フランクリン・R・コヴィー博士による世界一売れたビジネス書『7つの習慣』の徹底解説シリーズも、今回で最終回です。
第7の習慣「刃を研ぐ」は、別名「最新再生の習慣」とも呼ばれ、これまで身につけてきた第1〜6の習慣の集大成にあたります。7つの習慣をバランスよく実践し続け、その精度を高めていき、自身の「人格」と「成果を生み出す能力」を高め続けていくことが第7の習慣の目的です。
それでは、持続的な成長と人生の成功を加速してくれる「第7の習慣 : 刃を研ぐ」について、コヴィー博士の教えを読み解いていきましょう。
最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
第7の習慣「刃を研ぐ」とは? ── 第1〜第6の習慣を包括する最新再生の習慣
第7の習慣「刃を研ぐ」とは、自分自身の価値(成果を生み出す能力)を高め続けることです。ひとことで言えば「生涯の自分磨き」。第1〜6の習慣を実践し続け、変化と成長を繰り返しながら、継続的に成果を生み出し続けることを目的とする「最新再生の習慣」です。
コヴィー博士は、「刃を研ぐ」ことについて、以下のように語っています。
“「刃を研ぐ」ことは、自分の人生に対してできる最大の投資である。自分自身に投資することだ。人生に立ち向かうとき、あるいは何かに貢献しようとするときに使える道具は、自分自身しかない。自分という道具に投資することが「刃を研ぐ」習慣なのである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(Kindle版, 2013年)p.451より
ボロボロの刃も、丹精込めて研ぎあげれば鋭さを取り戻します。人生についても同じです。人生の成功には、自分自身を磨きあげて「人格」と「成果を生み出す能力」を高めることが必要不可欠なのです。
第7の習慣とは人間を構築する「四つの側面」を磨き続けることである
コヴィー博士は、第7の習慣を「あなたの最大の資産、つまりあなた自身の価値を維持し高めていくための習慣である」と表現しています。より具体的には、人間を形作っている「四つの側面(肉体、精神、知性、社会・情緒)」を磨くことだと語ります。
“第7の習慣は個人のPC(成果を生み出す能力)である。あなたの最大の資産、つまりあなた自身の価値を維持し高めていくための習慣である。あなたという人間を作っている四つの側面(肉体、精神、知性、社会・情緒)の刃を研ぎ、最新再生させるための習慣である。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p425.より
① 肉体的側面
肉体的側面の刃を研ぐとは、自分の肉体(=身体)に気を配り、メンテナンスすることです。高いパフォーマンスを発揮し続けるためには、自身の体調やコンディションを一定以上に保ち続けることが欠かせません。
肉体的側面を鍛えるのに、難しいことは要りません。
- 健康的でバランスの取れた食事を摂る
- 定期的な運動習慣を身につける
- ストレッチを習慣化する
- 良質な睡眠を十分に取る
- スマホの使い過ぎに気をつける
- ストレスの原因をできるだけ取り除く
- 趣味に取り組むなどリラックスした時間を取る
などといった基本的なことに関心を向け、愚直に習慣を改善していくだけです。
自分の身体は代わりが利きません。悪い習慣を改善して、健康的な生活習慣を心がけましょう。
② 精神的側面
次は、精神的側面です。現代社会はストレス社会と言われるように、数多くのストレスにさらされて僕たちは生きています。適度なプレッシャーや緊張は自分を成長させる機会になりますが、度を超えたストレスはメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
ストレスを抱えているとどうしてもネガティブな感情に支配されやすくなってしまいます。自分に合ったストレス解消法を探し、定期的に実践していくことが、精神的側面を磨くことに繋がります。
日々のストレスを緩和し、精神を安定させるためには、以下の対策などが挙げられます。
- タスクやスケジュールをきちんと管理する
- 日記をつける
- 瞑想をする
- 運動をする
- 十分な睡眠を取る
- 良い音楽や文学、芸術などに触れる
- 自然に触れる
- 没入できる趣味を持つ
- 達成感を味わう
また、自分の精神状態を知る客観的な指標を持つことも大切ですです。たとえば、部屋が片付いていなかったり、暴飲暴食に走ってしまったり、夜更かしが増えてしまったりなどといったときは、精神的な負荷がかかっているのかも知れません。このようなサインに素早く気づき、スピーディーに対処するようにしましょう。
中世の宗教改革者として有名なルターは、「今日はあまりにもすべきことが多いから、1時間ほど余分に祈りの時間を取らなければならない」と発言したことがあるそうです。彼にとって祈りの時間はストレスを緩和してくれる大切な時間であり、それをすることでより高いパフォーマンスを発揮できることを理解していたのでしょう。
ルターと同様、僕たちも「忙しいときほど精神面の安定に時間を使う」ことを重視することが大切ですね。
③ 知的側面
3つ目は、知的側面です。知的側面とは、キャリアアップのために資格取得の勉強をしたり、教養を身に着けるために読書をしたりといった、新たな学びや知見を得る活動のことを指します。
コヴィー博士は、知性を磨く方法として、次のようなことを特に推奨しています。
- さまざまな書籍を読む : 古典文学や雑誌、良質な雑誌、多様な分野の書籍から知見を広げる
- 日記や手紙を書く : 自分の内面に触れて考えや思いを言語化することで、伝えたいことを論理的に人に伝える力を磨く
- 何かを企画・プランニングする : 旅行やイベントの計画を立てることで、想像力や構想力を養う
他にも、セミナーに参加したり、何か新しい分野に挑戦することなども知性を磨く方法です。ただし、どんな方法で学ぶにしても、主体的に学ぼうとする姿勢が重要です。たとえば本を読むときなら、ただ読むのではなく「第5の習慣」を応用して「まず理解に徹する」ことが大切だとコヴィー博士は指摘します。自分が持っている知識や経験だけで本の内容に身勝手な判断をしたりせず、著者が言わんとしていることやその背景にある状況、対象としている読者像などを正しく読み取ろうとすることで、1冊の本からもより多くのことを得ることができるのです。
本書の中では、コヴィー博士はテレビの視聴時間の長さに警鐘を鳴らしています。本書が書かれた時代よりも進んだ現代においては、テレビの代わりにスマホの使用時間がそれに当てはまるのは言うまでもないですね。
「スマホ中毒」という言葉もありますが、ダラダラとYouTubeやTwitterを眺めていても学ぶことはありません。スマホが便利なツールであることは間違いありませんが、スマホに依存するのではなく、自分の主体性によって生産性を高めるためにスマホを利用するようにしたいものですね。
④ 社会・情緒的側面
最後は、社会・情緒的側面です。僕たちは人間は、生まれてから死ぬまで常に誰かに支えられて生きている社会的動物です。ですので、豊かな人生を手に入れるためには良好な人間関係の構築と、その基盤となる心の安定を保つ努力が欠かせません。
このように、社会的側面と情緒的側面は、相互に補完し合う役割を持ちます。ですので、他人とWIN-WINの関係を築こうとしたり、相手を理解しようと努めたり、相手の良さを認めてシナジーを発揮したりするといった、第4〜6の習慣の実践が重要です。
そのためには、まずは外部の要因ではなく自分の内面から心の安定を得ることが大切です。正しい原則に基づいたパラダイムを持ち、自分の奥底にある価値観と一致した毎日を送ることこそが自尊心を積み上げ、そんな誠実な生き方が心の安定につながるのです。
具体的なアクションプランとして、コヴィー博士は次のようなことを推奨しています。
- 人生の意味や目的を見出し、目標を持って生きる : 「暇」を感じることがないような、充実感や達成感が得られる生き方をする
- 仕事の中で主体性や創造性を発揮する : 自分の仕事が他人や世の中に貢献していることを実感する
- 人の手伝いや奉仕活動をする : 他人の評価や感謝などのためではなく、他人の人生を豊かにすることへの充実感を得る
- 身近な人に感謝を伝える : 他人の施しや気遣いに気づき、感謝を伝える
- 相手のポジティブな部分を引き出してあげる : 相手を信じ、良いところを認め、自身を与える
このようなことを日々実践していくことで自己肯定感が高まり、内面を安定させることができます。それと同時に周りの人たちとの間の信頼残高への預け入れが蓄積されていき、それがまた自分の力となります。
第7の習慣で「上向きの螺旋」を登り続けよう ── 第7の習慣が目指す目的
最新再生の第7の習慣を実践し、日々成長と変化を繰り返している状態を、コヴィー博士は「上向きの螺旋」と表現しています。
上向きの螺旋とは、上向きの螺旋階段を登るように連続的な成長と変化を繰り返すことです 。第7の習慣をはじめとする「7つの習慣」を実践し続けることで、
「自己成長 → 成果の達成 → 他人からの信頼獲得 → 他人との協力関係の構築 → より大きな成功の実現 → 経験からの学びによる自己成長」
という「成長が成功を呼び、成功体験が更なる成長を生む成長と成功のスパイラル」を生み出すことができます。
そしてコヴィー博士は、上向きの螺旋を登るためには常に今よりも高いレベルで学び、決意し、実行し続けることが必要だと語ります。自身の内面を安定させ、知恵と力を発揮して正しい道を歩んでいける状態こそが「上向きの螺旋」のパラダイムであり、この状態に達することこそ第7の習慣「刃を研ぐ」の目的なのです。
「第7の習慣」実践のポイント ── “4つの側面のバランス” と ”もう1つの側面”
第7の習慣とは、実践的に第1〜6の習慣に取り組み続けることです。
【ポイント】どの側面を伸ばすためにも、まず主体的である必要があります。また、自分の主体性によって影響の輪を意識し、自分の心をコントロールすることも大切です(第1の習慣)。そして、主体的に生きるためには自分自身の奥底にある価値観を理解することが欠かせません(第2の習慣)。加えて、自分自身を鍛えるには時間のマトリックスにおける「第Ⅱ領域(緊急ではないが、重要なこと)」に時間を割く必要があるので、自己管理が欠かせません(第3の習慣)。
さらに、第4、第5、第6の習慣に取り組んでいかなければ、社会的・情緒的側面を伸ばすことはできません。
「これから自分は変わるんだ!」といくら意気込んだところで、なかなか現状の打破は難しいことは、あなたもご存知の通りです。第1〜6の習慣に総合的に取り組んでいくことで、4つの側面が徐々に培われていくのです。
また、第7の習慣の実践には、2つのポイントがあります。それは「4つの側面のバランスを取ること」そして「自身の良心の力を発揮すること」です。
最新再生のバランスをとる ── バランスがシナジーを創り出す
充実した人生を送るためのキーポイントである4つの側面は、バランスよく育てることが大切です。なぜなら、4つの側面によって自分自身が成り立っているため、どれか1つの側面でも欠けてしまうと、他の側面を伸ばすことが難しくなるからです。また、これら4つの側面をバランスよく育てようとすることで、シナジーが生まれてより大きく成長することができます。コヴィー博士は、次のように述べています。
“バランスのとれた再新再生そのものが、シナジーを創り出す。四つの側面は密接な相関関係にあるから、どれか一つの側面の刃を研げば、他の側面に良い影響を与える。肉体の健康は精神の健康に影響し、精神の強さは社会・情緒的な強さに影響する。一つの側面の刃が鋭くなれば、他の三つの側面の刃も鋭くなる。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.449-450より
たとえば、筋トレを始める場合を考えてみましょう。筋トレは肉体的側面を鍛え上げるものですが、他の側面にも良い影響を与えます。
- 【精神的側面】
- 今までやろうと思って後回しにしていた運動に取りかかったことで、達成感や自己肯定感を感じる
- 筋トレによって「幸せホルモン」と呼ばれるドーパミンが脳内に噴出され、思考がポジティブになりストレスが軽減される
- 【知的側面】
- 効果的なトレーニングや食事についての知識が身に付く
- トレーニングの計画を立てたり、結果の記録をしたりする中で、思考力や言語化能力が高まる
- 【社会・情緒的側面】
- 肉体の変化や良い習慣の実践が自己肯定感に結びつき、心の安定につながる
- 筋トレを通じて趣味の仲間が増える
このように、1つの側面を鍛えることで相乗効果的に他の側面も磨かれるという、ポジティブな循環が起きます。どの側面からでもいいので、とにかく始めるというのが肝心です。4側面は密接に関係しているので次第にバランスが取れていき、継続していくなかで結果として大きな成果(=シナジー)を生み出せるのです。
最新再生のもう一つの側面 ──「良心」によって正確な地図を描く
コヴィー博士は、上向きの螺旋階段を確実に、かつ継続的に登っていくためには、「人間の良心」という最新再生のもう1つの側面を活用することが大切だと説いています。ここで言う良心とは「正しくあろうとする気持ち」のことです。コヴィー博士は、次のように述べています。
“良心とは、心の声が聞こえる限り私たちが正しい原則にしたがっているかどうかを感じとり、正しい原則に近づかせてくれる持って生まれた才能なのだ。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.452より
また、第1の習慣の解説の中では、より詳しく解説されています。次の通りです。
“良心は、心の奥底で善悪を区別し、自分の行動を導く原則を意識し、自分の考えと行動がその原則と一致しているかどうかを判断する能力である。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.079-080より
良心を育むのに近道はありません。第1, 第2, 第3の習慣を根気強く実践して良心を育成し、その声に従って正しい行動を取り続ける努力を続けることで、「自由」「内面の安定」「知恵」「力」を手にすることができます。
しっかりと育まれた良心をベースに、「学び」「決意」「実行」という段階を繰り返す、終わりなき自己研鑽だけが、将来の大きなチャンスや成功をもたらしてくれるのです。
“私たち人間は、いったん自覚を持ったなら、自分の人生を方向づける目的と原則を選択しなければならない。その努力を怠ったら、刺激と反応の間にあるスペースは閉ざされ、自覚を失い、生存することと子孫を残すことだけを目的に生きる下等動物と同じになってしまう。このレベルで存在している人は、生きているとは言えない。ただ「生かされている」だけである。”
── スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年)p.453-454より
この言葉の通り、「より良く生きたい」と願い、そのために本当は今何をしなければならないのかと教えてくれる「自分の心の中にある良心」とは、人間を人間たらしめている大事な要素のひとつです。この良心の声を聞き、その力を十分に発揮することこそ「7つの習慣」であり、第7の習慣の目指すことなのです。
成長の連続が大いなる成功を引き寄せる! ──「7つの習慣」による上向きの螺旋
自分自身の価値を高め、日々変化と成長を繰り返しながら上向きの螺旋を登っていくことができれば、その先に待っているのは人生の大いなる成功です。『7つの習慣』が「世界最高の自己啓発本」と呼ばれるのは、「7つの習慣」を実行することができれば、自分の人生に対して納得し、満足できる生き方が実現できるからに他なりません。
上向きの螺旋階段を登るためには、常に学び、決意し、実行することが必要です。そして、第1〜第7のどの習慣にも、終わりはありません。一つ成長すればまた一つ高いレベルで課題や目標が見えるようになり、学ぶことは尽きません。だからこそ7つの習慣は「上向きの螺旋」を登る方法であり、「成長の連続体」のステップなのです。
すべての習慣をバランスよく実践していけば、日々の生活の質は高まり、より多くの学びが得られるようになるはずです。まずは自分のパラダイムを見つめ直し、主体的に自分の人生に取り組むことから始めてみましょう。
【まとめ】「7つの習慣」による成長のスパイラルで、人生を成功に導こう!
第7の習慣「刃を研ぐ」は、成果を生み出す能力を最大化し、自分自身の価値を高めていく「最新再生」の習慣です。第1から第6までのすべての習慣を実践し続け、僕たち人間を構成している4つの側面(肉体、精神、知性、社会・情緒)をバランスよく磨いていくことで、自分の価値を継続的に高められるのです。
刃を研いでいくためには、時間やエネルギーを要します。そこで必要なのは第1の習慣で培った「主体性」であり、第2の習慣で培った「意志力」であり、第3の習慣で学んだ「時間管理の考え方」です。また、これらをベースに、第4〜6の習慣を実践して「相互依存のパラダイム」を身につけることも欠かせません。
そして、このような努力を続け、成長と変化の「上向きの螺旋」を登っていくための原動力となるのは、より良く生きようと願い、正しい方向へ導こうとする「良心」という、人間を人間たらしめている大事な要素です。
自分の心に誠実に、日々学び、決意し、実行する。この繰り返しで成熟した「人格」が形成されます。人格の成熟こそが人生全体の持続的な成功へ導いてくれる王道な方法であり、本質的で包括的な手段です。コヴィー博士の「人格主義」の教えは、シンプルでありながら奥深く、ゴールはありません。常に実践のなかでより深くを読み解いていき、また実践に活かすという螺旋的な成長を繰り返していきましょう!
【参考資料】
- スティーブン・R・コヴィー 著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013年 ※原著1996年)
- スティーブン・R・コヴィー 著『7つの習慣 成功には原則があった!』(キングベアー出版, 1996年)
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