事業の成功のカギ、競争に勝つための重要ポイントのことを「KFS(Key Success Factor ; 重要成功要因)」と言います。名前の通り事業の成否を握るカギであり、経営戦略・事業戦略を考えるうえで欠かせないポイントです。
【ポイント】「KFS」は、文脈に応じて2種類の使われ方をします。
- 業界全体の典型的な成功要因(※ こちらの意味がより一般的)
- 特定企業のとある事業における成功要因(※ こちらの意味で使われることも多々ある)
「業界のKFS」を知るのは自社の戦略を考えるうえで欠かせない要素です。また、「自社のKFS」をしっかり設定するのは目標達成に大事なポイントです。
そんな、戦略立案の重要ポイント「KFS」について解説いたします。
最大手美容室チェーンで売上.指名共に1位を獲得し独立するものの猛烈な赤字でスタート。マーケティングを学び駆使した後、圧倒的な黒字化の仕組みを構築。サロン経営者にコンテンツセールスやコンサルをスタート。3年で複業月収8桁を達成。600名以上が登録する無料オンラインサロン(MAKE TIME)や、”ロイヤル顧客リピートで満席の仕組み”を構築できる実践型のオンラインサロンを運営。コンサルタントとして50件以上のサロンを年商800万~3000万以上UPさせた実績を持つ。現在ではサロンのロイヤルリピート経営の仕組み化や、複業のサポートコンサルを継続中。
重要成功要因・KSFとは? ── 「業界のKSF」と「特定企業のKSF」の違いを事例で解説!
KSF(重要成功要因)とは、さまざまな変数の中で、特に競争上重要で事業の成否を握るカギとなる要素を意味します。つまり、「KSF = ビジネスの勝敗を分けるキーポイント」です。
KSFは事業の成功のカギですが、「事業の成功」とは「競争優位性を作り出し、収益や成長を実現できている状態」を意味します。つまり、KSFは業界の中で競争優位性を作り出すための重要ポイントとも言い換えられます。
ただし、冒頭で述べた通りKSFは文脈によって「業界全体の平均的・典型的な成功要因」を指す場合も、「特定企業にとっての事業成功の重要ポイント」を指す場合もあります。
① 業界全体のKSF ── 事例 : 缶コーヒー業界のKSF
単にKSFという場合、ある業界で成功するのに必要とされる、一般的なキーポイントのことを指すのが普通です。
たとえば、缶コーヒー業界のKSFは「自動販売機の数」と「プロモーション費用」だと言われています。つまり、この2つが缶コーヒーの売り上げに直結するわけです。
このことは、実際にデータを調べなくても「誰が」「どんなタイミングで」缶コーヒーを買うのか考えてみると想像がつきます。
【ポイント】缶コーヒーを買うのは、「単にコーヒーを飲みたい人」ではありません。単にコーヒーが飲みたいだけなら喫茶店に行く選択肢もありますし、コンビニに行けば缶コーヒーより美味しいドリップコーヒーが100円で買えます。自宅なら豆からコーヒーを落とすことも、インスタントコーヒーを淹れることもできますね。
このように、「コーヒーを飲む」方法にもさまざまな選択肢があるわけですが、これを踏まえて「どうして缶コーヒーを買うのか?」と深掘りして考えることが大切です。
そう考えてみると、缶コーヒーを買うのは次のいずれかのタイミングが多いのではないでしょうか?
- お客さまなど誰かへの差し入れとして
- 外出中で、いますぐにコーヒーが飲みたい気分である
- 仕事の休憩中などで、遠くまで買いに行く時間はない
これらのシチュエーションを考えると、いずれの場合でも大事なのは「買いたいときにすぐ買えること」ですね。また、「知っているブランドを選びがち」なことも想像できます。
こう考えてみると、「自動販売機の数」と「プロモーション費用」の2つがKSFになるのはイメージ通りですね!
【ポイント】業界全体の典型的な成功要因を調べる場合、経営環境の調査・分析を通じてそのカテゴリで成功している企業の共通項を導き出します。
ただし、調査をする際は「仮説」を持ってデータを見ることが重要です。
まとめると、業界のKSF分析とは、そのカテゴリにおける「競争のルール」「正攻法」「必勝法」を調査・分析から理解することというわけです。
② 特定企業のKSF ── 事例 : Apple社のKSF(iPod事業)
KSFという言葉は特定企業の成功要因を指して使われる場合もあります。
【ポイント】特定企業のみに限定してKSFの話をする場合、特に大事なのは「自社の事業のKSFを見極めて、達成すべき重要事項として設定すること」です。それには、まず業界の典型的なKSFを理解したうえで、自社の「強み」や「ターゲット」、取りたい「ポジション」などから自社独自のKSFを導き出すことが大切です。
先ほどのiPodの例を考えると、当時のApple社にとって、
- iTunesで「手軽に楽曲をダウンロードできてCDを不要にする仕組み」を構築すること
- 説明書を見なくても誰でも使えるような、「わかりやすいUI/UX」を実現すること
- 「他社に見劣りしないコンパクトさと大容量さ」を備えた製品にすること
- インパクトのあるプロモーションで、「既成の音楽プレイヤーとはまったく違う革新的な商品だと感じてもらう」こと
などがiPod開発におけるKSFになったはずです。
自社のKSFを考えるときは、「世の中の動向」や「自社の強み・ケイパビリティ」を踏まえて自社の勝ちパターンを構想し、重要となる要素をピックアップして設定します。
KSFの定め方は業界トップに追従する形になったり、差別化戦略を取ったり、まったく新しいコンセプトの商品でイノベーションを起こしたり、企業ごとに色々なパターンが考えられます。
KSFはKGI/KPI達成のカギとなる ── KSF設定の目的とKGI/KPIの関係
「業界の典型的なKSF」あるいは「自社事業のKSF」という2種類のKSFを解説しましたが、いずれの場合でも KSFは戦略立案の柱となるものです。
業界全体のKSF分析はマクロ分析・業界分析・市場分析の一環として行い、「この業界でビジネスを行なって勝ち筋はあるか」の判断などに用います。
そして自社事業のKSFは、業界全体のKSFも踏まえたうえで自社がどのようなポジションを取るのか検討しつつ、そのために重要な競争変数をKSFとして設定します。
【ポイント】つまりは、①「業界の典型的なKSFの理解」→②「自社事業のKSFを設定」→③「事業戦略・マーケティング戦略の立案」と繋がっていくわけです。
設定したKSFは具体的なマーケティング施策(STP, 4P)や戦略目標(KGI, KPI)へと落とし込みます。
KSFは「KGI」「KPI」達成のためにすべきことを示す
KSFは、企業が「KGI」や「KPI」を達成するためのキーポイントとも言い換えられます。
【ポイント】KGI・KPIは、事業が計画通りに進んでいるかチェックするための指標です。
「KGI(Key Goal Indicator)」は「重要目標達成指標」と訳され、経営戦略・事業戦略の最終的な目標・ゴールとして定める指標です。KGIは戦略が狙い通りにいっているのか定量化して判断するためのものであり、「売上・利益・成約件数」などの数字で具体的に定められます。
そして、KGI達成のために必要なのが「KPI(Key Perfomance Indicator)」です。KPIは「重要業績評価指標」と訳され、KGI達成までの中間目標となります。KGIと同じく、具体的な数値目標で表されます。
KGI・KPIは、事業が戦略立案時に想定した通りに進んでいるのか確認するためのものです。事業を実行していく段階では、従業員たちはKPI達成を目指して活動していくわけです。
そして、そんなKPI・KGIの達成のカギとなるのがKSFです。KGI・KPIは定量的な数値目標ですが、それを達成のための指針や要点をまとめたものがKSFなのです。
業界のKSFを見つけ、自社事業のKSFを導き出す方法 ── KSF設定フロー
事業戦略・マーケティング戦略の柱となるKSFは、次のように3ステップの経営環境分析から導き出します。
- マクロ分析で与えられた環境を把握する
- 業界分析で「業界のKSF」を見つけ出す
- 市場分析から「顧客のKBF」と「自社のKSF」を導き出す
① マクロ分析(PEST分析)で与えられた環境を把握する
経営環境分析では、マクロな視点から分析をはじめ、徐々にミクロな視点へと焦点を絞っていくのが一般的です。したがって、まずやるべきは「PEST分析」などによるマクロ分析です。
【ポイント】
PEST分析は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Social)、技術(Technology)の頭文字を取ったもので、外部環境の変化やトレンドなどを理解するためのフレームワークです。
マクロ環境に対して自社が直接変化を与えることは非常に難しいため、「Givenな環境(与えられた環境)」を調査するのがPEST分析だと言えます。(→ 詳細 : PEST分析とは?)
PEST分析によって、政治・経済・社会・技術の側面から自社や業界に対する「機会」や「脅威」を読み解いていきます。
② 業界分析(5F分析など)で「業界のKSF」を見つけ出す
次に、調査対象を「業界」に絞り、業界全体の市場規模や成長率、将来性などを理解していきます。
【ポイント】業界分析のフレームワークとしては、マイケル・ポーター教授が提唱した「5F分析(ファイブフォース分析, 5つの力分析)」が非常に有名です。5F分析は「業界内(競合)」「新規参入」「代替品」「顧客」「仕入れ」という5つの視点から「業界に対する脅威」を分析することで、その業界での儲けやすさや自社の競争優位性などを見極めます。
5F分析などを駆使して「業界の成長性」や「競争変数」を理解することで、業界の典型的な勝ちパターン(KSF) を把握します。
③ 市場分析(3C分析、 SWOT分析など)から「顧客のKBF」と「自社のKSF」を導き出す
業界全体の構造が理解できたら、さらに焦点を絞って自社が参入する市場について分析していきます。ここで重要となるのは「3C分析」と「STP分析」です!
【ポイント】3Cは「市場・顧客(Customer)」「自社(Company)」「競合(Competitor)」の頭文字を取ったもので、マーケティングの基本中の基本です。この3Cを総合的に深く分析・理解することで、「顧客が商品を買う理由(KBF ; Key Buying Factor)」を見つけ出します(→詳細 : KBFとは?, 3C分析とは?)。
STPは「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の頭文字を取ったもので、戦略立案の基礎となります。まず顧客を性別や年齢、心理的要因などで分類(セグメンテーション)し、その中から自社が対象とする顧客を選び取り(ターゲティング)、ターゲットのKBFに応じた打ち出し方を決定(ポジショニング)します。
3C分析で、顧客のニーズや購買理由(KBF)であったり、競合との差別化ポイントだったりを見つけることで、自社のターゲットやポジションが明確になります。これらを踏まえて自社の勝ちバターンを想定し、その中で重要なポイントをKSFとして設定するのです。
なお、このステップで活用できるフレームワークは他にもたくさんあります。たとえば、自社分析では事業をステップごとに分類してどこで「強み」や「弱み」が生まれているのか分析する「バリューチェーン分析」、自社のリソースを分析する「VRIO分析」などが活用できます。
また、自社が対象とすべきターゲットや取るべきポジションを競合との比較から理解するには、他社商品との差別化ポイントとなっている「POD(Point Of Defference)」や満たすべき最低条件である「POP(Points of Parity)」などを整理・把握する「POD分析(Point of X分析)」の活用がおすすめです。
話をまとめると、さまざまなフレームワークを使いながら
- マクロ環境の分析 →「Givenな条件」の把握する
- 業界・カテゴリの分析 →「業界の典型的なKSF」を理解する
- 市場分析 → 「STP」を定めつつ「顧客のKBF」を理解し 「自社のKSF」を設定する
という流れでKSFを設定しながら戦略立案を進めていくのです。
導き出したKSFの活用方法 ── マーケティングの4PとKGI・KPIに落とし込む
自社のターゲット・ポジションとKSFが明確になることで、マーケティング施策や戦略目標を具体的に立てられるようになります。戦略目標とは前述したKGI・KPIのことであり、マーケティング施策とはいわゆる「マーケティングミックス(4P)」です。
【ポイント】4Pとは、「製品(Product)」「価格(Price)」「広告宣伝(プロモーション)」「販路(Place)」の頭文字です。4Pの各要素をバラバラに考えるのではなく、KSFやSTPをもとにして一貫性・整合性を持たせることが非常に重要です。この一貫性こそが顧客の納得や信頼を生み、ファンの獲得に繋がるのです!
このように、KSFはマーケティング戦略全体を貫く柱となるものなのです。
KSF分析のコツや注意点 ── 知っておきたい4つのポイント
KSF設定は事業の成否を分ける重要なポイントです。間違った要素をKSFとして設定してしまうと、そこから導き出したマーケティング施策すべてが無意味になってしまう恐れもあるのです。
業界の典型的なKSFを見つけ出すポイントや、自社のKSFを設定するうえで知っておきたいコツや注意点を4つご紹介いたします。
① 戦略上の変数に当たらない要因は考えない
まず、KSFとして「対外的な競争変数にならない項目」を設定しないようにしましょう。具体的には、以下のようなものがダメな例です。
- 社内の良好な人間関係
- リーダーの人柄や能力
- 遠慮せず誰でも発言できる企業文化
どれも大事な要素であるのは確かですが、このような項目をKSFとして設定したところで、そこから何か具体的な施策に繋がるわけではありません。
KSFには顧客への提供価値に直接結びつく要素(たとえば技術力、製品クオリティ、ブランド力、互換性、出店場所、プロモーション戦略など)を設定しましょう。
② 業界の典型的なKSFが自社のKSFとはならないこともある ── 事例 : 伊藤園
環境分析から理解した「業界の典型的なKFS」が、自社のKFSには繋がらない場合もあります。その典型例が「お〜いお茶」ブランドで有名な伊藤園です。
伊藤園は清涼飲料業界に属するメーカーのひとつですが、飲料業界のKSFとは違った独自のポジションで成功を納めている企業です。清涼飲料業界では、前述した缶コーヒー業界と同様に「自販機の数」と「広告投資の費用」が一般的なKSFと言われています。そんな業界の中で、伊藤園の自動販売機設置数は業界6位であり、優位性を築けていません。トップのコカ・コーラ社と比べると4倍以上の差をつけられているほどなのですが、伊藤園はむしろ自販機の数を減らす戦略を取っているのです!
そんな伊藤園は年間売上高は4,462億円で、サントリー、コカ・コーラに次ぐ業界3位のシェアを誇っています(2020年度)。この秘密は、「お~いお茶」「健康ミネラルむぎ茶」や「タリーズコーヒー」を代表とする無糖飲料に特化したポジショニング戦略です!
伊藤園は「お〜いお茶」ブランドを徹底的に強化して「お茶の定番商品」というポジションを築く戦略を取っており、その甲斐あって2018年から4年連続で 緑茶ブランドの販売実績世界一としてギネス記録にも認定されています。
このように、業界大手とは直接戦わない「差別化・独自化戦略」を取ることで、業界のKSFとは違ったポイントで戦う手段もあるのです。
③ KBFがKSFのヒントとなる
顧客が商品を買う理由を「KBF(Key Buying Factor)」と言いますが、顧客のKBFを追求することでKSFを見つけるヒントとなります。たとえば、顧客が自社商品を買ってくれている理由が「十分な品質なのに安いから」であれば、以下のようなことがKSFの例として考えられるでしょう。
- 生産・物流などのコストを下げて利益率を上げる
- 配荷率を上げる(=販売店舗数を増やす)
- 効果的なプロモーションを実施する(ブランド認知を上げる、ファンが気に入っている「商品の良さ」をより多くの人に伝える)
- 提案できるアップセル・クロスセルを検討する
同様に、他社製品のKBFを調査することで自社の強み・弱みを見出し、そこからKSFを考えることもできます。自社や競合のKBFは簡単なアンケート調査やユーザーインタビューから低予算で把握できるので、業界調査や市場調査の一環としてKBF分析を行うとよいでしょう。
④ KSFは突然激変することもある
業界の典型的なKSFも、自社にとってのKSFも、いつ変化するかわからないことを覚えておきましょう。KSF変化の理由としては、たとえば以下のような例が挙げられます。
- 法改正による規制緩和や規制強化
- 技術革新による代替品の登場
- トレンド変化などに応じたニーズの変化(=顧客のKBFの変化)
法改正や代替品の登場は、ときにKSFを激変させることもあります。大災害による自粛ムードの蔓延、新型コロナウイルスのパンデミックなども同様ですね。
KSFは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直す必要があるのです。
【まとめ】KSF(重要成功要因)はマーケティング戦略の柱となる
重要成功要因・KSF(Key Success Factor)は、業界で成功するためのカギを意味します。業界全体の典型的な成功要因を表す場合も、特定企業が競争優位を築く要因を示す場合もありますが、いずれにしてもKSFの分析は事業戦略・マーケティング戦略の柱となるものです。自社にとって重要なKSFを見定め、それを踏まえたうえで戦略を立案するようにしましょう。
KSFを見極めるためには「PEST分析」「3C分析」「STP分析」「SWOT分析」などのフレームワークを使いこなすことや、アンケート調査やユーザーインタビューから「顧客インサイト」を見極める力が不可欠です。
一貫性のある強いマーケティング戦略立案のため、総合的なリサーチ力・分析力を磨いていきましょう!
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