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『7つの習慣』徹底解説③ ──「第3の習慣 最優先事項を優先する(重要事項を優先する)」とは?

自分自身を成長させたり、何かで成功を収めたりするためには、当然なんらかの「行動」が必要となります。そして自分のためになる行動をするためには、忙しいなかうまくスケジュールを管理して時間を捻出することや、だらけたくなる自分を律してやるべきことに取り組むことなど、セルフマネジメントの力が欠かせません。

そんな「時間管理・自己管理」の考え方と方法論を説いたのが『7つの習慣』の3つ目、第3の習慣「最優先事項を優先する」です。

  • 私的成功
    • 第1の習慣 : 主体的である(詳細
    • 第2の習慣 : 終わりを思い描くことから始める(詳細
    • 第3の習慣 : 最優先事項を優先する(←イマココ
  • 公的成功
    • 第4の習慣 : Win-Winを考える
    • 第5の習慣 : まず理解に徹し、そして理解される
    • 第6の習慣 : シナジーを創り出す
  • 最新再生
    • 第7の習慣 : 刃を研ぐ

「第3の習慣」は、「7つの習慣」のうち「私的成功」に関わる3つの習慣の最後の1つに位置します。「時間管理」や「自己管理」に関わり、自分自身をマネジメントして、望んだ通りの効果的な生き方を実現することを目的とします。

【ポイント】
この第3の習慣では、時間管理のマトリックスという重要なフレームワークが登場します。これをもとにしてスケジュール管理やタスク管理への向き合い方を変えることで、業績の向上や良質な人間関係の構築、自分自身の成長などといった個人的な結果・成果を手にするのが第3の習慣なのです!

『7つの習慣』徹底解説シリーズ、第3回となる今回は、そんなコヴィー博士の第3の習慣「最優先事項を優先する」を読み解いていきます。

(関連記事)『7つの習慣』総まとめ ── 世界一の自己啓発本のエッセンスをまとめて解説!(※近日公開)

目次
  1. 第3の習慣「最優先事項を優先する(重要事項を優先する)」とは?
  2. 時間管理の4つの世代 ── 従来の時間管理の欠点と新世代の考え方
  3. 時間管理のマトリックスとは? ── 最優先事項を優先するための考え方
  4. 第II領域を増やすには「デリゲーション」が重要!── 効果的に時間を使って成果を生み出す方法
  5. 第3の習慣の本質 ── 第II領域に生きるとは「他人との信頼関係」の中で成果を上げること
  6. 第3の習慣を活用する方法 ── 自己管理・時間管理の実践方法
  7. 【まとめ】第II領域のパラダイムを手に入れて生産性を高めよう!

第3の習慣「最優先事項を優先する(重要事項を優先する)」とは?

第3の習慣「最優先事項を優先する」とは、簡単にまとめるなら「物事の優先順位や正しい時間管理・自己管理の考え方を知り、意志の力を発揮して、自らが持つ能力を最大限発揮するための方法論」です。

【ポイント】
第3の習慣は、第1, 第2の習慣で身につけたことを「実践」して、実際に「成果」を得るための習慣です。第1の習慣を「自分自身の人生は自分でプログラミングできると知る」、第2の習慣は「良いプログラムを書く」ことだとすると、第3の習慣は「自分で書いたプログラムを実行する術を身につける」ことだと言えます。

自らをマネジメントする方法を学び、ミッション・ステートメントで定めた通りの人生を作り上げていくのが第3の習慣なのです!(→参考 : >(→参考 : 第1の習慣とは?, 第2の習慣とは?))

第3の習慣を身につけることで、「いま本当にやるべきことは何なのか?」あるいは「自分の為になることにリソースを集中するためにはどうすればいいのか?」などといった疑問への答えがわかります。

第3の習慣「最優先事項を優先する」とは、より良い選択肢を見極め、適切な時間の使い方を判断できるようになり、自分の為にならないことには「No」を言える「意志の力」を身につけるための、セルフマネジメントの習慣なのです!

「最優先事項」とは「もっとも効果性の高いこと」である

コヴィー博士が言う「最優先事項」とは、単に「すぐにやるべき急ぎの用事」などを表すわけではありません。

【ポイント】
最優先事項とは、自分が望んだ「理想的な終わり(=目的,理想像)」に到達するために、いまやるべき最も効果的なことを意味します。

「緊急性」や「効率」ではなく「効果性」を考えることこそが時間管理の要であり、第3の習慣のポイントなのです!

「時間」ではなく「自分自身」を管理する ── パーソナル・マネジメントの原則

第3の習慣では第1, 第2の習慣の実践として「スケジュールや行動、タスクの管理」つまりは「時間管理」を中心に扱います。しかしコヴィー博士は、「時間管理」で一番大切なことは「時間管理という考え方を捨てること」だと語ります。

“「時間管理」という言葉そのものが間違っているという考え方だ。問題は時間を管理することではなく、自分自身を管理することだからだ。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.198より

コヴィー博士は、時間管理の本質は「優先順位をつけ、それを実行する」ことに尽きると言います。つまり、

  • 本当にやるべきことを見極めること
  • やるべきことの優先順位をつけること
  • 意志の力を発揮して、やるべきことを実行すること

という「セルフマネジメント」こそが「時間を有効活用するための最良の方法」なのです!

第3の習慣は「個人的な結果」に繋がる ── 第3の習慣の5つのメリット

第3の習慣を実践すれば、次のようなメリットを得られます。

  • 本当に「重要なこと」は何なのかがわかる
  • 自分の「意志の力」を活用できるようになる
  • 優先度の低いことに「ノー」と言えるようになる
  • 忙しくて家族や友人を蔑ろにしてしまう状況を改善できる
  • 部下や子供の主体性と能力を伸ばし、信頼して任せられるようになる
  • 自分と身の回りの人たちの能力を最大限発揮して、最大の成果が得られるようになる

このように、第3の習慣は「私的成功」の成果を得るための具体的方法論なのです!

時間管理の4つの世代 ── 従来の時間管理の欠点と新世代の考え方

第3の習慣の要となるのは、「時間管理のマトリックス」という考え方です。これは物事を「緊急度」と「重要度」から4つに分類して捉え、自分の時間を使うべきこととそうでないことを明らかにします。

(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.200

コヴィー博士はこの時間管理のマトリックスを「第4世代の時間管理」と呼んでいます。まずは従来の時間管理の考え方 ── 第1世代〜第3世代の時間管理 ── について簡単に解説しましょう。

従来の時間管理の考え方 ── 第1世代〜第3世代の時間管理

コヴィー博士は、従来の時間管理やタスク管理の考え方を「第1世代」「第2世代」「第3世代」と分類しました。次の通りです。

  • 第1世代 : メモやチェックリストによる時間管理。やるべきことを忘れないようにと工夫する
  • 第2世代 : 予定表やカレンダーによる時間管理。やるべきことを時間軸の中で管理することにより、より正確なスケジュールの管理・予測ができるようになる
  • 第3世代 : 優先順位と価値観の明確化。価値観に沿った目標設定と優先順位づけをしようという視点が加わり、より効率的なスケジュール管理を目指している

第1, 第2, 第3世代と時間管理の考え方が進歩するにつれてやるべきことを効率的にこなせるようになり、責任感のある行動が取れるようになります。しかしながら、コヴィー博士は第3世代の時間管理の問題点を次のように指摘しています。

“第三世代の波は時間管理の分野を飛躍的に進歩させた。しかし、効率的なスケジュールを組んで時間を管理する方法が、むしろ非生産的になっていることに私たちは気づき始めている。効率性だけを追求していたら、豊かな人間関係を築いたり、人間本来のニーズを満たしたり、毎日の生活の中で自然と生まれる豊かな時間を素直に楽しんだりする機会が奪われてしまうのだ。
 その結果、多くの人は、一分の隙もないスケジュールに縛られるような時間管理のツールやシステムに嫌気がさしてしまった。
そして彼らは、人間関係や自分の自然なニーズ、充実感の得られる人生を選ぼうと、第三世代の長所も短所も全部放り出し、第一世代か第二世代の時間管理テクニックに逆戻りしたのである。”

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.198より
(※ 黄色の下線は本メディアにて追記)

そこでコヴィー博士が提唱するのが第4世代の時間管理──これまでの時間管理とは根本的に違った考え方の時間管理──の方法です。

第4世代の時間管理 ── 大切なのは「効率性」ではなく「効果性」

コヴィー博士は、「時間管理」というもの自体に疑問を投げかけます。つまり、前述した「そもそも時間を管理して効率化しようとすること自体が間違っているのではないか?」という考え方こそが第4世代の時間管理です。

【ポイント】
そもそも時間管理をする目的は「成果を上げるため」ですが、コヴィー博士は成果を上げるには「効率性」よりも「効果性」が大切だと指摘します。スケジュールをうまく管理して効率的に物事をこなしていこうとするのではなく、自分自身を管理して意志の力を高めるとともに、本当にやるべき重要なことは何か見極めて自分の大切なリソースを成果に直結する活動のみに使ってくことが大切と考えたのです!

そんな第4世代の時間管理の中心をなす考え方 ── そして第3の習慣で最も大切な概念 ── それがこの章の冒頭でお伝えした「時間管理のマトリックス」なのです!

時間管理のマトリックスとは? ── 最優先事項を優先するための考え方

時間管理マトリックスは「緊急度-重要度マトリックス」とも呼ばれ、以下の図はように緊急度重要度の2軸で活動を4つの象限に分類します。

(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.200

緊急の活動とは、名前の通り今すぐに取り掛かるべきタスクです。たとえば、かかってきた電話に出ることや、上司に「これ、すぐにやっておいて!」と頼まれた仕事などが属します。あるいは、今日の夕飯のための買い物であったり、リアルタイムで試聴したいテレビドラマを見ることだったりも緊急性の高い活動と言えますね。

それに対して、重要な活動とは結果に直結するタスクです。仕事面だけに限らず人間関係の構築や自己投資なども含め、自分の価値観やミッション、目標などに関わることが重要度の高い活動と言えます。

時間管理マトリックスの4つの領域

あらゆる活動を緊急度と重要度によって分類すると、次の4種類に分けられます。

  • 第I領域 : 緊急でかつ重要なこと(問題・危機の領域)
  • 第IV領域 : 緊急でも重要でもないこと(無駄の領域)
  • 第III領域 : 緊急だけど重要でないこと(見せかけの領域)
  • 第II領域 : 緊急ではないけど重要なこと(成長と成果の領域)

第I領域に含まれる活動、つまり「緊急で重要なこと」とは、一般的に「問題」や「危機」にあたるものです。仕事、私生活、人間関係のいずれにせよ、もしそれをやらなければ生活の中で支障が発生してしまうことがここに含まれます。

【ポイント】
したがって、第I領域に含まれる活動は必ず取り組まなければなりません。しかし気をつけなければならないのは、周到に気をつけていない限り、往々にして第I領域は膨らみ続けてしまうということです。

自らの重要度の物差しを明確にして本当に重要なことなのかを見極める、また第I領域の活動を人に委任するなどの対策をしない限り、膨張し続ける第I領域にスケジュールが埋め尽くされてしまうのです!

そのようにしていつも第I領域の問題ばかりに対処していると、次第にストレスが溜まってしまいます。そうなってしまえば、仕事終わりには第IV領域、つまり「緊急でも重要でもないこと」に逃げ込んでストレス発散するしかありません。つまりは、テレビやYouTubeをダラダラ観たり、お酒を飲み明かしたり、といった無駄な時間の過ごし方をしてしまうわけです。

また「緊急だが重要ではないこと」、つまり第III領域は見せかけの領域と呼ばれます。ここに含まれる用事は「人からの頼まれた雑用」や「意味のない接待や付き合いの飲み会」などといった、成果には結びつかないものの「一見すると第I領域と勘違いしやすい活動」です。第III領域は「他人のためだけに自分の時間を無駄にするような活動」であり、意志の力で持って「No」を言わなくてはならないのです。

第II領域に集中することこそ自己管理の目的!

ビジネスにしても人生にしても、成功を求めるのであれば「無駄の領域」である第IV領域や「見せかけの領域」である第III領域はできるだけ削っていく必要があります。また、第I領域ばかりに消耗しているのも望ましくありません

前述の通りストレスが増えて意志の力が弱まり、第IV領域に逃げ込んでしまう原因になるということもありますし、それ以前に第I領域ばかりに対応していては効果性を高めることができません。そう、自身の効果性を高めて卓越した成果をもたらすのは「重要だけど緊急ではないこと」、つまり第II領域なのです!

コヴィー博士は、第II領域の重要性を次のように語っています。

“第Ⅱ領域は、効果的なパーソナル・マネジメントの鍵を握る領域である。この領域に入るのは、緊急ではないが重要な活動である。人間関係を育てる、自分のミッション・ステートメントを書く、長期的な計画を立てる、身体を鍛える、予防メンテナンスを怠らない、準備する。こうした活動はやらなければいけないとはわかっていても、緊急ではないから、ついつい後回しにしてしまうことばかりだ。効果的な生き方のできる人は、これらの活動に時間をかけているのである。
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.204-205より
(※黄色の下線は本メディアで編集)

コヴィー博士の言葉からわかる通り、第II領域とは「未来投資の領域」であり「成長と成果の領域」です。すぐに快楽は得られないし、成果にも繋がらないことですが、長期的な視点で見れば一番リターンの大きな領域です。たとえば、次のようなことが第II領域に含まれます。

  • 自分自身の能力を磨き、より高い成果を上げられるようにする
  • 上司や部下、取引先との良好な人間関係を築いてより良い仕事ができるようにする
  • 配偶者や子供との関係をより良いものにして、リラックスして充実した家族の時間を過ごすとともに、仕事に対しても応援してもらえる環境を育む
  • 身体を鍛えて病気を予防するとともに、体力をつけてパフォーマンスを向上する
  • 仕事道具や家財をメンテナンスして、より長く、より心地よく使えるようにする

このように、他人との関係性なども含めたあらゆる面での「成果を生み出す能力」を育み、効果性を高めて未来の成果を最大化してくれる活動が第II領域なのです!

久保真介
久保真介
つまり第II領域にできる限りのリソースを集中投下することが成功の鍵になるのです!

第4世代のセルフ・マネジメントの五つの利点

時間管理マトリックスを中心に据え、第II領域に集中しようという第4世代の時間管理の考え方は、「人はモノよりも大切である」という大原則に則しています。「自分自身の効率性をいかにして高めるのか」という考え方ではなく、自分の能力を高めたり、他人とWIN-WINでシナジーを発揮できる関係性を築き上げたりすることで、より大きな成果を生み出していこうという考え方を基盤にしています。

そんな第4世代の時間管理には、次のようなメリットがあります。

第4世代の時間管理は、自分の主体性でもって「本当に大切なことだけに時間を使おう」という言わば当たり前の自然の原則に則った考え方です。だからこそ自分の良心、自分の本心、自分の価値観に沿った計画が立てられます。それは第2の習慣で作ったミッション・ステートメントやそれをもとに立てた目標と一致するものであり、仕事や金銭面だけではない、全体のバランスが取れた生き方を可能にしてくれます。

また、第4世代の時間管理は1日1日を細かくスケジュール管理しようという考え方ではなく、1週間単位でスケジュールを立てていきます。これが視点を広げ、自分が担っているさまざまな役割それぞれの責任を果たし、望んだ自分へと近づいていくことへと繋がっていきます。

時間管理マトリックスをもとにした「第4世代の時間管理」は、ロードマップではなくコンパスです。常に正しい方向を指し示しているので、たとえ予想外の事態が発生して予定していたスケジュールの通りにならなくなったとしても、自信を持って最善な選択ができるようになります。

第4世代の時間管理とは、自ら定めたミッション・ステートメントを実行するために自分自身をマネジメントする方法論なのです!

第II領域を増やすには「デリゲーション」が重要!── 効果的に時間を使って成果を生み出す方法

第4世代の時間管理の肝は、「いかにして第II領域を増やすのか?」と考えることです。いかにしてその他の領域に属する活動を減らし、第II領域に集中できるかが「自身が望んだ生き方」を実現する鍵になるのです!

まず、立てた優先順位が「頭と心に深く根差している」ことが大切

第II領域に集中するためには大前提として、本当に重要なこととは何か、正しく見極める力が必要です。そのためには、第1, 第2の習慣を実践して「自分の価値観」を明確にしておくことが肝心です。つまり、ミッション・ステートメントを作成して、それを自分の判断基準の中心に据えるということです!

コヴィー博士は、次のような言葉を残しています。

“私は、いろいろな組織やグループにコンサルティングの仕事をするとき、自分の時間と人生を効果的にマネジメントする方法は、バランスよく優先順位をつけ、それを実行することだと教えている。それから次のような質問をする。「次の三つのうち、あなたの一番の弱点はどれだろう? ①優先順位を決められない ②優先順位に従って計画を立てられない、または計画しようという意欲がない ③計画に従って行動するように自分を律することができない」
 するとほとんどの人は、一番の弱点は三番目だと答える。しかしよく考えてみれば、そうではないと私は思う。根本的な問題は、彼らの言っている「優先順位」が頭と心に深く根づいていないことだ。要するに、第2の習慣がしっかりと身についていないのである。”

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.211より
(※ 黄色の下線は本メディアによる編集)

さらには、次のようにも述べています。

第3の習慣を身につけるには、第1と第2の習慣の土台が不可欠である。自分の主体性を意識し、それを育てていかなければ、原則中心の生き方はできない。自分のパラダイムを自覚し、それをどのように変えれば原則に合わせられるかを理解して初めて、原則中心の人生を生きられる。あなた独特の貢献をありありと思い描きフォーカスすることができなければ、原則中心の人間にはなれない。
 しかし、これらの土台を築けたなら、自分自身を効果的にマネジメントする第3の習慣を実践することによって、あなたは毎日、原則中心の生き方ができるようになる。”

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.193より
(※ 黄色の下線は本メディアによる編集)

このように、第1の習慣で身につけた「主体性」と第2の習慣で作成した「ミッション・ステートメント」によって自らの人生に対してリーダーシップを発揮できるようになってこそ、効果的なセルフマネジメントが可能になるのです。

価値観に根差した生き方は第III, 第IV領域を自然と最小化する

ミッション・ステートメントを作成し、目指すべきゴール、理想的な生き方、本当に大切にしたいものが明確になっていれば、第III領域、第IV領域は自然と減らせるはずです。なぜなら、それこそが自分にとって最良の選択肢だと自信を持って言えるからです。

“自分にとって一番重要なこと、もっとも大切にするべきことを決めたら、それ以外のことには勇気を持って、明るくにこやかに、弁解がましくなく「ノー」と言えなければならない。ためらわずに「ノー」と言うためには、それよりも強い「イエス」、もっと大事なことが、あなたの内面で燃えていなくてはならない。
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.208より
(※ 黄色の下線は本メディアによる編集)

ここでポイントは、単に意志の力で自分の欲望に打ち勝つのではないということです。

【ポイント】

第1, 第2の習慣を正しく実行できていれば、自分を成長させ、望んだ結果に近づいていくための道筋がワクワクするものになるはずです。いうならばRPGのゲームをプレイするように、自分の人生における困難や日々の自己投資にも楽しさを見出せるはずなのです!

自分の目指すべきゴールが明確になっていなかったり、自分の価値基準・判断基準が不明瞭だったりすれば、常に最良の選択肢を選ぶことは叶いません。コヴィー博士も次のように述べています。

“第Ⅱ領域を重視するパラダイムは、原則中心の考え方から生まれる。仮にあなたが配偶者を人生の中心に据えていたら、あるいはお金、友人、娯楽、その他の外的要因に中心を置いていたら、それらの影響力に反応し、第Ⅰ領域と第Ⅲ領域に簡単に逆戻りしてしまうだろう。自分自身に中心を置いていても、その時どきの衝動に負けて、やはり第Ⅰ領域と第Ⅲ領域に押し戻される。意志の力だけでは、自分中心の生き方を効果的に律することはできないのである。
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.211-212より
(※ 黄色の下線は本メディアによる編集)

だからこそまずは、第1, 第2の習慣をしっかりと実践することが大切なのです。

しかし、それでも問題なのは第I領域です。第I領域の活動はクリアしないわけにはいかないうえに、気付けばどんどんと膨らんでいき、自分のスケジュールを圧迫していきます。第I領域への対策を行わないことには、本当に価値があり未来の成果を最大化してくれる第II領域に取り組むことはできないわけです。

第I領域は適切な「デリゲーション(委任)」で減らしていく

そんな第I領域に対抗するための方法として、コヴィー博士は「デリゲーション」の重要性を示しています。デリゲーションとは「委任」を意味します。つまりは、人に任せるということです。

“確かな技術や知識を持っている人に仕事を任せれば、その間にあなたは自分にとってもっと重要な活動にエネルギーを注ぐことができる。個人であれ組織であれ、デリゲーションこそが成長をもたらすと言っていい。故J・C・ペニー(訳注:アメリカの実業家)は、「生涯で最良の英断は、自分一人の力ではもうすべてを切り盛りすることはできないと悟ったときに、手放したことだ」と言っている。彼のこの決断があったからこそ、J・C・ペニーは何百もの店舗と何千人ものスタッフを擁して展開する大手デパートチェーンに成長したのである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.231-232より
(※ 黄色の下線は本めディアによる編集)

デリゲーションは「効果的なマネジメントの鍵だ」とコヴィー博士は指摘します。いかにして効果的なデリゲーションを行い、第II領域の活動を増やして成果を生み出す能力を高めていくかが重要なのです!

使い走りのデリゲーション : 成果を生まないデリケーションの失敗例

コヴィー博士は、デリゲーションには2つの種類があるといいます。「使い走りのデリゲーション」「全面的なデリゲーション」です。

使い走りのデリゲーションとは、事細かにすべて指示して、ちゃんとやっているのか監督して、逐次の報告を求めるようなやり方です。つまり、「これを取ってこい、あれを取ってこい、これをやれ、あれもしろ、終わったら私を呼べ」という考え方です。

【ポイント】
このような使い走りのデリゲーションでは、大した成果を上げることはできません。このようなやり方では大した人数をマネジメントすることはできないうえに自分自身の手間がかかります。そのうえ、このようなやり方では委任した人の主体性を殺してしまいます。お互いが持っている能力を活かして相乗効果を生み出すことができないのです。

しかし、世の中の多くの人はこの「使い走りのデリゲーション」のパラダイムに縛られています。したがって、まずはこの考え方を捨て去り、成果を最大化できる「全面的なデリゲーション」のやり方を知る必要があるのです!

全面的なデリゲーション : 成果を生み出すデリケーションのやり方

全面的なデリゲーションとは、目的やゴールなどの共有だけはしっかり行い、「やり方」は相手に任せて相手の創造性や主体性を活かそうという考え方です。

“他者にデリゲーションするなら、より良い方法、より効果的な方法がある。相手の自覚、想像、良心、意志を尊重してデリゲーションするのである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.234より

全面的なデリゲーションでは、事細かなルール決めや自ら監督することは行いません。また、手段ではなく結果を重視します。方向性のズレだけはないように示し合わせたうえで、あとは相手を信頼して任せるのです。

なぜ全面的なデリゲーションが効果的なのか。それは「信頼」こそが成果を生み出すからです。

“信頼ほど人にやる気を起こさせるものはない。信頼されていると思えば、人は自分の最高の力を発揮する。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.243より

コヴィー博士は、人に任せるときは効率性ではなく効果性を考えることが重要だとも述べています。相手に信頼を示して相手の能力を引き出すことが最大限の成果を生み出すのです。

久保真介
久保真介
これは、業務の外注先を探すときなども同様です。信頼関係を構築できる相手を選び、相手に権限を持たせて全面的なデリゲーションをすることが外注で成果を上げるポイントです。

全面的なデリゲーションを行う5つのポイント

部下や子どもに「全面的なデリゲーション」をするためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。次の5つです。

まずは、達成すべき結果を共有しましょう。これは必ず、はっきりと示して相互理解しておくことが必要があります。相手が完成形を明確にイメージできるように、具体的な文章で表現するとともに、達成期限も明らかにしておきましょう。同時に、評価基準進捗報告の時期なども文章で残しておき、確認できるようにしておくことも大切です。

また、守るべきルールや「ありがちな失敗例」なども共有しておきましょう。ルールは細かく決めすぎず、相手の率先力を活かせる程度に抑えることがポイントです。「やり方」ではなく「してはいけないこと」を中心にルール共有すると良いでしょう。

その他、使える人員や予算、情報などのリソースも示しておき、タスクが一通り終わったあとは良かった点・悪かった点含めて具体的にフィードバックを行い、次回に活かせるようにしておきましょう。

久保真介
久保真介
このような「全面的なデリゲーション」を通して他人に仕事を安心して任せられるようになれば、自分はより創造的な仕事に取り組めるようになります。このようにして第I領域を減らしていき、第II領域を広げていくのです!

第3の習慣の本質 ── 第II領域に生きるとは「他人との信頼関係」の中で成果を上げること

第3の習慣「最優先事項を優先する」が意味する本質とは、モノや時間、仕事よりも「人」こそが何より大切ということです。これをコヴィー博士は「人はモノよりも大切である」という原則という言葉で表現しています。「全面的なデリゲーション」からもわかるように、他人との信頼関係の構築こそが成果を上げる何よりの方法なのです。

目の前の仕事や山積みとなったやるべきことばかりに目を向け、本来なら自分の力になってくれたはずの人たち──上司や部下、取引先、家族、友人、恋人、子ども、近隣のコミュニティ……──を後回しにしているようでは、いつになっても状況は改善しません。他人との信頼関係を強くしていくからこそ、仕事もプライベートも潤滑に回るようになり、自分の時間が作れるようになるのです。

第II領域のパラダイム ── 物事の優先順位を自らの内面の価値観と一致させること

「効率重視」の考え方をやめ、他人との関係性の中で「効果性」を高めることに注力して最大限の成果を得ようという「第II領域のパラダイム」を身につけることこそ、効果的なセルフマネジメントの鍵となります。

第II領域のパラダイムに沿った生き方を実践しているうちに生活のバランスが整っていき、積み重なる急ぎの用事ばかりでスケジュールが埋まってしまうような人生ではなくなるはずです。

緊急度と重要度を見極め、第II領域に集中する「第4世代の時間管理」を身につけることこそ、成功を掴むためにまず必要なことなのです。

第3の習慣を活用する方法 ── 自己管理・時間管理の実践方法

第3の習慣を実践するには、具体的に次の5つのアクションを行いましょう。

①第4世代の時間管理ができるツールを用意する ── 時間管理ツールが満たすべき条件

まずは、第4世代の時間管理が実践できるようにカスタマイズしたツールを用意しましょう。これは紙の手帳でも構いませんし、スマートフォンのスケジューリングアプリやWeb上のタスク管理でも問題ありません。いくつかの要件が満たせるようにカスタマイズさえできれば、自分の使いやすいもので構わないのです!

どんなツールを用意すれば良いか、コヴィー博士は次の6つの基準を示しています。

一例として、『7つの習慣』では次のような習慣スケジュール帳による実践方法が紹介されています。

時間管理ツールは「1週間の目標」「習慣スケジュール」「デイリースケジュール」が見渡せるものにすると使いやすい。(出典)スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.226-227

なお、「7つの習慣を実践するためのツール」として、コヴィー博士公認の「フランクリン・プランナー」という手帳も販売されているので、これを用いるのもおすすめです。

②時間管理ツールにミッション・ステートメントも記しておく

ツールの準備ができたら、まずミッション・ステートメントを書き入れます。合わせて、自らが生活の中で果たしている役割や責任、達成したい目標も記載しておきましょう。

これらのミッション・ステートメント等はすぐに見返せるように、ツールの中でもわかりやすい場所に記しておくと良いでしょう。

久保真介
久保真介
ミッション・ステートメントは、作成するだけではなく毎日見返し、自分の評価基準として内面に落とし込んでこそ意味のあるものです。ツールに書き入れておき、スケジュールとともに毎朝見返すようにするといいですね!

③一週間単位で計画を立てる

スケジュールは1週間単位で立てていきます。これは、1日単位ではバランスが取りにくく、緊急度の高いものばかりで埋まりがちになってしまうからです。そこで、時間軸を少し長めに取って1週間単位でスケジュールを考え、あらかじめ優先すべき第II領域のタスクを最優先事項として入れておくのです。

“週単位で計画を立てると、一日単位で計画するよりもはるかにバランスがよくなり、流れもスムーズになる。人間の社会はおおむね、一週間は一まとまりの完結した時間として認識されているようである。会社や学校など社会の多くの活動が一週間を単位にしており、一週間の何日か集中して活動したら休むというリズムで社会は動いている。
 ほとんどの人は週単位でものを考えている。だが第三世代のツールはたいてい一日単位で区切られている。これでは毎日の活動の優先順位はつけられるかもしれないが、基本的には緊急の用事と雑事の処理のスケジュールを立てているにすぎない。大切なことは、スケジュールに優先順位をつけることではなく、優先すべきことをスケジュールにすることなのである。そのためには一週間単位で計画するやり方が最適である。

── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.217より
(※ 黄色の下線は本メディアによる編集)

具体的には、次のような流れでスケジュールを立てていきます。

まずは、次の1週間で自分が果たすことになる重要な役割を書き出します。そして、それぞれの役割の中で自分が達成したい短期目標を、1つか2つずつ設定します。できれば、いくつかの目標はミッションステートメントで明確にした長期目標に関連するようなものにすると良いでしょう。

そして、実際に1週間のスケジュールを組んでいきます。週間目標を達成するために重要な最優先事項を先に予定表に組み込みます。そのときに予定していた会議や人との約束なども見直し、必要なものであれば予定表に書き入れ、不要と思えばキャンセルするようにしましょう。

そして、あとは毎日の中で1日単位の調整をしていきます。基本的には予定していた最優先事項を果たすことを重要視しつつ、必要があれば自分の価値観に基づいてスケジュールを変更します。その際、ミッション・ステートメントに照らし合わせて、優先順位を考えると良いでしょう。

④第III, 第IV領域は生活の中から極力排除する

日々の生活の中では、第III, 第IV領域を生活の中から極力排除するように心がけましょう。自分のゴール、理想的な姿、やりたいことが明確になっていれば、第II領域の活動は「やりたいこと」になっているはずです。

もしついついSNSやゲームなど第IV領域に逃げ込みたくなってしまうようであれば、無理のあるスケジュールでストレスが溜まりすぎてしまっているのかも知れません。本当に重要なことを着実に、という基本方針のもと、週間目標の設定を見直すと良いでしょう。

⑤全面的なデリケーションで第I領域を最小化する

また、日々の生活の中では第I領域を減らすことも意識していきましょう。その鍵となるのが「デリゲーション」です。「人に任せられないか?」という視点を持つとともに、人に任せるときは「いかにしてこの人の能力をしっかり引き出し、WIN-WINになれるだろう?」と考え、全面的なデリゲーションを行うことで、だんだん生産性が上がってくるでしょう。

久保真介
久保真介
また、洗濯乾燥機を買って洗濯物干しの時間を削減したり、掃除をルンバに任せたりするのもデリゲーションの一つの方法と言えます。このように、お金を払えば生産性アップが見込めるものは第II領域を広げるのに心強い味方になるので、ぜひ検討してみましょう!

【まとめ】第II領域のパラダイムを手に入れて生産性を高めよう!

今回はフランクリン・R・コヴィー博士の大ベストセラー『7つの習慣』から、第3の習慣「最優先事項を優先する」を徹底解説しました。

「最優先事項を優先する」とは、自分にとって本当に価値のあること、本当に重要なこと、本当に成果に繋がることを見極め、重要なことを優先するということです。これは第1, 第2の習慣で身につけたことの「実践」であり、「成果」を得るために必要なセルフマネジメントの考え方および方法論なのです。

「重要度」と「緊急度」からなる時間管理マトリックスの考え方を理解し、第II領域のパラダイムを身につければ、他人との信頼関係が強化され生産性が高まります。第1から第3の習慣をマスターし、自分の基本的なパラダイムとして溶け込ませることで、大きな成功を掴むことができるのです!

久保真介
久保真介
本連載では、コヴィー博士の『7つの習慣』の本質や実践方法を1つずつ詳しく解説しています。ぜひ他の記事もご覧ください!

【参考資料】

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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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