述の通り、特に影響の大きな競争要因への対応策を考えれば、それが戦略の柱になるはずです。自社の事業規模なども考慮しつつ、市場を細分化して強みを活かせる差別化戦略・ポジショニング戦略を考えましょう。
【まとめ】5フォース分析は「業界の定義」
5フォース分析は、業界の収益性に影響を与える要因を5つの観点から分析する環境分析・マーケティングの手法です。業界構造を深く理解し、平均的な収益率とその理由を理解することで、戦略立案への有益な示唆が得られます。
5フォース分析をはじめ、環境分析のフレームワークやマーケティングの手法を学び、使いこなせるようになれば、自分のビジネスの成功や会社での業績アップ・昇進などに活かせます。
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【参考資料】
- マイケル・E・ポーター 著『新訂 競争の戦略』(ダイヤモンド社, 1995年)
- マイケル・E・ポーター 著『[新版] 競争戦略論I』(ダイヤモンド社, 2018年)
- ジョアン・マグレッタ 著, マイケル・E・ポーター 協力『〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房, 2012年)
- 相葉宏二, グロービス経営大学院 著『グロービス MBA 事業戦略』(ダイヤモンド社, 2013年)
- グロービス経営大学院 著『新版 グロービス MBA 経営戦略』(ダイヤモンド社, 2017年)
- 日本マーケティング協会 監修, 恩藏直人, 三浦俊彦, 芳賀康浩, 坂下玄哲 編著『ベーシック・マーケティング(第2版)』(同文館出版, 初版2010年)
- グロービス 著, 嶋田毅 執筆『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』(ダイヤモンド社, 2015年)
- 津崎盛久 著『道具としての経営理論』(日本実業出版社, 2012年)
- 金森努 著『"いま"をつかむマーケティング』(アニモ出版, 2011年)
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