マーケティング

購買決定要因・KBFとは? ─ マーケティング戦略立案の重要ポイントを解説!

KBFという言葉を聞いたことがありますか? KFBとは「Key Buying Factor」の頭文字を取ったもので、「購買決定要因」と訳されます。簡単に言えば「お客様が商品やサービスを買うことを決めた理由」を意味しています。

KBFはマーケティングにおいて、非常に重要な役割を果たしています。マーケティングは「ファンを獲得して、売り込まなくとも自然に商品が売れるような仕組みをつくること」を目的としていますが、そんなマーケティング戦略の立案プロセスにおいて、KBF(= お客さまはなぜその商品を選ぶのか? )を知ることは欠かせないことなのです!

そこで今回はKBFについて、発見方法や具体的な活用方法まで詳しく解説いたします。

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KBFとは? ── KBF(Key Buying Factor ; 購買決定要因)= 顧客が商品を買う理由

KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)とは、顧客が製品やサービスを購入するかどうか検討する際、何を重要視しているのかを表す用語です。つまり、「KBF = 顧客が商品を買う理由」ということです!

自社製品のターゲットとなるお客さまがどんなことを考え、どのような基準で競合商品と比較し、何を決め手に購入商品を選んでいるのか。そんなお客さまの購買行動を分析・理解することは、マーケティング・リサーチの基本中の基本といえます。

【ポイント】
たったひとりのお客さまだけを考えたとしても、ある商品を購入するかどうかの決め手となる要因は一つだけとは限りませんし、お客さまが変われば違う要因が決め手になる場合も多いです。さまざまな要因が絡み合うKBFを分析・追求していくことは、お客さまのことを深く理解していくことに他なりません。

したがって、市場や顧客の分析を通じてKBFを探ることで、業界内のさまざまな顧客ニーズを発見し、自社とライバル企業の違いを把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることに繋がります。つまりは、KBFはビジネスの成功を大きく左右するのです!

KBFはKSF(重要成功要因)を探す手掛かりになる

KBFと似た言葉に「KSF(Key Success factor)」というものがあります。KSFは「重要成功要因」と訳され、その名の通り事業の成否を握るカギを表します。言い換えれば、KSFとは「この分野で成功するにはどこを押さえればいいのか」という、事業成功の要点であり戦略立案において外すことのできないポイントです(参考 → KSFとは?)。

【ポイント】
そんなKSFを考える際にも、KBFが重要な役目を果たします。KBFはKSF発見のヒントとなるのです!

「業務スーパー」を例に考えてみましょう。業務スーパーに来る顧客のKBFの中で、特に重要なのが「価格の安さ」です。したがって、業務スーパーのKSFは「他店よりも低価格で商品を提供すること」となります。実際、業務スーパーは問屋や貿易会社を通さずにメーカーから直接仕入れたり、大型のコンテナを使って海外からの輸入コストを削減したり、自社工場でオリジナル商品を作ったりなど、低価格での商品提供を実現するための仕組みを構築しています(※)

久保真介
久保真介
マーケティングの具体的な施策立案では「商品(Product)」「価格(Price)」「流通チャネル(Place)」「広告宣伝(Promotion)」という〝4つのP〟が非常に重要ですが、業務スーパーの場合はその中でも「価格」と「流通チャネル」が重要な役割を担っていることがKSFから読み取れますね^^!

このように、KBFやKSFは強固なマーケティング戦略立案の柱となるのです。

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KBFは「顧客に提供する価値(=ベネフィット)」に直結する

KBFは、マーケティングやビジネスを考えるうえで最も重要な概念である「ベネフィット」に直結します。ベネフィットとは「顧客が商品やサービスを利用することによって受けるプラスの体験(価値)」のことです。

【ポイント】
お客様が商品を買うのは、何かしらの価値を感じているからです。したがって、ビジネスとはお客さまにベネフィットを提供する代わりにお金をいただくことだといえます。

そして、KBFはお客様が商品に感じているベネフィットと直結しているのです!

別の表現をしてみましょう。KBFを把握することは「お客さまに何を提供しているのか(What)」を理解することだとも言えます。

数多くの敏腕マーケターを生み出してきたP&Gのマーケティングにおいて、中核となっているのは「Who(誰に)」「What(どんな価値を)」「How(どうやって)」提供するのかという「WWH」のフレームワークです。KBFは、このなかの「What」に直結します。

提供するべき価値(=what)を決めること、お客様が商品に感じている価値(= ベネフィット)を理解することは、マーケティングの戦略立案プロセスの中でも最初にやるべきことです。したがって、市場調査や顧客分析から自社商品のKBFを理解したり、競合他社のKBFを知ったりすることは、どんなビジネスにも欠かせないことなのです。

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事業のKBF/KSFを見つけることで、自社の取るべきポジションが見えてくる

前述の通り、KBF/KSFの理解は戦略立案において最初にやるべきことのひとつです。一般的に、マーケティングの戦略・施策は以下の手順で考案していきます。

  1. 環境分析:戦略や施策を考えるための準備段階。3C分析SWOT分析などで業界や市場を調査・分析する
  2. STPの決定:戦略の大枠を決定する段階。顧客を分類し(セグメンテーション)、絞り込み(ターゲティング)、自社の取るべきポジションを決定する(ポジショニング)
  3. マーケティングミックス(4P/4C)の決定:具体的な施策の方針を決める段階。商品戦略、価格戦略、チャネル戦略、プロモーション戦略など、具体的な施策を計画する

つまり、「①事前調査 → ②戦略決定 → ③施策決定」という流れです。KBF/KSFは➀の環境分析の中で得られる成果物 に当たり、これらをもとに次のステップでSTPを考えていくのです。

QBハウスのマーケティング戦略をKBFから読み解く ── QBハウスの事例紹介

KBFの具体例として、QBハウスのマーケティング戦略を考えてみましょう。駅前や駅ナカ、ショッピングモールなどでよく見かけるあの有名な1,000円カットのお店です!

QBハウスは「10分で身だしなみ」をキャッチフレーズにして、短時間で質の高いカットを低コストで提供しています。店舗数は国内外合わせて700以上! 日本最大のチェーン店です。

理美容業界で快進撃を続けるQBハウスですが、その大成功の裏にはKBFを巧みに読み解いたマーケテイング戦略が構築されています。KBFをもとに、QBハウスのマーケティング戦略を分析してみましょう。

QBハウスのKBFは「いますぐ」「1,000円で」カットできるという新しい顧客価値

QBハウスがなぜ成功したのか。ひと言で答えるのなら「予約不要で行ける・1,000円で髪が切れる・10分で終わる」という新しい顧客価値を実現したことです。そして、これがそのままQBハウスの顧客にとってのKBF(=来店理由)となっています。

QBハウスは、従来の床屋では常識的なサービスだった「洗髪」や「髭剃り」などのサービスをカットして、髪を切ることのみに特化するという新しいサービスを提供しました。カットだけだから施術が10分で終わりスピーディー。予約不要で「すぐに髪を切りに行ける」手軽なシステム。そして、無駄を省くことで1,000円(※)という破格の安さを実現(※ 2019年2月からは1,200円に値上げ)。

従来の床屋とはまったく違った切り口で差別化を図り、ブルーオーシャンを見つけ出したのです。

KBFの実現を支える3つのKSF ─ 立地, 従業員確保, 回転率

圧倒的な「安さ」と「スピード」で日本一の理容チェーンとなったQBハウス。その成功を支えるKSFとして、特に重要なのは次の3つでしょう。

  1. 立地
  2. 従業員の確保
  3. 回転率アップの仕組み

 

① 立地

まず1つ目は、QBハウスにとって極めて重要なKBF「立地」です。QBハウスは、多くの人が行き交う駅近や駅ナカ、ショッピングセンターを中心に店舗を構えています。単価の安いQBハウスは広告予算をかけられないため、店舗自体が目に留まり広告代わりになるような立地に出店しているのです。

それだけではありません。このような立地は、QBハウスのメインのターゲット層である「忙しいビジネスパーソン」との親和性も非常に高いです。予約不要で来店できて10分で散髪できるQBハウスが駅前や駅ナカにあれば、忙しいビジネスパーソンがちょっとした隙間時間などを利用して、商談前に立ち寄ることなども可能です。

また、ショッピングセンターにQBハウスがあれば、休日に家族と出かけているお父さんが、妻や子供が買い物を楽しんでいる間にサクッと髪を切ることも可能です。

久保真介
久保真介
なお、ショッピングセンターではトイレに近い立地を確保しており、トイレの鏡で髪が伸びていることに気づいた人が気軽に立ち寄れるようにと工夫されています。

② 従業員の確保

2つ目が「従業員の確保」です。10分というスピード勝負であるため、高度な技術力のある従業員を多く採用しています。

実のところ、理美容の業界はサービス残業が当たり前だったり社会保険未加入だったりと、かなり過酷なことが多いです。QBハウスはそんな劣悪な現状をチャンスと見越して社会保険を完備し、残業代も1分から支給するなど労働環境を改善。優秀な従業員が長く働いてくれる環境を用意しているのです。

③ 回転率アップの仕組み

そして3つ目が「回転率アップの仕組み」です。QBハウスが毎日さばいている客数は、一般的な理美容室の4〜5倍。そんな圧倒的な時短の実現するため、QBハウスの店舗はかなり効率性重視な仕様になっています。

たとえば、シャンプーの代わりに使用する「エアウォッシャー」という独自器具。散髪後に残った髪の毛を一気に吸引する掃除機のような機材により、通常20〜30分ほどかかっていたシャンプー&ドライの時間を数十秒へと短縮しました。

また、レジ不要の券売機方式を採用することで、従業員はヘアカットのみに集中できます。

久保真介
久保真介
他にも、スマホアプリで店舗の位置や混雑状況を確認できたり、事前に希望のヘアスタイルをオーダーしておけたりといった、従業員の手間を省きながらお客さまの利便性を高めるサービスも用意しています。

KBF・KSFに基づくQBハウスの差別化戦略(STP, 4P)

以上の通り、QBハウスの成功の裏にはマーケティングの基本に忠実な理由が隠れています。そんなQBハウスのビジネスモデルをもっと詳しくみてみましょう。

QBハウスのSTP
Segmentation
(市場細分化)
・顔剃りが好きな人
・カチッとしたフォルムが好きな人
・慣れ親しんだ担当者に切って欲しい人
・「この年の男が美容室に行くなんて小っ恥ずかしい」と思っている人
・髪の毛は整ってさえいれば割となんでもよくて、近所のお店に行っているだけの人
など
Targeting
(狙う市場セグメント)
(ターゲット層)おしゃれ目的ではなく「最低限の身嗜みを整える」ことが目的の人
(メインターゲット)忙しいサラリーマン
Positioning
(市場での立ち位置)
安い・早い・手軽・ヘアカット特化
QBハウスの4P
Product(商品) 予約不要、カットのみ、10分で散髪
Price(価格) 税込1,200円という低単価(※2022年7月現在)
Place(場所) 駅前、駅ナカ、ショッピングモール中心
Promotion(広告宣伝) 目に留まりやすい場所への出店により広告不要

QBハウスは「おしゃれではなく最低限の身嗜みを整えたい」という「忙しいサラリーマン」にターゲットを限定することで、一般的な床屋や美容院では絶対に実現不可能な低価格とスピード、予約不要のシステムを実現して、既存の理美容店と差別化しました。1,200円という客単価の低さは、高回転率と広告費をかけないことでカバーできています。

このように、市場を分割して満たされていない顧客ニーズを見つけ出し、そのニーズを満たすために必要なKBF・KSFを導き出し、それに基づいて一貫性のあるSTP-4Pを設定する。これが戦略的マーケティングの基本中の基本であり、強いビジネスモデルの構築方法なのです。

KBFの分析方法とポイント ── 定量調査やインタビューから読み解くが、注意点も!

KBFを見極める際は、アンケートやインタビュー、顧客観察などを用います。

定量的なアンケート調査では、想定されるKBFをリストにしてそこから複数回答してもらい、その他の自由回答欄を設けます。実際に商品やサービスを利用している顧客に質問をして、回答してもらう形のユーザーインタビューも有効です。

どれも身近な手法なのでよく使われますが、実は注意点もあります。

アンケートやインタビューからKBFを探る際の注意点

まず、KBF分析では「そもそも正しいデータが取れているのか」という点を考えなくてはいけません。実際、アンケートやインタビューでは正確なデータが取れていないことも多いのです!

あなたも、Youtubeの動画を見ようとしたときにアンケート広告が表示され、面倒だからと適当に回答してしまったことがあるのではないでしょうか? このように、アンケート調査ではユーザーが適当に回答してしまっているケースは多々あります

インタビュー調査では「いつもと違う状況」ということもあり、通常とは違う思考回路で考えてしまったり、いい顔をしたいがために本音を話さなかったりすることもあります。

このため、インタビューや統計データだけではなく、より掘り下げた調査が必要になるのです。

より深い分析をするための手法として、たとえば西口一希さんが提唱する「N1分析」があります。N1分析では、顧客一人ひとりに注目して、どこで商品を認知し、何をきっかけに購入し、なぜリピートするようになったのかなどといった「カスタマージャーニー」を徹底的に理解します。

久保真介
久保真介
ちなみに、西口さんは元P&Gでパンテーンなどのマーケティングに関わり、その後ロクシタンや肌ラボ、スマートニュースなどを手がけた有名マーケターです。以下の記事では、N1分析など西口さんのマーケティング手法を詳しく解説しています!

【要約&書評】『顧客起点マーケティング』とは? 元P&G・西口一希流のマーケティング手法を解説! 顧客起点マーケティングとは、P&G出身で、肌ラボやロクシタン、スマートニュースなどのマーケティングを手がけた西口一希さん...

アンケート調査なども全体の〝傾向〟を把握するには有効ですが、西口さんのN1分析のように、徹底的な顧客観察やお客さまの心理を深いところまで掘っていくインタビューを実践することがKBF発見のポイントです。

その他にも知っておくべき5つの分析ポイント

KBF分析のアプローチ方法とその際の注意点を解説しましたが、そのほかにも知っておくべきKBF分析のポイントが5つあります。順に解説しましょう。

➀KBFは人(ターゲット)や商品ごとに異なる

当たり前のことですが、同じカテゴリでも商品によってKBF(=商品を買う理由)は異なる場合があります。さらに、1つの商品だけでも顧客ごとにKBFはさまざまです。

たとえばシャンプーなら、購入の決め手となる判断基準として泡立ち、香り、価格、髪や肌に合うか、詰め替え用があるかなどがありますね。

このように、KBFになりうる要因は複数考えられ、それらを組み合わせることによって無数のパターンが存在します。したがって、KBFを取り扱う際は

  • KBFを平均化しないこと
  • 同様のKBFを持つ人のボリュームを考慮すること

が非常に重要です。顧客ごと、商品ごとのKBFの違いをきちんと読み取ることが、効果的なマーケティングに繋がります。

久保真介
久保真介
KBFを軸に顧客セグメントを分類して、ターゲティング・ポジショニングして差別化の足掛かりにしましょう!

➁KBFは単独の要素だけで決まるわけじゃない

KBFは複合的・総合的に判断されるため、簡単には分析できません。そこで、商品ごとの「類似点」や「相違点」に注目するPOD分析(Point of X分析)を利用するとKBFをさらに深く理解できます。

POD分析とは、自社商品と競合製品の違いを理解し、差別化のポイントを見つけ出すための手法です。以下の表に示すように、POD・POP・POFという3つの視点から商品の特徴を分析します。

POD分析
Point of Difference
(相違点)
競合商品との違いのうち、商品を買う理由になるもの(差別化ポイント)
Parity
(類似点)
良い点ではあるけれど、同じメリットは競合他社も持っているので買う理由にはならないもの
Failure
(脱落点)
競合商品との違いのうち、商品を買わない理由になるもの(欠点)

PODの一例として、業界の一般的な床屋と比較したとき、QBハウスがどのような特徴を持っているのかをまとめてみます。

QBハウスのPOD分析
POD(相違点) ・圧倒的な早さと安さ
・予約不要の手軽さ
・立地の良さ
POP(共通点) 顧客が求めるカットの品質を満たしている
POF(脱落点) ・顔剃りやパーマ、ヘアカラーなどはできない
・お洒落なスタイルへの対応力はそれほど高くない
・スタイリストの指名ができない
・予約ができないので待ち時間があることもある

 

【ポイント】
差別化戦略では、ライバルとは違うPODを設けるだけではなく、市場として当然持っているべきPOPを満たしながら、できるだけPOFをなくしていくことが重要になってきます。そしてこれら3つの視点がKBFを考えるうえでも大切です。

QBハウスの場合、PODである「圧倒的な早さ・安さ・手軽さ・立地の良さ」がそのまま「KBF = QBハウスが選ばれる理由」になっています。

しかしそれは、「顧客が求めるカットの品質を満たしている」というPOPに支えられていることに注意しなくてはなりません。安かろう悪かろうではお客さまは来てくれないので、絞ったターゲットにとって必要十分なカット品質を維持するために、QBハウスは社員研修や就労環境の整備などにより、優秀な従業員の確保に努めているのです。

久保真介
久保真介
「絞ったターゲットにとって必要十分な品質」というのがポイントです。顔剃りやパーマなどのサービスを求めていたり、おしゃれなヘアスタイルを求めている人はそもそもターゲット層から外れているのです。

POFに関しては、QBハウスにとって重要なのは「予約ができないので待ち時間が発生する恐れがある」点です。これはQBハウスにとって失脚の理由になり得るため、スマホアプリで「混雑状況の確認機能」や「順番待ち受付機能」を実装つけてカバーしているのです。

久保真介
久保真介
「スタイリストの指名ができない」というPOFに関しても、一定以上の技術力を持ったスタッフを多数確保することで、どのスタイリストに当たってもお客さまに満足してもらえるようにしてカバーしていることが伺えます。

以上の通り、QBハウスはターゲット層をきちんと絞り込むことで、その人たちにフィットした価値を最大限提供できる仕組みを作っています。

KBFを考える際は「差別化ポイント(POD)」ばかりに注目してしまいがちですが、 POD/POP/POFを総合的に認識することが大切です。

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③DMU(購買意思決定者)に留意する

KBFを考える際には、ユーザー(顧客)だけでなく「DMU(Decision Making Unit ; 購買意思決定者)」の存在を意識する必要がある場合もあります。

DMUとは、「購買意思決定者」という日本語訳の通り、買い物の決定権を持っている人のことです。たとえば、結婚指輪やペアリングを購入するのは男性が多いですが、どれを買うのか決めるのは女性(妻、彼女)の場合が多いですよね。この場合、顧客は男性ですが、DMUは女性ということです。

【ポイント】「ユーザー = DMU」の場合は特に問題ありませんが、
「ユーザー ≠ DMU」なら両者それぞれのKBFを考える必要があります。

 

久保真介
久保真介
結婚指輪などのわかりやすい例なら良いですが、たとえば車などの高額商品はユーザーとDMUが異なるケースが増えてくるので注意しましょう。

DMUが特に重要となるのは、BtoBのビジネスです。たとえばオフィス機器やWebサービスなどの営業をするとき、顧客に当たる現場の人たちの意見ばかりを意識していると、DMUであり実際に予算を出している上司や経営者の考えを見落としてしまう恐れがあるのです。

➃KBFは突然変化することがある

KBFはトレンドの変化や法改正などの影響により、時代によって突然変化することがあります。最近の例なら、2020年からの新型コロナウイルスの流行は、ぼくたちの生活を大きく変化させ、ビジネスにも大きな影響を与えました。

コロナ禍がきっかけでKBFが変化した業界の例に、「酒類」があげられます。緊急事態宣言による飲食店の休業や、混雑する居酒屋に行くことへの不安感から、「Zoom飲み会」という言葉ができるほど家でお酒を楽しむ人が増えました。

外飲みが制限された影響で、「家のなかでくらいちょっといいものを飲もうかな」という心理が働き、缶ビールの売上は上昇。その一方で発泡酒は売上が減少しました

このようにKBFは一気に変化することがあるので、現状に合わせて臨機応変に対応していくことが求められます。

久保真介
久保真介

ちなみに、これにはコロナだけでなく2020年10月からの酒税法改正の影響もあります。それも含めて、さまざまな原因でKBFは変化し得ることが分かりますね。

なお、このようなマクロ環境について探りたいときは「PEST分析」のフレームワークを活用すると良いでしょう。

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➄KBFは企業の顧客コミュニケーションで関与できる

KBFは「顧客が商品を買う理由」ですが、実は企業の側からKBFに関与することもできます。たとえば、広告やPR、ダイレクトメッセージなどで商品の魅力や使用例を紹介することで、お客さまが商品の新たな価値に気付く場合もあります。

また、KBFは普段から購入している顧客でもきちんと説明できず、なんとなく購入しているケースもあります。そこで、顧客の深層心理を深く観察して、顧客自身も気付いていないような本音(=インサイト)を見抜いてうまく衝くことにより、顧客がKBFを認識して満足度や納得度が高まります

久保真介
久保真介
コスメブランドのロクシタンは、「万人ウケする香りや使用感」というKBFを活かして「プレゼントにぴったり!」という訴求をすることで、売上を伸ばしました。これも、企業側から新たなKBFを発見させた好例ですね!

【まとめ】KBFはマーケティング戦略立案のカギになる!

KBF(Key Buying Factor ; 購買決定要因)はお客さまにとっての「買う理由」であり、「買っている価値」そのものです。P&Gのマーケティング理論で有名な「WWH」の中の「What」にも直結します。

自分が参入したいカテゴリにおいて、お客さまが持っているさまざまなKBFを見つけることで、KSF(重要成功要因)を導き出したり、適切なセグメンテーションをしたりすることが可能になります。そして、それをもとにターゲティング、ポジショニングの戦略が決まり、具体的な4Pが決まってくるのです。

【ポイント】
つまりは、KBFはマーケテイング戦略立案の柱とも言えるものです。KBFを理解することはお客さまを理解すること、そして自社が価値を提供できるお客さまを見つけることと等しいのです!

このように、KBFの発見はビジネスの発展に大いに貢献します。大ヒット商品誕生の裏には、必ずと言っていいほど競合商品とは異なる新たなKBFが隠れているのです。

とはいえ、QBハウスのように満たされていないニーズを市場の中から見つけ出し、新たなKBFを作り出すのは、現代のビジネス環境においてそう簡単にできるものではありません。そこで大切なのが、自分のビジネスとその顧客をよく理解してみることです。

【ポイント】
顧客がなぜ自分の商品を買ってくれているのか、そのKBFを考えてみましょう。そのKBFこそが自分の強みです。それをどう活かすか考えることこそ、マーケティング戦略を考えるということなのです。

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サロン経営を猛烈な赤字でスタート。マーケティングを駆使しながら圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる完結型コンテンツを無料で提供。コンサルタントとして50件以上のサリンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在では、サロン経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。

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