「セグメンテーション(Segmentation)」はマーケティングの基礎中の基礎といえる概念のひとつで、市場の潜在顧客を年齢や性別、ライフスタイルなどの特性や顧客ニーズに応じてグループ分けすることを表します。
マーケティングの戦略を考えるにあたって、セグメンテーションを行うことは特定のニーズを持った市場の規模を理解するなど、精度の高いマーケティングリサーチの出発点になります。また顧客の特性やニーズに沿った広告を作成したり、実行したマーケティング施策の効果を測定するうえでも大変役に立ちます。
【ポイント】逆に言えば、セグメンテーションをしなければうまくターゲット顧客を定めることができず、マーケティングの戦略立案はできません。つまり、セグメンテーションは、すべてのマーケティング活動のファーストステップと言えるプロセスなのです。
今回の記事では、そんな「セグメンテーション」について解説するとともに、セグメンテーションを行う際の“分類軸”や“コツ”なども紹介していきたいと思います。
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最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
セグメンテーションとは? ── 市場・顧客をグループごとに分割すること
「セグメンテーション(Segmaentaion)」は直訳すると「区分」「分割する」という意味の英単語ですが、マーケティング領域では「市場細分化」と訳され、自社商品・サービスの対象市場における潜在顧客を、さまざまな特性やニーズに応じてグループ分け(細分化)することを表します。また、分割したそれぞれのグループは「セグメント(Segment)」と呼ばれます。
たとえば、アイスクリームを販売するにしても、
- 100円程度で買えるリーズナブルなアイスが食べたい
- ちょっと高くてもプレミアム感を味わえる美味しいアイスが食べたい
- コンビニなどで手軽に買いたい
- 専門店に行って友達とおしゃべりでもしながらアイスを食べたい
- カロリーや糖質が少ないアイスが食べたい
などといったさまざまな需要が考えられますし、購買者が男性なのか女性なのかなどによっても戦略は変わってきます。そのため、マーケティング戦略を考えるには、まずは市場を細分化してそれぞれのセグメントについて市場規模がどのくらいあるのか調査したり、ライバル商品を特定したり、どの市場なら勝てる見込みがありそうか分析したりすることが必要なのです。
このようにして市場環境をさまざまな切り口で細分化してみて、それぞれのセグメントについて評価を与えるのがセグメンテーションです。
- セグメンテーション = 市場細分化
- 市場における潜在顧客を、ある特性やニーズに応じてグループ分け(細分化)して評価すること
- 分割したそれぞれのグループを「セグメント」と言う
- 市場の細分化には、年齢・性別・地域・顧客ニーズ・ライフスタイルなどの指標が活用される
- セグメンテーションを行うことで対象市場をより深く理解でき、その顧客特性やニーズにマッチしたマーケティング戦略を立てることができる
マーケティングの「STP」── セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
マーケティングの戦略立案には、「STP分析(STP理論, STP戦略)」という市場における自社の立ち位置を明確にするためのフレームワークがよく使われます。セグメンテーションは、STP分析の最初のステップにあたる“S”のことを指しているのです。
STP分析・・・市場における自社の立ち位置を明確にするための手法(→詳細 : マーケティングのSTPとは?)
- S = セグメンテーション : 市場の潜在顧客を”ある切り口”でグループ分け(細分化)するプロセス
- T = ターゲティング : 細分化した市場の中で、自社がどの市場を狙うか決めるプロセス(→詳細 : ターゲティングとは?※ 近日公開)
- P = ポジショニング : ターゲティングした市場の中で、自社の立ち位置を決めるプロセス(→詳細 : ポジショニングとは?※ 近日公開)
STPを定めること ≒ マーケティング戦略を立てること
STPは、(S)市場を細分化する→(T)その市場における自社のターゲットを定める→(P)市場での自社のポジションを明らかにするというマーケティングの中心を成す概念であり、戦略立案のプロセスそのものと言っても過言ではありません。
市場にあらゆる商品やサービスが揃った現代では、ただ良い商品をつくっただけで売れることはほとんどありません。ライバル商品との差別化、独自の価値を顧客に伝えるブランディングやプロモーション、オンラインツールの活用といった「戦略」が商品のヒットには必要不可欠です。
そのため、STP分析で商品・サービスを売る対象市場を明確に定め、どのようなコンセプトを打ち出して自社商品を対象市場の中でどのようなポジションに位置づけるのか決めることは、事業の成否を分ける非常に重要な活動と言えます。
セグメンテーションの4つの軸 ── セグメンテーション変数
これまでセグメンテーションとは、市場における潜在顧客を“さまざまな切り口” でグループ分け(細分化)して評価するプロセスだと説明してきましたが、具体的にどういった切り口があるのでしょうか。代表的なものとして、次の4つの軸がよく使われます。
- 地理的変数(ジオグラフィック変数)
- 人口動態変数(デモグラフィック変数)
- 心理的変数(サイコグラフィック変数)
- 行動変数(ビヘイビアル変数)
地理的変数(ジオグラフィック変数)
「地理的変数(ジオグラフィック変数)」とは、「国」や「地域」など地理的な要素で市場を分類する際に使われます。また「気候」によって温暖な土地か寒冷地なのか、「人口密度」によって都市か地方かなどを分類する場合もあります。
地理的変数は、気候や生活習慣が売れ行きに影響を及ぼしやすい食料品・衣料品・家電製品などの製品を取り扱う場合に効果的です。むやみやたらに細分化するのではなく、「国」を採用する場合は宗教や風土、文化が似ている国を一括りにする。国内の「地域」においても、一般的に顧客の好みが分かれると言われている関東・関西で分類する、などといった区分けが考えられます。
人口動態変数(デモグラフィック変数)
「人口動態変数(デモグラフィック変数)」は、消費者を年齢・性別・所得・家族構成などといった「人の属性」で分類したいときに使われます。
例えば「20代女性向け美容商品」や「高所得・共働き子育てサービス」などといったように、商品・サービスに対するニーズが、顧客の“ライフステージ”と関係が深くなる場合に有効です。また測定が容易であることから、幅広いケースで採用されている指標です。
心理的変数(サイコグラフィック変数)
「心理的変数(サイコグラフィック変数)」とは、消費者の趣味・趣向、価値観、消費スタイルなどといった心理的な違いでセグメンテーションを行いたい場合に活用されます。
現代社会において、個人の価値観やライフスタイルは実に多様化しています。健康志向、ミニマリスト、サステイナブルな暮らし、リモートワークで他拠点生活などと言った要素は、購買行動に関わる重要な視点です。
ただしこれらの変数は、他と比べてデータの収集が難しいという側面もあります。顧客へのヒアリングやアンケート、WEB閲覧履歴の分析などによりデータを取得していくようにしましょう。
行動変数(ビヘイビアル変数)
「行動変数(ビヘイビアル変数)」とは、既存顧客の購買行動に基づきセグメントする方法です。購入商品、購入金額、購入頻度などを活用します。
これらの指標から、ロイヤルカスタマー(自社のブランドや商品・サービスへのロイヤリティが高い顧客)やリピーター、新規顧客を特定することができ、セグメントごとに適切なマーケティング施策を実行することが可能となります。
(関連記事)【詳説】セグメンテーション分析の軸はどう決める? 効果的な分類方法を解説!(※ 近日公開)
適切なセグメンテーションを行うポイント
セグメンテーションのプロセスでは、これら“4つの軸”を念頭におきながら市場を細分化していくことが基本ですが、適切なセグメンテーションを行うためにはいくつかのコツを押さえておくことが大切です。最後に、効果的にセグメンテーションを行うための“ 3つのポイント”をご紹介しましょう。
① 年齢や性別で無意味な分割をしない
1つ目のポイントは、“目的”を持ってセグメンテーションを行っていくということです。自社の商品・サービスを、どの顧客向けに展開していくか、あらかじめ「仮説」を持った上で、”セグメンテーションの指標”を決めていくようにしてください。そうでなければ、膨大な潜在顧客から自社商品・サービスをどのように売っていくかというマーケティング施策につなげていくことが難しくなってしまいます。
たとえば「食パン」を例にとってみましょう。この場合、「年齢」や「性別」で市場を細分化したところで、各セグメントごとに特徴的なニーズを捉えることは難しいでしょう。それよりは、アメリカ・ヨーロッパ・アジア圏など「地域」ごとの分類、また食パン派・ご飯派といった「ライフスタイル」の切り口で市場を分類するほうが、より直接的なマーケティング戦略を立てることができると思います。
②ニーズやライフスタイルなどを重視する
2つ目のポイントは、顧客ニーズやライフスタイルが同一のグループごとに分割していくということです。
昔に比べ、消費者のニーズやライフスタイルは多様化していっています。1つ目のポイントにも通じますが、やみくもに市場を細分化していくのではなく、顧客がどのようなニーズを持っているのか、どのようなライフスタイルを望んでいるかなどの「仮説」をもとに、市場を細部化していってください。こうすることで、多様化したニーズの中から自社がアプローチすべき市場を、“顧客起点”で明確化することができます。
③ 4R(6R)を意識する
最後のポイントは、「4R(6R)を意識する」ということです。 4R(6R)は、市場を分析する際に便利な6つの観点・指標を表しており、ターゲティングを考える際に便利なフレームワークです
- Realistic scale(市場規模): 市場規模はどのくらいあるか?
- Rate of growth(成長性): 市場の成長は見込めるか?
- Rival(競合の状況): 競合はどのくらいいるのか? 勝てる見込みはあるか? 相手はどのような市場ポジションを築いているのか?
- Rank(優先度): 顧客にとっての重要性は大きいか?
- Reach(到達可能性): 顧客への販売経路やコミュニケーション施策(プロモーション施策)は実現できるのか?
- Response(測定可能性): レスポンスを受け取ることができるのか?
(※ 4Rはこのうち「成長性」と「競合状況」を除いたもの)
6Rを確認することで網羅的に市場を分析し、分析内容の偏りや項目の考慮漏れを防ぐことができます。次の行程であるターゲティング(T)のことも視野にいれながら行っていくとよいでしょう。
(関連記事)ターゲット設定の6Rとは? ── フレームワークを活用してターゲティング・セグメンテーションの有効性を正しく評価しよう!(※ 近日公開)
【まとめ】適切なセグメンテーションで精度の高いターゲティングを実行しよう!
「市場細分化」を表す「セグメンテーション(Segmentation)」は“マーケティングのSTP”の最初のステップであり、市場を顧客の年齢や性別、ニーズ、ライフスタイルなどでグループ分けして、それぞれのグループ(=セグメント)について評価することを表します。
セグメンテーションを行うことで、膨大な市場を消費者の特性やニーズ毎に細分化して、自社の商品・サービスをより効率的に・効果的に訴求できるようになります。集客や売上が期待される市場セグメントを見極め、ターゲット市場に最適なコンセプトを生み出すことで、コストを抑えつつ売上を伸ばすことができるのです。
今回ご紹介した4つの軸(地理的・人口動態的・心理的・行動変数)や3つのポイントを踏まえて適切な「セグメンテーション」を行い、自社のマーケティング施策に役立ててください!
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【参考資料】
- フィリップ・コトラー, ケビン・レーン・ケラー 共著, 恩藏直人 監修, 月谷真紀 訳『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』(丸善出版, 2014年)
- フィリップ・コトラー 著, 木村達也 訳『コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか』(ダイヤモンド社, 2000年)
- 日本マーケティング協会 監修, 恩藏直人, 三浦俊彦, 芳賀康浩, 坂下玄哲 編著『ベーシック・マーケティング(第2版)』(同文館出版, 初版2010年)
- グロービス経営大学院 編著『[新版] グロービスMBA経営戦略』(ダイヤモンド社, 2019年)
- 森岡毅 著『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』(角川書店, 2016年)
- 酒井光雄 著『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』(かんき出版, 2014年)
- 佐藤義典 著『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社, 2007年)
- 金森努 著『“いま”をつかむマーケティング』(アニモ出版, 2011年)
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