マインド・仕事術

時間管理マトリックスとは? ──『7つの習慣』が説く成果・成長に導く時間の使い方を解説!

時間管理マトリックスとは、フランクリン・R・コヴィー博士による世界一売れたビジネス書『7つの習慣の中で提唱された時間管理の考え方です。コヴィー博士は従来の時間管理・タスク管理の考え方は根本的に間違っていると主張し、新たな考え方の基礎としてこの時間管理マトリックスを考案しました。

【ポイント】
従来は、いかに「効率的」にタスクやスケジュールをこなせるかが時間管理・タスク管理の命題でした。しかし時間管理マトリックスは「効率」ではなく「効果性」を重んじています本当に重要なことは何なのか、真の成功や大きな成果につながることは何なのかを見極めること、そしてそれ以外のことに使うリソースを減らすことが重要だとコヴィー博士は考えたのです。

時間管理マトリックスの考え方を理解して使いこなせるようになれば、自分の能力・才能を最大限発揮して大きな成果が望めるだけでなく、大切な人を大切にしたり、社内での信頼関係を築いたりといった「人間関係」の課題まで解決できます

そんな時間管理マトリックスの考え方やその本質に迫っていきます。

目次
  1. 時間管理マトリックスとは? ── 緊急度と重要度によるタスク管理術
  2. 時間管理マトリックスの「4つの象限」 ── 「緊急度・重要度」とは?
  3. 第II領域に注力して成果を上げるには? ── 時間管理マトリックス活用の重要ポイント
  4. 時間管理のマトリックスを使いこなすには? ── コヴィー博士が提唱する時間管理のやり方と時間管理ツール
  5. 【まとめ】時間管理のマトリックスで「本当に重要なこと」だけに集中しよう!

時間管理マトリックスとは? ── 緊急度と重要度によるタスク管理術

時間管理マトリックスとは、自分が行う活動を「緊急度」と「重要度」の2軸で4つに分類して考える時間管理法です。別名「緊急度-重要度マトリクス」とも呼ばれ、ビジネスフレームワークとしても応用されています。

(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.200

時間管理マトリックスの考え方を自分自身の価値観に深く根付かせることができれば、次のような結果につながります。

単なる「時間管理」のフレームワークでなぜこれほどまでにさまざまな効果が得られるのか、それは時間管理マトリックスの本質は「時間管理をやめること」だからです!

時間管理マトリックスは「成果」を得るための「自己管理の考え方」

冒頭で述べた通り、コヴィー博士は「『時間管理』という言葉そのものが間違っている」という考えのもと、このマトリックスを考案しています。時間管理マトリックスは、時間ではなく「自分自身」を管理する(=自己管理, パーソナル・マネジメント)ためのツールなのです!

どうして「時間管理」と「自己管理」がつながるのか、それは以下のコヴィー博士の言葉を見れば明快でしょう。

“緊急な用事が「良い」ものであっても、それを端から受け入れていたら、あなたにとって「最良」のものに手が回らなくなる。あなたにしかできない貢献ができなくなるのである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.208-209より

“自分にとって一番重要なこと、もっとも大切にするべきことを決めたら、それ以外のことには勇気を持って、明るくにこやかに、弁解がましくなく「ノー」と言えなければならない。ためらわずに「ノー」と言うためには、それよりも強い「イエス」、もっと大事なことが、あなたの内面で燃えていなくてはならない。多くの場合、「最良」の敵は「良い」である。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.208より

いくら「効率的」に物事をこなせるようになったとしても、本当に価値のあることは何なのか理解できなければ大きな成果は得られません

【ポイント】
しかも、現代のビジネスシーンは特にスピードが増すばかりで、どれだけ効率性をあげてもやることは尽きません。重要性の判断ができなければ、次から次へとやってくるやるべきことに飲み込まれ、忙殺されてしまうでしょう。そうなれば余計に判断力は低下し、緊急度の高いタスクをこなすだけになってしまうのです。

そんな状況を改善するには、もはや「効率アップ」のための「時間管理」では間に合いません。問題の根本(=自分自身)に目を向けることが必要なのです!

時間管理マトリックスは「第3の習慣」の中心概念 ── 第3の習慣とは?

時間管理マトリックスは、『7つの習慣』の「第3の習慣 最優先事項を優先する」の中で登場した概念です。第3の習慣の内容を端的にまとめるなら「正しい時間管理の考え方(=自己管理の考え方)を知って、自分の能力を最大限発揮し、成果を得ること」なのですが、時間管理マトリックスを正しく理解するためには、第3の習慣の本質を理解しておく必要があるでしょう。

それは、「第3の習慣とは、第1, 第2の習慣で身につけたことの『実践』である」ということです!

【ポイント】
「第1の習慣」では、自分の能力・才能を発揮して効果的な人生を送るための基礎となる「主体性」について説いており、その身につけ方が語られています。続く「第2の習慣」では「終わりを思い描く」ことを通して自分の本当の価値観を知り、それに基づいた「個人の憲法」として「ミッション・ステートメント」を作成します(→参考 : 第1の習慣とは?, 第2の習慣とは?

そして「第3の習慣」とは、これらを活用して成果を得るための習慣です。自らの理想を反映した価値基準である「ミッション・ステートメント」と照らし合わせて物事を判断すれば、本当に重要なものとそうでないもの、やるべきことの優先順位が判断できます。そしてそれは自らのビジョンや価値観に基づいているため、自然と主体的に取り組むことができ、自分の能力を最大限発揮できるのです(→参考 : ミッション・ステートメントとは?

このような理想的な状態を作り出すため、自分自身を管理して不要なことに「No」という、必要だとしても自分でやる必要のないことは「人に委任する」、それを可能にするための「人間関係を構築する」ことこそが第3の習慣というわけです。

そして、そんな「第3の習慣」を実践するために重要なのが「時間管理マトリックスを使いこなすこと」なのです。

時間管理マトリックスの「4つの象限」 ── 「緊急度・重要度」とは?

さて、ここからは具体的に「時間管理マトリックスの考え方とその活用」に迫っていきましょう。前述の通り、時間管理マトリックスは「緊急度」と「重要度」という2軸により4つの象限に分けられています。

(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.200

緊急度の高い活動とは、今すぐ取り掛からなければならない活動です。わかりやすいのは締め切りや提出期限が迫った書類・原稿などですね。あるいは、掛かってきた電話に対応することも、夕飯の材料を買いに行くことも緊急度の高い活動です。

【ポイント】
私たちは緊急度の高いタスクに敏感で、反射的に「すぐやらなければ!」と考えてしまいます。しかしながら、自分の価値観に照らし合わせてよく考えてみれば緊急性の高い用事の中にはそれほど重要じゃないものも多いことがわかるはずです。緊急度ばかりに目をとらわれて反応するのではなく、重要度を考えることが大切なのです。

それでは、重要度の高い活動とは何なのでしょうか。それは、結果・成果に関係する活動です。また、長期的な視点で考えたときにより良い結果をもたらすような自己投資であったり、他人との信頼関係の構築だったりといった活動も含まれます。

【ポイント】
コヴィー博士は、「成果(Production)」と「成果を生み出す能力(Production Capability)」のバランスのことを「P/PCバランス」と名づけ、これを適切に保つことが非常に重要だと述べています。目の前の「成果(P)」ばかりに目を向けるのをやめ、先を見越して「能力(PC)」を高める活動にリソースを投資することでより大きな結果を手にできるのです!

これを踏まえて、時間管理マトリックスの4つの象限を見ていきます。

第1 象限(第I領域) : 緊急かつ重要なこと

第1象限は「緊急かつ重要なこと」の領域です。これをコヴィー博士は「第I領域」と呼んでいます。

【ポイント】
第I領域に属する活動は「危機」や「問題」にあたるものです。私生活でもビジネスでも、どうしてもやらなければならない重要で緊急な活動は多いものです。第I領域は意識しなくても膨れがちなのです

第I領域は基本的に必ずクリアしなければならない活動ですが、ここで大切なのは「いかにして第I領域の侵食を食い止めるのか」=「第I領域の活動を減らしていくのか」です。なぜなら、第I領域ばかりに時間や労力を割いていては、積み重なった問題に押し潰されてしまうからです。

第I領域が膨れてしまうと、ストレスが溜まる、燃え尽きてしまう、危機管理や火消しに奔走してばかりになってしまうなどの弊害がある。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.202

久保真介
久保真介
そうなると、ストレスが大きくなり、次に説明する「第IV領域」に逃げ込むことになってしまうのです。

第4 象限(第IV領域) : 緊急でないうえに重要でもないこと

第IV領域は「緊急でないうえに重要でもない」こと、つまりは「無駄」なことです。つまりは、意味もなくSNSやテレビ、YouTubeなどをダラダラ眺めたり、誰かに仕事の愚痴を垂れながら晩酌したりといったことですね。

第IV領域の活動が無駄で自分のためにならないことは、誰しもが認識しています。それなのについこの領域に逃げ込んでしまう人が後を絶たないのはなぜでしょうか。それには大きく2つの理由があります。

1つ目は先ほど説明した通り、押し寄せる第I領域の問題によるストレスです。ストレスで「意志の力」が弱くなってしまい、魅力的な第IV領域に浸ってしまうのです。

そしてもう1つの理由は、自分の中に「強いYes」がないことです。これはつまり、自分が目指すべき目的地、こうありたいという理想像が描けていないせいで、達成したい目標もなく、自分の為になるとわかっている活動へのモチベーションが湧いてこないということです。

この状況を改善していくことが、人生の成功には欠かせません。第IV領域を「自発的に削りたくなる」状態を作ることが必要なのです。

第3 象限(第III領域) : 緊急だが重要ではないこと

第III領域は「緊急だが重要ではない」ことです。これは言うならば「見せかけ」の領域です。

【ポイント】
第III領域に属することは、結果にはあまり影響しないのに自分の時間を使わなければならないことです。たとえば次のようなことです。

  • 必要だと思い込んで取り組んでいるが、業績にはつながらない書類やデータの細かな整理
  • やっておいた方が良さそうだからと何となく通っている英会話教室
  • 形式的にやっているだけの中身のない会議
  • 本来は自分がやる必要のない頼まれごと
  • 意味のない接待や付き合いの飲み会

このような活動は「第I領域」と勘違いしやすいため、自分の時間や労力を注ぎ込んでしまいがちなのです。

このような第III領域の活動は、第IV領域と同じく成果・成長には一切繋がりません。これらの領域ばかりに時間を使っていると、他人や自分の人生に対して無責任な生き方になってしまうのです。

見せかけの領域である第III領域にばかり時間を使ってしまうと短期的な視野に陥りやすく、目標達成ができなくなったり、八方美人になったり、周りに振り回されてばっかりになって被害者意識に苛まれたりといった弊害がある。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.203

第III, 第IV領域ばかりに集中していると、基本的に自分や他人に対して無責任な生き方になってしまう。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.203

第2 象限(第II領域) : 重要だけど緊急ではないこと

そして重要なのが第II領域、つまり「重要だけど緊急ではない」活動です。コヴィー博士は、この領域を「自己管理の鍵を握る領域」だと述べています。

“第Ⅱ領域は、効果的なパーソナル・マネジメントの鍵を握る領域である。この領域に入るのは、緊急ではないが重要な活動である。人間関係を育てる、自分のミッション・ステートメントを書く、長期的な計画を立てる、身体を鍛える、予防メンテナンスを怠らない、準備する。こうした活動はやらなければいけないとはわかっていても、緊急ではないから、ついつい後回しにしてしまうことばかりだ。効果的な生き方のできる人は、これらの活動に時間をかけているのである。
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.204-205より
(※黄色の下線は本メディアで編集)

第II領域に入る活動はすぐには成果を得られないが、長期的な視点で見ると成果を生み続けること、つまりは投資です。これは何も、資格の勉強などといった「自己投資」だけには限りません。

  • 自分自身の能力を磨き、より高い成果を上げられるようにする
  • 上司や部下、取引先との良好な人間関係を築いてより良い仕事ができるようにする
  • 配偶者や子供との関係をより良いものにして、リラックスして充実した家族の時間を過ごすとともに、仕事に対しても応援してもらえる環境を育む
  • 身体を鍛えて病気を予防するとともに、体力をつけてパフォーマンスを向上する
  • 仕事道具や家財をメンテナンスして、より長く、より心地よく使えるようにする

このように、他人との関係性なども含めたあらゆる面での「成果を生み出す能力(PC)」を育む活動が第II領域なのです。

第II領域は自分のビジョンや価値観に沿った領域なので、この領域に集中していると人生のバランスが良くなり、良質な人間関係や成長が得られる。そしてそれは、問題が起こったときに対応できる力にもなり、人生をコントロールできるようになる。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.204

久保真介
久保真介
そしてコヴィー博士は、一番の投資は「人間関係への投資」だということを『7つの習慣』全体を通して語っています。以下の記事でも詳しく触れていますので、ぜひあわせて読んでみてください!

第II領域に注力して成果を上げるには? ── 時間管理マトリックス活用の重要ポイント

未来投資である第II領域が重要というコヴィー博士の指摘は、誰しも共感・納得できるものです。ただし、それはわかっているけど、実際にやるのが難しいものですよね。そこで大事になってくるのが第1の習慣, 第2の習慣です。

第II領域に注力する「意志力」を身につけるには第1、第2の習慣の土台が不可欠

コヴィー博士は、時間管理マトリックスの価値を理解し、第3の習慣を実践するためには、前述の通り「第1と第2の習慣の土台が不可欠」です。以下の記述は、そのことをわかりやすく示しているでしょう。

第1の習慣が「あなたがプログラマーである」、第2の習慣が「あなたがプログラムを書く」ことだとすれば、第3の習慣は「あなたがプログラムを実行する」あるいは「プログラムどおりに生きる」ことである。プログラムのとおりに生きるには、意志、自制心、誠実さ、決意が要る。さらに、短期的な目標とスケジュールだけでなく、あなたの目標やスケジュール、生き方そのものに意味とつながりを与える正しい原則、あなたのもっとも深い価値観に従って生きる覚悟も要るのである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.224-225より
(※黄色の下線は本メディアによる編集)

この指摘からわかる通り、プログラムを「実行・実践」をするためには自らがプログラマーになり、自分用のプログラムを書き上げることが必要です。それが第1 , 第2の習慣というわけです。

つまり、主体的なパラダイムを手に入れ、自分の価値観を深く理解し、それに沿ったミッショ・ステートメントを作り上げることではじめて第II領域に集中できる土台が整うわけです。

久保真介
久保真介
本記事では、これらについての詳細は割愛させていただき、土台を整えたうえでどのようなことを行っていくべきかを解説していきます。第1, 第2の習慣についてはぜひ以下の記事を読んでみてください!

第II領域を広げていく方法 ── その他の領域の活動を減らしていく

第II領域にフォーカスし、この領域を広げていくためには、当然その他3つの領域を減らしていく必要があります。まず取り組むべきは、第III, 第IV領域の排除です。

第III領域・第IV領域は基本的に生活から排除する

第III, 第IV領域は「重要ではない」ことです。したがって、これらの領域に属する活動には自分の意志で持って「No」を言うことが大切です。

第IV領域を減らすには、自分の価値観に沿った活動に集中し、ストレスを減らしていくことが求められます。つまりは、自らの「主体性」で持って自分自身や環境を変えていき、ミッション・ステートメントの通りに生きようとすることです。

第III領域を減らす方法も基本的には同様です。ただし、この領域に属する活動は「緊急性は高い」ことなので、気をつけていないと「反射的に」反応してしまいます。常に効果性・重要性を考えるという「第II領域のパラダイム」を自分の根底に根付かせる必要があるでしょう。

第I領域はできるだけ人に委任する

もっとも減らしにくいのは第I領域です。第I領域に属するタスク・スケジュールは、必ず誰かが片付ける必要があります。そこで大切なのが「その仕事は本当に自分がやるべきなのか?」という視点です。

たとえば、毎日の食器洗いや洗濯物干しは食洗機や洗濯乾燥機を導入すれば時間を短縮できますね。このように機械で効率化して簡単に自分のリソースを空けられることは、積極的に実践すべきでしょう。

また、ビジネスでは「部下や外注先の人たちとどのような関わり方をすれば、その効果性を最大限発揮できるのか?」と考えることが大切です。

【ポイント】
もしあなたが「一から十まで指示を出して、きちんとその通りにできているのか監督する」などといった「使い走りのデリゲーション(委任)」をしているのなら、それは結局自分で仕事をしているのと同じです。自分の第I領域を減らせていないのです!

これではもしあなたや部下が優れた能力を持っていたとしても、それぞれの力を十分に発揮できません。単純な足し算以下の結果に終わってしまうのです。

本来、組織で仕事をすると言うのは「能力やリソースを掛け算して、1人では到達できない成果を得ること」です。足し算の考え方は捨てて、掛け算の関係性を築く必要があります。したがって、部下や外注先との協力関係を深めて「それぞれが自らの主体性を活かせる環境をマネジメントする」ことが大切なのです。

この「使い走りのデリゲーション」とは対照的な考え方 ── 「全面的なデリゲーション」 ── については解説し出すと長くなってしまうため、詳細は以下の記事に譲ります。

時間管理のマトリックスを使いこなすには? ── コヴィー博士が提唱する時間管理のやり方と時間管理ツール

ここまでの解説からわかる通り、時間管理マトリックスは単なる時間管理やタスク管理のツールではなく、時間の効果的な使い方に関する考え方の基本を示したものです。その根底には「主体性、ミッション・ステートメント、相互依存」などといった「7つの習慣」の理論が根差しており、それらを「実践する」ためのツールなのです。

このことがわかっていれば、タスク管理やスケジュール管理のやり方は根本的に変わるはずです。具体的な「実践方法」を紹介しましょう。

スケジューリングは「1週間単位」が基本!

まず時間管理の基本として、コヴィー博士は「計画は1週間単位で立てよ」と提唱しています。なぜなら、人間社会は基本的に1週間単位で物事を考えるようにできているからです。

“私は、一週間単位で計画を立てるのが一番よいと思う。必要なら一日単位で修正し、優先順位を入れ替えることもできるが、あくまでも週全体の計画を立てることがポイントである。
 週単位で計画を立てると、一日単位で計画するよりもはるかにバランスがよくなり、流れもスムーズになる。人間の社会はおおむね、一週間は一まとまりの完結した時間として認識されているようである。会社や学校など社会の多くの活動が一週間を単位にしており、一週間の何日か集中して活動したら休むというリズムで社会は動いている。

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.217より
(※黄色の下線は本メディアによる追記)

時間管理の単位として1日ではなく1週間を提唱しているのは、コヴィー博士だけではありません。たとえば、タイムマネジメント技術として世界的に有名な手法「GTD(Getting Things Done)」を生み出したデビッド・アレン氏もそのひとりです。アレン氏は、1週間に一度「週次レビュー」を行い、管理システム全体を見直して最新の状態に整えることが時間管理のカギだと述べています。

久保真介
久保真介
GTDは、慣れないとやや難しい手法ですが、コヴィー博士の理論を実践するシステムとしてとても相性が良く、使いこなせればかなり優秀です。本メディアでも、また後日取り上げたいと思っております!

1週間単位で目標ややるべきことを考え、あらかじめ第II領域のためにスケジュールを確保しておくことで、バランスの取れたライフスタイルになるのです。

第II領域を中心とした計画の立て方4ステップ

コヴィー博士は、第II領域を中心として1週間の計画を立てるやり方を、具体的に4ステップで解説しています。

【ステップ①】役割を明確にする ── カテゴリ

まずは、自分にとって重要な「役割」を明確にします。次の1週間を見通して、会社、家庭、コミュニティなどさまざまな分野で自分が果たしている役割、自分が負っている責任などを紙に書き出してみましょう。たとえば、次のようにです。

  • 自己管理
  • 〇〇の夫 / ▲▲,□□の親
  • 美容室「××××」の店長(経営)
  • 美容室「××××」の店長(部下のマネジメント)
  • 美容室「××××」の店長(技術者)
  • ブログ「△△△△」の運営者
  • 〇月〇日実施の同窓会幹事

ミッション・ステートメントを作ってあるなら、それが参考になるはずです。ただし、スケジュール管理をするうえでは、あくまでも「次の1週間」だけを考えて、その中で果たすべき役割を考えれば十分です。

役割を明確にしておくことで、バランスを考えながらこの1週間の目標や重視すべきことを考えられるのです。

【ステップ②】目標設定 ── 各役割で達成したい成果を設定する

次に、ステップ①で挙げたすべての役割について、それぞれで達成したい具体的な「成果」を1つか2つずつ挙げていきます

まずは第I領域のやるべきことを抜け漏れなく書き出し、次に第II領域でやりたいことを書き足します。できれば、ミッション・ステートメントと直接結びつくような、自分にとって非常に価値深い活動も1つは設定するようにしましょう。

【ステップ③】スケジューリング ── やるべきことを1週間に割り振る

ステップ②で決めた目標を念頭に置いてやるべきこと(タスク, ToDo)をリストアップし、1週間の予定表に割り振っていきましょう。

【ポイント】
ここで設定した事項は「優先事項」です。これらの予定は「約束ごと」として動かさないのを基本スタンスとすることで、効果性重視の生活が送れます。

実践例としては、手帳やタスク管理アプリなどを利用して、次のように管理すると便利ですね。

時間管理ツールは「1週間の目標」「習慣スケジュール」「デイリースケジュール」が見渡せるものにすると使いやすい。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.226-227

また、このステップでカレンダーや備忘録なども確認して、人との約束も忘れず書き入れるようにしましょう。

久保真介
久保真介
この際、目標設定を省みて「本当にそのスケジュールを予定に入れるべきかどうか」と再考すると良いですね。改めて考えてみたときにそれほど重要ではないと思えたなら、別の日に移すかキャンセルを検討しましょう。

【ステップ④】1日単位の調整 ── 今日のスケジュールを考える

1週間の計画が事前に考えてあれば、今日(あるいは明日)のスケジュールはやるべきことに優先順位をつけ、どの時間にやるのか決めるだけで済みます。

もちろん、急な用事や体調不良などで、スケジュールを変更せざるを得ない場合はあります。しかしながら、そのような場合も「ミッション・ステートメントとそれに基づいた今週のスケジュール」という基準があれば、それと照らし合わせながら物事を合理的に判断できるのです。

久保真介
久保真介

つまり、割り込みタスクに「反射的に対応する」のではなく、すでに考えてある「重要性の高いタスク・目標」と比較したうえで「やるべきか・やらないべきか」あるいは「やるとして、いつやるべきか」を考えられるようになるわけですね。

すると、第I領域の用事で一杯一杯になったり、第III領域の活動に惑わされたりしなくなるのです。

使用するツールは手帳でもアプリでも好きなものでOK ── 本質を理解してカスタマイズする

コヴィー博士の時間管理は、基本的には好きな手帳やスマートフォンのタスク管理アプリ、カレンダーアプリなどを使って実践できます。ただし、ある程度カスタマイズできて、以下の条件を満たせることが条件です。

なお、「7つの習慣を実践するためのツール」として、コヴィー博士公式という形で「フランクリン・プランナー」という手帳も販売されています。こちらの商品を使ってみるか、あるいはこれを参考にしながら好みのアプリを自分好みのツールに仕上げるのがおすすめです。

【まとめ】時間管理のマトリックスで「本当に重要なこと」だけに集中しよう!

時間管理マトリックスは「緊急度-重要度マトリクス」とも呼ばれ、コヴィー博士の「7つの習慣」のうち「第3の習慣 最優先事項を優先する」を理解するうえでの中心概念です。緊急性と重要性の2軸で活動を分類して、本当に重要な活動のみにフォーカスする「第II領域のパラダイム」を与えます。

時間管理マトリックスはただそのフレームワークを知ることではなく、その根底にある「7つの習慣」の考え方全体を知ることが何より重要です。コヴィー博士の理論を実践して、効果的な人生を送るための「自己管理(時間管理)のやり方」を与えてくれるのがこのマトリックスであり、第3の習慣なのです。

ビジネス書として正解一売れたベストセラーである『7つの習慣』は、ビジネスでの成功はもちろん、自分らしい生き方や大切な人に囲まれた人生を送るためにも大切な「人の本質」を説いた一冊です。ぜひ一度読んでみてください!

久保真介
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